セブン&アイ・ホールディングス。
事態は小説のように転換する。
月刊商人舎11月号。
「会社は誰のためにあるのか?」
セブン&アイを事例にして、
考察し、解明を試みた。
セブン-イレブン・コーポレーションと、
ヨーク・ホールディングスとに、
分けられる予定だった。
そこへまた一つの新しい局面が生まれた。
新聞各紙が報じた。
商人舎流通SuperNewsも。
セブン&アイnews|
伊藤順朗副社長と伊藤興業からの提案を「受領」と発表
主役は伊藤順朗セブン&アイ代表取締役副社長。
創業家の管理会社「伊藤興業㈱」代表取締役であり、
ヨーク・ホールディングスでも代表取締役だ。
その伊藤興産がセブン&アイに「買収提案」をした。
ご承知のようにアリマンタシォン・クシュタールも、
すでに買収提案をしている。
そこでカナダの会社に買収されるよりも、
創業家がマネジメント・バイアウト(MBO)をして、
株式の非公開化を果たすことによって、
防衛しようという考えだ。
このとき株式公開買い付け(TOB)が行われる。
思い切った策である。
全株式を取得した場合の買い付け総額は、
6兆円以上、10兆円をこえるかもしれない。
今年の1月15日に、
大正製薬ホールディングスでは、
創業家の上原茂副社長が代表を務める大手門㈱が、
同じようにMBOを完了した。
3月18日の臨時株主総会では、
株主の84.89%が賛成した。
そして4月9日、
東証スタンダード市場の上場廃止となった。
伊藤興産はこれと同じ選択をするようだ。
ただし大正製薬は7100億円ほどだった。
セブン&アイは、
伊藤興産を中心に伊藤忠商事、
そしてメインバンクの三井住友銀行、
さらに三菱UFJ銀行、みずほ銀行の、
メガバンク揃い踏みで融資して、
10兆円を超えるTOBとなりそうだ。
日本の金融機関が挙げて、
セブン&アイを守ることになる。
まだ、推測の域の話だ。
伊藤興業はセブン&アイの株式の8.2%を保有し、
信託銀行の日本マスタートラスト信託銀行㈱に次ぐ、
第2株主である。
商人舎11月号の特集で私は、
伊藤興産はヨーク・ホールディングスに対して、
資本投入するのだろうと書いた。
しかしそれは違っていたようだ。
伊藤順朗さんはその上を考えていた。
私は書いた。
「この会社にはオーナーシップ経営が
求められている」
「この会社」とは、
ヨーク・ホールディングスだ。
それは私の確信である。
ただし、セブン-イレブンまですべて、
非公開とするようだ。
株式市場からの資金調達を受けずに、
セブン-イレブンの世界戦略は果たせるか。
スティーブン・デイカス取締役会議長。
セブン&アイの特別委員会委員長を兼務する。
「我々は伊藤順朗氏および伊藤興業からの提案、
アリマンタシォン・クシュタールからの提案、
並びに当社が実行可能な、
スタンドアローンでの施策を含め、
潜在的な株主価値の実現のための
全ての選択肢を客観的に検討している」
「当社の特別委員会および取締役会は、
価値最大化に向けて、
各関係者との対話を継続するとともに、
当社株主およびその他のステークホルダーの
利益の最大化に向け、引き続き取り組む所存」
私はそのステークホルダーに関して、
「従業員=株主、顧客=株主」の提案をした。
井坂康志氏は、
11月号の「経営哲学の視点から考察する」で、
指摘した。
「事業は『時代の子である』」
「そもそも経営とは二極性をはらんでいる。
異質なもの同士が一つの企業の中にあるのは
現実を見るなら普通のこと」
「そもそも企業とは生き物であるから、
矛盾・葛藤を内部にはらんでいて当然である」
私はそれを「特集のまえがき」で、
「産業論理と商人論理」と呼んだ。
イトーヨーカ堂から発した会社、
セブン&アイ・ホールディングスは、
すべてを包含して「時代の子」である。
だからこそ、
「会社は誰のためにあるのか?」のテーゼが、
ますます重要になってきた。
そのことを考え続けねばならない。
頑張れ。
〈結城義晴〉