東横線で渋谷に行き、
そこから湘南ラインに乗り換えて、
埼玉県の久喜まで。
長い旅をした。
そしてJR久喜駅に到着。
9月6日にヤオコーがオープンして、
山本恭広編集長が取材に来た。
私も自分の目で確認するためにやってきた。
1974年の開業だから、
50年を経過する。
伊藤雅俊社長時代の物件である。
店というのは凄いものだ。
半世紀もこの地域に貢献し続けてきた。
1階が食品と催事売場。
セルフレジを導入し、
その横でハロウィンプロモーションを展開。
全品セブンプレミアム。
改装してヤオコー出店に備えた。
鮮魚売場と精肉売場には、
対面方式を導入している。
惣菜売場も広大で、
品揃えは豊富だ。
それでもどうしても、
「古い」印象がぬぐえない。
アメリカでは「コンベンショナル型」と呼ばれ、
古い店々が残っている。
そんな店が最新フォーマットに、
圧倒されていることが多い。
しかし古い店でも、
その年月の経過をより良く生かして、
新しい店にない「魅力」にすることができる。
たとえばニューヨーク・マンハッタンでは、
ゼイバーズがそんな店だ。
サンフランシスコではバークレーボウル。
たった2店舗だが凄い人気だ。
私は古いほうの創業店が好きだ。
店も什器も古いけれど、
顧客から「私の店」と評価されている。
イトーヨーカドーも、
そんな店にできないか。
「古さ」もポジショニングにすることができる。
私はそれを確信している。
2階と3階が本来、アパレルの売場。
2階には自前のドラッグストアを入れた。
3階にはアダストリアの「ファウンドグッド」。
最新のキッズコーナーを導入したが、
あまり目立たない。
4階にはキャンドゥが入っているし、
3階にはノジマが誘致される。
それも悪くはないが、
館全体をイトーヨーカ堂らしさで、
おおいつくすことはできないか。
たとえばドン・キホーテのように。
しかしそれはもう無理な注文だ。
首脳陣はそれをあきらめている。
古い店を効率の尺度だけでリニューアルしても、
それは新しい店にはかなわない。
店は都市と同じだ。
京都や奈良の街は、
魅力を失わない。
ロンドンもパリも。
アメリカではボストンも。
そんな店ができないか。
一方、
ヤオコー久喜吉羽店。
市街の一番外側に、
近隣型ショッピングセンターとして、
開発された。
店舗面積は891坪でヤオコー最大規模。
初年度年商は27億円。
左サイドの入り口に設けられたのが、
青果と惣菜のダブルコンコース。
この店は月刊商人舎10月号で詳解する。
店舗入り口の左サイドに、
「ヤオコー・デリ&カフェ」が設けられた。
イートインコーナー。
バイオーダーのメニューが提供される。
モーニングセットは、
厚切りのロイヤルブレッドのトーストと、
卵とベーコン。
ランチセットは、
惣菜売場の手仕込み豚かつを使った、
かつ重、あるいはとんかつ定食。
私は出来立てのかつ重定食をいただいた。
おいしかったが、
もう少しメニューがあったほうがうれしい。
他は抜かりのないヤオコー最新型。
床のカラーにオレンジ色を使わなかったのは、
私としては残念だ。
イニシャルコストもオペレーションコストも、
予算を大幅に上回るのだろう。
その判断を否定するつもりはない。
さて、朝日新聞「折々のことば」
第3204回。
なんだかうまくいったな
と思うことは、全部、
つらい思いをしたあとだった
(小田和正)
オフコースの小田和正さん。
だから、
「つらいことは信用できる」
「でも無理はしていない、
「無理しないというのは楽をすることではない」
「これまでずっと自分に負荷をかけてきた」
「70歳を迎える今もステージでは
キーを下げずに歌い、走る。
そのつど駆け抜け、後で繕ったりしない」
「楽したものは信用できないから」
『時は待ってくれない』から。
小田さんは私の中学高校の5年先輩。
尊敬もしている。
「つらい思いをしたことは、
信用できる」
イトーヨーカドーも、
ヤオコーも、
つらい思いをしなければ、
古い店も、新しい店も、
信頼されない。
イトーヨーカ堂はもっともっと、
つらい思いをして、
古さの良さを出してもらいたい。
ヤオコーも無理をする必要はないけれど、
楽をしてはいけない。
楽をしないとは、
70歳を超えても、
基準を変えず高みを望むということだ。
私も小田さんに倣っている。
〈結城義晴〉