結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年07月20日(土曜日)

土用丑のための「うな重価格革命」と「生産革命」

今夏の土用の丑の日は、
二度、やってくる。

7月24日(水)と8月5日(月)。

二十四節気は1年を24区切りする。
中国伝来の暦日(れきじつ)。
暦日とは暦で定められた日のこと。

しかし二十四節気では足りない。
そこで農業に従事する民のために、
二十四節気を補う暦日が考え出された。

それが「雑節」だ。
日本独自の暦日である。

そして日本の暦日考案のために、
五行思想が使われた。

五行とは木、火、土、金、水。
五つの元素から世界は成り立つ。

「木」は春、「火」は夏、「金」は秋、「水」は冬と定め、
この四つの季節の変わり目を「土」とした。

「土」だけが不連続な四つの期間となり、
「土用」は季節の変わり目の18日間と決められた。

春と夏の間の18日間、
つまり立夏の前の18日間は春の土用。

同じように夏と秋の間の18日間は夏の土用、
秋と冬の間は秋の土用、
冬と春の間の18日間は冬の土用。

これが雑節の土用である。
1年にほぼ72日間。

一方、丑(うし)は十二支の一つ。

子・丑・寅・兎・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥。

この十二支は年度にも使われるし、
月度にも、日にも時刻にも使われる。

日に使う時には、
1日目が子(ね)の日、2日目が丑の日となって、
12日目が亥(い)の日。
13日目は再び子の日となる。

この雑節の土用と丑の日が重なるのが、
土用の丑。

江戸時代の発明家・平賀源内の発想によって、
土用の丑の日に鰻を食べるのが体によいと、
プロモーションが展開されたそうだ。

それが日本人の行動的な慣習となった。

その風習が現代に至る。

高校生のころだったか、
意味も知らずに政治的な騒ぎに、
加わってしまったことがある。

あとでひどく恥ずかしく思った。
それ以来、私はいつも意味を知ってから、
考え、行動するようになった。

ちょっと面倒ではあるが。

「土用の丑」も一応、
意味を知っておいたほうがいい。

日経夕刊の一面。
「うな重に価格革命」

「本格的なうな重を
1000~2000円台で提供する
カジュアルな専門店が増えている」

老舗では1人前3000から4000円。
それに対してほぼ半額。

うな重の価格革命に火を付けたのが、
チェーン店「鰻の成瀬」。
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フランチャイズビジネスインキュベーション㈱。

2023年から多店舗展開をスタート。
1年半で全国200店超に拡大。

山本昌弘社長。
「日本人が昔から親しんできたうな重を
もっと気軽に味わってほしい」
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コンセプトは老舗の半額程度で1.5倍の量。
価格は梅(2分の1匹)が1600円、
竹(4分の3匹)が2200円。

安さの実現のための、
「利の五法」のうちの、
「四法」
を使う。

中国で養殖したウナギを、
現地工場でさばき、かば焼きにして、
冷凍で輸入する。
「利は元にあり」

店舗では解凍などの仕込みをし、
注文ごとにオーブンで焼くだけ。

だから厨房では職人不要となった。

ウナギ職人は修業に時間がかかる、
「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」。

しかしこの仕組みなら、
アルバイトでも提供できる。
日本のスーパーマーケットと同じ。
定石は業種業態が変わっても変わらない。
「利は内にあり」

調達は従来の店と違う。

ウナギは成長するほど骨も硬くなる。
だから関東の老舗では軟らかい口当たりにするため、
若くてさほど大きくないウナギを調達する。

しかし鰻の成瀬は、
長期間育てた大きいウナギを使う。

1匹からとれる可食部が増えるためだ。

蒸した後、表面を関西風にカリっと焼き上げ
小骨が気にならないよう工夫している。
「利はこの品にあり」

家賃を低減するため、
出店も一等地にこだわらない。
そのかわりテレビやネット広告で集客を図る。

安いから数が売れる。
「利は売りにあり」

日本での人気を受けて、
6月には香港に海外1号店を出店。

今後アジアや欧米、中東など、
世界展開を視野に入れる。

このほかにも、
「うなぎ屋江戸名代亜門根津総本店」
かば焼きを2分の1匹分のせたうな重(並)が、
1800円。
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2023年設立の㈱亜門は、
関東や四国にフランチャイズで4店舗を展開。

㈱ONODERAフードサービス。
高級すし店「銀座おのでら」で、
国産ウナギを980円から提供する。

関西では「鰻屋 黒船」。
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中国・四国地方では「鰻の三谷」。
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低価格チェーンが増えている。

ただし、難題もある。
最大の理由は資源の減少だ。

原材料の不足だ。

日本人が食べるウナギは冬から春、
日本や中国、台湾の沿岸にいる稚魚を採捕し、
養殖場で育てている。

しかし日本鰻輸入組合によると、
2024年は「東アジア全域で稚魚が大不漁」。

養殖量は国内・海外産ともに低迷し、
稚魚の国際相場は1キロ約250万円と、
過去2番目に高い水準だ。

為替相場での円安進行もある。

そこで「今秋以降、かば焼きの値上がりは必至」の情勢だ。

しかし今月に入って朗報が届いた。

「生産革新」だ。

水産庁の研究機関が、
ニホンウナギの稚魚を人工的な環境下で、
大量生産する技術を確立した。
[水産研究・教育機構]を中心とする研究グループ。

親ウナギから採卵し、ふ化させ、
成長したウナギからまた卵を得る方法。

天然資源に負荷をかけない、
持続可能な養殖へ前進した。

日本の研究機関は凄い。

今後、都道府県や民間企業へ技術を普及し、
社会実装を進める。

水産庁の目標。
2050年までにウナギ養殖に使う稚魚を、
100%、人工ふ化させた稚魚に切り替える。

画期的な養殖技術が開発され、
絶滅危惧種であるウナギの持続可能性に希望が見えた。

平賀源内もこれを知ったら喜ぶに違いない。

チェーン店のウナギもいいし、
老舗の鰻もいい。

両方を選べるのが、
豊かさの本質である。

〈結城義晴〉

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