結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年10月04日(金曜日)

セブン&アイのイトーヨーカ堂売却と「工業の論理×商人の論理」

イトーヨーカ堂の売却。
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セブン&アイ・ホールディングスが、
スーパーストア事業を中心に、
一部株式売却の検討に乗り出した。

米国のブルームバーグの報道が一番早かった。

未公開株式の投資会社などに、
初期段階の打診をした。

日経新聞電子版は、
13時30分に配信した。

日経は追加取材をしたようだ。
それによると、
年内にも売却手続きを始める。
過半数の株式を売却する方針で、
入札を受け付ける。

4月にはスーパーストア事業を再上場する、
なんて決議していた。

2026年2月期までに2年間で、
構造改革で利益体質を改善させた上で
一部株式を売却する方針だった。

EBITDAを550億円とする目標を立てた。
EBITDAは税引前当期純利益から、
償却費と支払利息と税金を足し戻した利益だ。

この指標は通常の会社経営では使わない。
使う必要もない。

EBITDAはM&A実務に頻繁に使われる。
とくに買収側は「EBITDA」を基準にする。

それを幹部や従業員に示しても、
構造改革や体質改善には、
つながらない。

実際にセブン&アイは、
それに本気で取り組んではいない。

自主アパレルをやめることと、
不採算店の売却、閉鎖しかやっていない。
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それでは企業組織の構造改革にはならない。
目先の「利益」に関しては、
改善のように見えるかもしれない。

しかしイトーヨーカ堂やヨークベニマルの、
幹部や現場の人たちはどう感じるだろう。

会社はだれのものか。
顧客のためのものであり、
社員・従業員のためのものでもある。
その視点がまったくない。

構造改革と体質改善には、
時間がかかる。

トップマネジメントが現場に入って、
全社一丸とならねば絶対にできない。

ヨークベニマルは別にして、
イトーヨーカ堂では残念ながら、
それがなされてはいない。

イトーヨーカ堂社内では、
井阪隆一セブン&アイ社長は、
ひどく評判が悪い。

いずれにせよ、セブン&アイは
コンビニエンスストア事業に集中する。

カナダのアリマンタシォン・クシュタールから、
相変わらず買収提案を迫られている。

だからコンビニ事業に集中して、
急いで企業価値を高める必要がある。

セブン&アイは、
イトーヨーカ堂とヨークベニマルの「スーパー事業」を、
中間持ち株会社を設立して束ねる計画をもつ。

しかし構造改革と体質改善を、
本気で実現させようとしたら、
そんな中間持ち株会社は「害」にしかならない。

どちらも自主独立にすべきだ。
インディペンデントな組織にすべきだ。

とくにヨークベニマルはずっと、
日本有数のスーパーマーケットチェーンである。
今のままでもIPOは可能だ。

問題はイトーヨーカ堂。

そしてセブン-イレブンしかやったことのない、
井阪社長にはどうやら、
これがわからないらしい。

ずらりと揃う社外取締役の面々にも、
当然、わからないようだ。

つまりセブン&アイのトップたちには、
「業態」の概念がない。

確立された業態よりも、
合計して規模が大きいほうが、
売りやすいと思っているようだ。

コンビニエンスストアと、
総合スーパーと、
スーパーマーケット。

それぞれに経営は異なる。

コンビニ経営の知見だけでは、
総合スーパーも食品スーパーマーケットも、
改革をすることはできない。

来週10月10日には、
セブン&アイの中堅決算発表がある。
その席上できっと発表するのだろう。
「持ち分法適用会社にすることを含め、
戦略的パートナーとの連携を検討する」と。

株式売却後もセブン&アイは、
イトーヨーカ堂の株式は一部保有し続け、
一定の関与を続ける考えのようだ。

経営権は外部企業に委ねられる。

商人舎2023年4月号。
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私が力を込めて書いたのが、
「工業論理」×「商人論理」で考えを改めよ
?????????????????????

今でもこの論述の通りだと確信している。
読める人は読んでほしい。

「総合スーパーの現場も知らない
井阪隆一セブン&アイ社長や新しい社外取締役たちが、
数字だけ見て下した判断は、
イトーヨーカ堂の現場の人間たちに響きはしない」

伊藤雅俊の100周年の言葉を思い出そう。

「信用は一朝一夕では生まれません。
あらゆるステークホルダーの皆様と
誠実に向き合い、
一歩ずつ信頼関係を積み重ねることで
信用は生まれます」
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「ステークホルダーとは、
第1に顧客であり、
第2に社員、従業員である。
労働組合でもある。
第3に取引先であり、第4に株主となる。
そして第5に社会である」

私はセブン&アイのビジョンを描いている。
コンビニエンスストアは、
「工業の論理で、
セブン-イレブンをスピンアウトさせる。
どこまでも突っ走る世界的なチェーンストアにする」

「一方、商業と商人の論理で、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマルを
セブン-イレブンから分離、独立させる」

このとき業態概念を無視してはいけない。

「そう、コンビニ事業以外は、
伊藤雅俊の思想を受け継ぐ企業であることを
思い出すべきである」

「ヨークベニマル創業者の大髙善雄の
『野越え山越えの精神』を貫徹するべきである」

「そしてセブン-イレブンは、
鈴木敏文のDNAを継承するのである」

私の結論。
「工業の論理と商人の論理で、
シンプルに考える」

「それがわからない経営者は去るしかない」

今でもそれを確信している。

イトーヨーカ堂の社員・従業員の気持ち、
ヨークベニマルの幹部と社員の感情。
考えると胸が痛む。

〈結城義晴〉

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