ジョン・レノンのクリスマスソング。
「ハッピー・クリスマス」
Happy Xmas (War Is Over)
So this is Xmas
And what have you done?
Another year over
And a new one just begun
そう今日はクリスマス
君は何をした?
今年も終わってしまう
新しい年がいま始まる
And so this is Xmas
I hope you have fun
The near and the dear one
The old and the young
そう、今日はクリスマス
君が幸せでいるといいな
そばにいる人も、大切な人も
お年寄りも、若い人も
A very Merry Xmas
And a happy New Year
Let’s hope it’s a good one
Without any fear
メリークリスマス
そして新年おめでとう
良い年になることを願うよ
怖くなんかない年に
And so this is Xmas
For weak and for strong
For rich and the poor ones
The world is so wrong
そう、今日はクリスマス
弱い人にも、強い人にも
豊かな人にも、貧しい人にも
世界はひどくおかしい
And so happy Xmas
For black and for white
For yellow and red ones
Let’s stop all the fight
そして、幸せなクリスマス
黒い人も、白い人も
黄色い人も、赤い人も
すべての闘いをやめよう
War is over! If you want it
War is over! Now!
Happy Christmas!
Happy Christmas!
君がそれを望むなら戦争は終わる
闘いはいま終わる
ハッピー・クリスマス!
ハッピー・クリスマス!
1970年4月、ビートルズが解散。
翌1971年のこの曲は、
オノ・ヨーコとの共作。
1973年1月、米軍は、
ベトナム戦争から全面撤退した。
1975年4月30日、
南ベトナムの首都サイゴンが陥落。
ジョンは喜んだろうか。
それから5年、
1980年12月8日、
マンハッタンのダコタハウス前で、
銃撃に倒れた。
日経新聞夕刊一面の連載、
「あすへの話題」
6人の書き手が順番に半年間綴ってきた。
今週はその最終回。
だからみんな、
思い入れたっぷりのエッセイとなった。
今日は報道写真家の大石芳野さん。
「小さな石」
「戦争は終わっても終わらない」
大石さんは戦地で写真を撮り続け、
写真集や著作などで主張し続けてきた。
「けれど現状は厳しく、
事態は深刻になり複雑化している」
「強国の攻撃を受けたら、
弱小国は他国の援助に頼るしかない。
人びとの人権と尊厳を護るのに必須だから」
「20世紀の日本人が体験した戦争、
その後のベトナム戦争などが再現される
今の悍(おぞ)ましさのなかで
わたしたちは生きている」
「いまだに傷痕に苛(さいな)まれる個人。
弾丸に苦しむパレスチナ、ウクライナ、
はたまた内紛に苦しむ
ミャンマーやスーダンの人びと」
「終わらない戦争という現実に
暗澹(あんたん)となる」
それはジョンの生きた時代よりも、
はるかに複雑で深刻だ。
大石さん。
「惟(おもいみ)ると、
小石を水面に投げれば波紋ができる。
一人の声は小さくても伝播(でんぱ)していく」
「個人の存在は小さな石でも、
集まれば広場にもなる」
いや、大石になる(!?)
「その力を信じながら
写真の道を歩いてきただけに、
微力だけれど諦めたくはない」
「小さな石を投げ続ければ、
何かが変わる可能性に期待したい」
ジョンの「Happy Christmas」も、
たった一つの短い歌だが、
何かを変える力をもっている。
今夜は世界中で歌いたい。
Let’s stop all the fight
考えてみると、
ジョン・レノンと、
ポール・マッカートニーは、
偉大な音楽商人でもあった。
だから長い音楽の歴史のなかで、
誰よりもマネーを稼いだ。
商人は何かを変える力をもっている。
ジョンはストイックな商人で、
ポールはエピキュリアンの商人だった。
その二人が一緒になったからこそ、
レノン&マッカートニーは、
ベートーベンやモーツアルトと、
並び称される存在となった。
あなたはどっち派の商人だろうか。
振り返ってみてほしい。
どちらも尊い。
どちらも素晴らしい。
できれば自分と反対の相棒をもちたい。
それがレノン&マッカートニーになる、
たった一つの条件だ。
そして同じ歌を一緒に歌いたい。
A very Merry Xmas
And a happy New Year
Let’s hope it’s a good one
Without any fear
ありがとう、
メリー・クリスマス。
〈結城義晴〉