米国メジャーリーグ。
オールスターゲーム。
今年はテキサス州アーリントン。
レンジャーズの本拠地。
グローブライフ・フィールド。
オールスターの前哨戦は、
ホームランダービー。
余興と言えば余興だが、
テオスカー・ヘルナンデスが優勝。
ロサンゼルス・ドジャースの外野手。
ドミニカ共和国出身。
大谷翔平は今回、辞退した。
何しろ右ひじ手術のリハビリ中なのだから。
しかしチームメートのヘルナンデスは、
ホームランダービー初出場。
大谷がアドバイスしていた。
「左中間か、なるべくセンター方向に向かって打て」
ヘルナンデスは次々に強敵を破って、
決勝進出。
カンザスシティ・ロイヤルズの、
ボビー・ウィット・ジュニアを、
14本対13本で破って優勝。
長い歴史のあるドジャースでも、
ホームランダービー制覇は初めてだった。
優勝賞金は100万ドル。
日本円で約1億5900万円。
一晩でミリオネア。
すばらしい。
私は午後1時、商人舎オフィスで、
NHKのディレクターから、
インタビューを受ける。
とても優秀でいい人。
1時間半以上も話し込んだ。
資料を貸与して、
私の著書を差し上げた。
番組の放映は11月だとか。
気の長い話だが、
多種多様な取材をして、
よく考察したうえで、
しっかりと番組づくりをする。
意義のある仕事だ。
流通業やチェーンストアを取り上げてくれて、
有難いと思ったし、それを伝えた。
そのあと夕方まで、
講演のレジュメづくり。
私もよく考察し、
しっかりと資料をつくる。
日経新聞「大機小機」
学者やジャーナリストなどが、
匿名で執筆する。
先週土曜日のコラム。
「円安バーゲンセール」
コラムニストは癸亥氏。
大学の著名な教授だろう。
「円相場が歴史的な安値水準にある」
2020年の初頭に109円程度だった。
2024年6月末に160円台まで下落。
アメリカ人にとっては、
1ドルだった日本の製品、サービス、資産が、
4年半で68セントになった。
日本人にとっては、
「今まで蓄積してきた国民資産が
大幅に目減りしている」
しかしその目減り具合は、
資産の種類によって大きく異なる。
市場原理が働く資産の目減りは大きくない。
➀株式
日経平均株価は20年初と比べて、
ドルベースで14%値上がりした。
安くなった日本企業を海外投資家が積極的に買った。
極端な場合、経営権を狙う事例も登場している。
②不動産
東京などの都市部では市場原理が働く。
自然、文化、治安などを考慮すれば、
非常に割安だろう。
だから開発業者を含め、
海外資産家の購入対象となり、
マンションの異常な値上がりを招いている。
反対に市場原理の働きにくい資産の現状は、
バーゲンセールである。
➀人材
日本の大学研究者にとって、
海外の魅力度が急速に増している。
優れた研究環境に加え、
給与も2倍、3倍ともらえる。
このため、日本に戻らない研究者が増えている。
従業員も同じで、
海外企業がますます魅力的だ。
日本企業としては、
研究開発などの有能な人員確保に、
高い給与が必須化してきた。
②旅行資源
日本の文化財、自然、インフラなど。
「オーバーツーリズムが象徴的だ」
海外旅行者からすれば、
日本の旅費は安い。
豊かな食事、文化、自然を楽しめる。
コラムニスト。
「ここで考えるべきは、
日本の文化、自然、インフラが
日本人の財産だとの事実である」
同感だ。
そこで癸亥さんの提案。
「海外旅行者を排除するわけではないが、
ガラパゴス諸島(エクアドル)の入島税をまねて
100ドル(約1万6000円)程度の入国税を
徴収しても文句は出まい」
これはいい。
「年間3000万人が来日すれば、
5000億円近くの税収となる」
「この金額は大学ファンドに求められる運用益、
3000億円を上回る」
「入国税を大学の研究資金に活用すればどうか。
研究者が日本に戻るインセンティブとなり、
日本のバーゲンセールを食い止めるのだから、
一石二鳥である」
入国税はいいけれど、
また政治的な駆け引きが生まれるのだろう。
直接、大学の研究資金になるとは思えない。
なにしろ日本学術会議会員任命拒否問題は、
まだ決着していないほどなのだから。
輸出産業は有利となり、
輸入産業は不利となる。
株式や不動産を保有する企業や人は、
円安でも潤っている。
海外旅行をする人たちもひどく割高となる。
国内ではインフレが進んで、
資産をもたない国民も生活が苦しくなる。
円安不況である。
円安も円高も両面がある。
だから全体で見ると、
すんなりと円安解消とはならない。
小売業、サービス業は、
ドメスティックな産業だ。
だから円安の痛手は大きい。
それを乗り切らねばならない。
大学の先生は、
ある意味で呑気だ。
〈結城義晴〉