非食品を扱う者にとって、
食品のビジネスは難しいのか。
2021年3月に外食に参入。
運営主体は子会社のニトリパブリック。
ホームファッションのニトリに臨接させて、
「ニトリダイニング みんなのグリル」
このブログでも取り上げた。
オーダーを受けてから一つひとつ焼きあげる。
当初は500円の240gチキンステーキ。
ハンバーグ700円。
現在はレモンペッパーチキンステーキ690円、
何度か値段がスペックを変えて試行錯誤した。
2023年の11月30日に、
みんなのグリル ホームズ川崎大師を閉店し、
同年12月21日に「みんなのサンド」オープン。
グリルレストランをサンドイッチ専門店に変えた。
こちらのほうが人件費はかからない。
しかし赤字は続いたし、
チェーンストアにはならない。
今年4月14日に、
2号店のみんなのグリル相模原店を閉店。
みんなのグリル成増店と、
みんなのサンドホームズ川崎大師店は、
今年11月17日閉店。
1号店のみんなのグリル環七梅島店も、
11月24日に閉店。
㈱ニトリパブリックの外食事業部マネジャー。
「昨今の市場環境の変化により、
飲食業からの撤退を決定致しました」
「業態を変更したり、
メニューを変更したり、
さまざまな取り組みを実施しましたが、
多店舗化することは難しいと判断いたしました」
コストコやIKEAのフードコートは、
うまくいっているのに。
ファーストリテイリングは、
2002年に生鮮野菜の事業「SKIP」を興した。
ユニクロの成功の観点から見ると、
青果物の生産と流通の多段階性は、
ムダだらけに見えた。
「アパレルの合理化の考え方とスキルが活かせる」
これはニトリのファストフードと同じだった。
しかも食の安全・安心が注目されていた。
だからユニクロは永田農法を採用した。
しかしSKIPは、同社史上最大級の失敗に終わった。
1年半後に30億円の赤字を出して、撤退した。
担当責任者が専門家になり切れなかったからだと思う。
ホームファッションとフードサービス。
アパレルと生鮮食品。
それぞれその道の専門家が、
考え方や手法を同じようしながら、
専門以外の領域に挑戦しても、
なかなかうまくいかない。
それでもニトリもユニクロも、
撤収の意思決定は早い。
朝日新聞「折々のことば」
第3271回。
専門家とアマチュアの区別は、
作品の質の良し悪しとは、
別個である。
(詩人で評論家の大岡信)
専門家とは、
「先人たちの仕事の累積の中に
自己自身を自覚的に位置づける
意思と実行力をもつ者」のことだ
「しかもそういう歴史を
踏まえているというにとどまらず、
つねにそれらに厳しく対峙するような
緊張の中にいるということだ」
(『肉眼の思想』から)
編著者の鷲田誠一さん。
「作家や画家、音楽家ならすぐに分かるが、
じゃあ政治家の場合は(?)とつい考えてしまう」
ニトリやユニクロも、
家具や服の世界に対しては、
「先人たちの仕事の累積の中に
自己自身を自覚的に位置づける
意思と実行力」をもっていたと思う。
しかし食品に対しては、
それがまだ足りなかった。
つねにそれらに厳しく対峙するような
緊張の中にいたとは言えなかった。
商品の質の良し悪しとは別のものが必須なのだ。
食品の専門家たちには、
自己自身を自覚的に位置づける、
意志と実行力が求められる。
私たちは専門家であるために、
常に自己自身と厳しく対峙するような、
緊張の中にいなければならない。
〈結城義晴〉