Everyone, Good Monday!
[2025vol②]
2025年第3週。
ハッピーマンデーの成人の日。
109万人。
この人たちが将来の世界を担う。
日本を支えるし、地域をリードする。
しかし彼らの未来は、
決して安穏ではない。
日経新聞「私の履歴書」
今月は岡藤正広さん。
伊藤忠商事会長CEO。
[伊藤忠商事ホームページより]
1949年生まれ。
私の3つ上の団塊の世代。
二浪して東京大学経済学部に入り、
伊藤忠商事に入社する。
繊維畑に配属されるが、
「岡藤は使えない」と酷評される。
ここで師匠が登場する。
連載第10回。
「 営業の師『水のような商人』が手本」
岡藤さんの指導役になったのは、
峠一さんという人だ。
伊藤忠商事の社員ではない。
英国産毛織物のエージェントの人。
つまり、社外の人から教育を受けた。
私にもそういう人がいた。
まずプリマートの八木さんという人が、
流通業界のいろいろなことを教えてくれた。
プリマートはその後、
マルエツに吸収されてしまった。
そのあとは荒井伸也さん。
ご存知、サミット㈱社長・会長。
作家安土敏さん。
社外の人から教わることは、
実は多い。
岡藤さんの師匠の峠さんは、
高校を出てしばらくぶらぶらしているところを、
拾われるようにして繊維業界に飛び込んだ。
年齢は岡藤さんより3つ上だが、
峠さんはやり手の営業マンだった。
「見た目はずんぐりむっくりで目がギョロリ。
いかにも愛嬌がある。
商談にのぞんでも
相手をなだめすかすのがとにかくうまい」
「ちょっともめ事があって相手が怒っていても
かわいげのある言い方でやり過ごし、
怒りが冷めるのを待つ」
すると絶妙なタイミングで反物の見本を取り出し、
「こんなんもあるんですけど、どうでっしゃろ」
相手は「まったく、あんたにはかなわんな」と
話に乗ってくる。
「なるほど、これはうまい」
「言い回し、間の取り方、
勝負をしかけるタイミング、
それになんと言っても
相手の心をつかむなんとも言えないしぐさ――」
岡藤さんはそのどれにも、
毎度、感心させられた。
岡藤さんはよく言う。
「商人は水であれ」
お客さんの要望にあわせて
水のようにどんな形にでも
姿を変えてみせる。
「それが商人のあるべき姿だ」と、
岡藤さんは学んだ。
峠さんはまさに「水の商人」だった。
それに、とにかくお客さんが欲しいと思うものを
先回りして用意する人だった。
「私は経営者になってから、
口を酸っぱくしてマーケット・インの発想を持てと
社内で説いてきたが、
その範を示してくれていたのが峠さんだったのだ」
「単に話の持っていき方がうまいだけではない。
峠さんはとにかくしつこい人だった。
一度や二度、断られたくらいで引き下がらない」
「何ごともなかったかのように
何度でも客先に出向くのだ。
これは後々に私も実践したことだ」
「こうして私は社外の営業の師から
商売のイロハを教えられた」
岡藤さんの「水の商人」
マーケット・インの発想。
岡藤さんは繊維畑を歩んで、
伊藤忠の社長、会長となった。
総合商社は「水の商売」なのだろうか。
「水の商人」に対しては、
「火の商人」が考えられる。
その代表はダイエーの中内功さんだろう。
壮大なロマンに向かって、
火の玉のように突き進む。
松下幸之助さんとさえも喧嘩する。
一方、私の師・荒井伸也さんは、
住友商事出身だ。
そして「理の商人」だ。
岡藤さんとはまったく違う。
だからだろう、
荒井さんはサミットという赤字の子会社に、
手を挙げて出向した。
総合商社を離れて、
チェーンストアに来た。
そして完全に理論で立て直した。
対してヤオコーの川野幸夫さんは、
自ら「情の商人」と言った。
情に厚いのが商人である、と。
水の商人、
火の商人。
理の商人、
情の商人。
いずれも魅力的だ。
そしてそれに徹して成功を収めた。
私は商人の魂をもったジャーナリストを標榜している。
では、みなさん、今週も、
それぞれ、自分らしい商人であってほしい。
Good Monday!
〈結城義晴〉