セブン&アイ・ホールディングスが、
スーパーストア事業を中心に、
一部株式売却の検討に乗り出した。
米国のブルームバーグの報道が一番早かった。
未公開株式の投資会社などに、
初期段階の打診をした。
日経新聞電子版は、
13時30分に配信した。
日経は追加取材をしたようだ。
それによると、
年内にも売却手続きを始める。
過半数の株式を売却する方針で、
入札を受け付ける。
4月にはスーパーストア事業を再上場する、
なんて決議していた。
2026年2月期までに2年間で、
構造改革で利益体質を改善させた上で
一部株式を売却する方針だった。
EBITDAを550億円とする目標を立てた。
EBITDAは税引前当期純利益から、
償却費と支払利息と税金を足し戻した利益だ。
この指標は通常の会社経営では使わない。
使う必要もない。
EBITDAはM&A実務に頻繁に使われる。
とくに買収側は「EBITDA」を基準にする。
それを幹部や従業員に示しても、
構造改革や体質改善には、
つながらない。
実際にセブン&アイは、
それに本気で取り組んではいない。
自主アパレルをやめることと、
不採算店の売却、閉鎖しかやっていない。
それでは企業組織の構造改革にはならない。
目先の「利益」に関しては、
改善のように見えるかもしれない。
しかしイトーヨーカ堂やヨークベニマルの、
幹部や現場の人たちはどう感じるだろう。
会社はだれのものか。
顧客のためのものであり、
社員・従業員のためのものでもある。
その視点がまったくない。
構造改革と体質改善には、
時間がかかる。
トップマネジメントが現場に入って、
全社一丸とならねば絶対にできない。
ヨークベニマルは別にして、
イトーヨーカ堂では残念ながら、
それがなされてはいない。
イトーヨーカ堂社内では、
井阪隆一セブン&アイ社長は、
ひどく評判が悪い。
いずれにせよ、セブン&アイは
コンビニエンスストア事業に集中する。
カナダのアリマンタシォン・クシュタールから、
相変わらず買収提案を迫られている。
だからコンビニ事業に集中して、
急いで企業価値を高める必要がある。
セブン&アイは、
イトーヨーカ堂とヨークベニマルの「スーパー事業」を、
中間持ち株会社を設立して束ねる計画をもつ。
しかし構造改革と体質改善を、
本気で実現させようとしたら、
そんな中間持ち株会社は「害」にしかならない。
どちらも自主独立にすべきだ。
インディペンデントな組織にすべきだ。
とくにヨークベニマルはずっと、
日本有数のスーパーマーケットチェーンである。
今のままでもIPOは可能だ。
問題はイトーヨーカ堂。
そしてセブン-イレブンしかやったことのない、
井阪社長にはどうやら、
これがわからないらしい。
ずらりと揃う社外取締役の面々にも、
当然、わからないようだ。
つまりセブン&アイのトップたちには、
「業態」の概念がない。
確立された業態よりも、
合計して規模が大きいほうが、
売りやすいと思っているようだ。
コンビニエンスストアと、
総合スーパーと、
スーパーマーケット。
それぞれに経営は異なる。
コンビニ経営の知見だけでは、
総合スーパーも食品スーパーマーケットも、
改革をすることはできない。
来週10月10日には、
セブン&アイの中堅決算発表がある。
その席上できっと発表するのだろう。
「持ち分法適用会社にすることを含め、
戦略的パートナーとの連携を検討する」と。
株式売却後もセブン&アイは、
イトーヨーカ堂の株式は一部保有し続け、
一定の関与を続ける考えのようだ。
経営権は外部企業に委ねられる。
私が力を込めて書いたのが、
「工業論理」×「商人論理」で考えを改めよ
今でもこの論述の通りだと確信している。
読める人は読んでほしい。
「総合スーパーの現場も知らない
井阪隆一セブン&アイ社長や新しい社外取締役たちが、
数字だけ見て下した判断は、
イトーヨーカ堂の現場の人間たちに響きはしない」
伊藤雅俊の100周年の言葉を思い出そう。
「信用は一朝一夕では生まれません。
あらゆるステークホルダーの皆様と
誠実に向き合い、
一歩ずつ信頼関係を積み重ねることで
信用は生まれます」
「ステークホルダーとは、
第1に顧客であり、
第2に社員、従業員である。
労働組合でもある。
第3に取引先であり、第4に株主となる。
そして第5に社会である」
私はセブン&アイのビジョンを描いている。
コンビニエンスストアは、
「工業の論理で、
セブン-イレブンをスピンアウトさせる。
どこまでも突っ走る世界的なチェーンストアにする」
「一方、商業と商人の論理で、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマルを
セブン-イレブンから分離、独立させる」
このとき業態概念を無視してはいけない。
「そう、コンビニ事業以外は、
伊藤雅俊の思想を受け継ぐ企業であることを
思い出すべきである」
「ヨークベニマル創業者の大髙善雄の
『野越え山越えの精神』を貫徹するべきである」
「そしてセブン-イレブンは、
鈴木敏文のDNAを継承するのである」
私の結論。
「工業の論理と商人の論理で、
シンプルに考える」
「それがわからない経営者は去るしかない」
今でもそれを確信している。
イトーヨーカ堂の社員・従業員の気持ち、
ヨークベニマルの幹部と社員の感情。
考えると胸が痛む。
〈結城義晴〉