二十四節気の白露(はくろ)。
露ができ始めるころ。
露は、空気に含まれている水蒸気が、
草木の葉などの表面に凝結して、
水滴となったもの。
けれど今年はまだ、暑い。
横浜は最高気温33.2度。
真夏日。
大阪は34.5℃でやはり真夏日。
名古屋は35.3℃で猛暑日だった。
今年の夏は暑かった。
これからの初秋は、
こんな暑さが常態となるのだろう。
R・B・パーカーの『初秋』は、
思い出深い探偵小説だ。
1982年発表。
スペンサーシリーズ第8作。
パーカーの教育論が描かれる。
私はスペンサーシリーズの最高傑作だと思う。
もうちょっと涼しくなったら、
また読んでみようか。
何度目になるだろうか。
私立探偵スペンサー。
37歳、189センチ、89キロ。
元地方検事局特捜班。
スタンドプレーのやりすぎで退職。
「誰かが言っている」
「あらかじめ真実はこれだ
と決めてかかったら、
真実を見出すことはできないと」
この初秋の最後に、
スペンサーは一言。
「もうすぐ冬になる」
やっぱりもう一度、読もう。
ヴァン・ダイン、
エラリー・クイン。
もちろんアガサ・クリスティ。
ほとんどを読んだ。
それからレイモンド・チャンドラー。
エドガー・アラン・ポー、
コナン・ドイル。
探偵小説は、
時間があったら読みたいと思ったものが、
山積している。
昔々、ある先輩が、
「読みたい本リスト」をつくっていた。
私も真似してみたが、
そんなリストをもつよりも、
すぐに読んだほうがいいと考えて、
リストはやめた。
今、読みかけは『予告された殺人の記録』
ガルシア・マルケス。
故上野光平さん。
西友の実質的な創業者にして、
流通産業研究所所長・理事長。
私は上野光平の弟子である。
それを誇りにしている。
その上野さんは、
凄い読書家だった。
自分が癌であることがわかると、
大好きな小説や文学を読むのをやめた。
そして社会科学の本に集中した。
若い人たちに自分が残すべきは、
商業・流通業の世界のことだと決めて、
社会科学に関する本だけ読むことにした。
その上野光平の『自己啓発のススメ』
商業界誌に3年半連載したものを、
一冊にまとめた名著。
その第6章は、
「自己啓発の技術」
上野さんは3つの技術を示している。
第1は「読書の技術」
第2は「時間管理の技術」
第3は「モノを書く技術」
上野さんは普通の実務家に、
この三つの技術を薦めている。
読書の技術に関しては、
前園主計著『読む技術』を推薦している。
本流は丁寧にゆっくり読む「熟読」だが、
「速読」の効用も大いにある。
その速読の方法。
⑴漢字とカタカナの拾い読み
⑵キーワード読みの練習
⑶飛ばし読みとスキャニングとカンニング
これ、私も雑誌原稿を書くときなど、
役立てている。
三番目の書く技術。
「書く技術を高めることは、
自己啓発のテーマであるが、
実はそれ以上に企業にとっての
戦略的課題でもある」
私も様々な研修で、
「書くこと」を要求する。
課題レポートだ。
その「文章を書くときの7ポイント」
一、本気で考えていることがあること。
二、表現を探すのではなく、本気で考えていることが何であるかを、つきつめること。
三、それを、できるだけ簡潔明瞭に、シンプルに書くこと。
四、それは、可能なかぎり論理的でなければならない。
(論理には限界があるが、だからといって論理がいいかげんであってはならない)
五、単純なことをややこしく書くという誘惑に負けるな。
六、独り合点の文章、無駄な言葉、きまり文句、出来合いの言葉などを安易に使うな。
七、そのうえで、モノを書く上での基本的技術を身につけよう。
[結城義晴の文章法]でも、
この上野さんの指摘と胸中するところが多い。
上野さんは晩年に、
小説を読むのをやめた。
馬齢を重ねた結城義晴は、
まだその境地に至っていない。
まだまだ、でしょうか。
秋は読書の季節です。
〈結城義晴〉