結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年02月04日(火曜日)

「米国の世紀の終わり」と「耳は大なるべく 口は小なるべし」

立春が過ぎても、
寒さは続く。

北極方面から寒波が、
対をなして二方向へ流れ込んでいる。

一方はカナダ東部方面へ、
そしてアメリカ北部へ。

もう一方がユーラシア大陸から、
日本列島へ。

私は今週木曜日からニューヨークに出張する。
16日間。

最低気温はずっと氷点下だ。
思いやられる。

しかし冬のニューヨークは、
いつもこんなもの。

覚悟はできている。

さてそのアメリカ。

日経新聞の経済欄エッセイ「大機小機」
「米国の世紀の終わり」
コラムニストは与次郎さん。

この欄は学者・ジャーナリストなどが、
匿名で書いているから、
ズバリと指摘する。

今回も納得できる。

1月20日、米国の第47代大統領に、
ドナルド・トランプが就任。

「米国の黄金時代が今始まる」と宣言した。

アメリカの1人当たりのGDPは、
1899年にイギリスを抜いた。

19世紀に大英帝国が世界に君臨した。
それに代わって米国が世界1位の経済大国となった。

しかしアメリカも、
「直ちに国際政治の表舞台に躍り出たわけではない」

2つの大戦に挟まれた1930年代、
世界は大恐慌に陥った。

経済学者キンドルバーガーは指摘した。
大恐慌の理由の一つは、
「経済大国となった米国が国際政治において、
しかるべきリーダーシップを
発揮しなかったからだ」

「しかし第2次世界大戦の終結時、
米国は自他共に認める国際社会の
リーダーとなっていた」

第2次大戦末期の1944年。
米国の避暑地ブレトンウッズで会議が開かれた。

イギリスは経済学者ケインズが率いていた。
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アメリカはこのケインズとともに、
関税を下げて自由貿易を推進する、
戦後のレジームを提唱した。

「ブレトンウッズ体制」である。

大恐慌の30年代に各国は、
自国産業を守るため高い関税を課し、
結果として世界貿易を縮小させて
対立の時代を招いた。

それへの反省があった。

「米国はこうした理念を実現すべく、
リーダーとしての役割を果たした」

ケネディ大統領が提唱し、
関税貿易一般協定(GATT)の交渉で、
各国の利害を調整して関税の引き下げをして。
「ケネディ・ラウンド」と呼ばれる。
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これが大戦後の自由貿易体制の成果だった。

その後、米国は変容し、
日米貿易摩擦も起こした。

それでも、世界貿易機関(WTO)が、
十分には機能しないなかで、
地域的な貿易協定を進めるなど
自由貿易の旗を降ろさなかった。

しかし2期目のトランプ大統領の再登板で、
「自由で開かれた世界」のリーダーであった、
米国の時代は終焉した。

米国第一主義を唱えるトランプが、
最も重視する手段は関税だ。
「国際社会は一気に、
100年ほど前に戻ることになる」

そう、100年前に後退する。

国際政治学者ジョセフ・ナイ。
「米国の強さは経済力だけでなく、
『ソフトパワー』によって支えられている」
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コラムニスト。
「確かに、かつての米国には
そうした無形の魅力があった。
だから各国は『米国の世紀』を受け入れたのだ」

しかし、突然。
グリーンランドは自国のものであるべきだなどと、
米国大統領が公言する。

この不躾(ぶしつけ)に、
世界は眉をひそめた。

コラムニスト。
「こうして、米国は、
ソフトパワーも失うことになった」

「内向き」になろうとするアメリカは、
どう変わっていくのか。

もちろん米国チェーンストアの先進性は、
すぐに失われるものではない。
私たちはそれを実感しに行く。

大統領選挙のあと、
若いアメリカ人が言っていた。
「われわれの政治は、
スポーツのようなものだ」

勝ったり負けたりのスポーツか。
そんな軽いものなのか。

わかる気はする。

しかし「米国の世紀の終わり」が、
世界を変えることは確かだ。

朝日新聞「折々のことば」
第3333回。

耳は大なるべく
口は小なるべし
(ことわざ)

「情報は広範囲から得るのがよいが、
それを人に語るのは控えめにしたほうがいい」

ことわざとドラルド・トランプは正反対だ。

『新明解故事ことわざ辞典』から。
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くわえて「耳の楽しむ時は慎むべし」
(甘いことを言われるとつい判断を誤るから、
何事も慎重に)

サム・ウォルトンのことば。
Keep your ear to the ground!
〈地に耳をつけよ〉
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ウォルマートはずっと、
そうあってほしいと思う。

〈結城義晴〉

2025年02月03日(月曜日)

立春の「愚の上の愚」とヨーク・ホールディングスの「売却先」

Everyone, Good Monday!
[2025vol④]
2025年第5週。

立春。

それなのに横浜は寒い。

何事もなくて春たつあしたかな
〈井上士朗〉

「あした」は「朝」のこと。
何事もなく立春をむかえる朝である。

それもいい。

もう一句は、小林一茶。
還暦の年に詠んだ。
春立つや愚の上に又愚にかへる

立春は旧暦の正月に近い。
新しい年が来た。

一茶は愚の上にまた愚にかえる。
自虐的なようでいて、
達観したようでもある。

私は今日も横浜商人舎オフィス。
一日中、原稿に手を入れ、
あるいは自分で書く。

そして入稿。

じっと座ってばかりはいけないので、
例によってスクワット。IMG_0462 (002)
⑴深くゆっくりしゃがむスクワット35回。

⑵スロートレーニング20回。
深く、しっかりしゃがんで、
そこからゆっくり立ち上がってきて、
完全に立ち上がりきらずに、
またしゃがむ。

⑶しゃがんでから速く立つスクワット10回。

ああ、しんどい。
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れでも毎日3セットずつやっているので、
慣れてきて、楽しくなる。

さて日経新聞電子版。
「イトーヨーカ堂など売却交渉、
ヒューリックがKKRと連携」

㈱セブン&アイ・ホールディングス傘下の、
㈱ヨーク・ホールディングス。

イトーヨーカ堂、ヨークベニマルを中心に、
セブン&アイ・フードシステムズ、ロフト、
赤ちゃん本舗など31社。

2月末に売却の方針が出ているが、
米国投資ファンドのKKRが、
不動産会社のヒューリックと組んで、
買収提案をしたらしい。

KKRは西友の85%をもつ筆頭株主だが、
その西友株を売りに出して、
その売却益でヨークを買うようだ。

ヒューリックは、
ディベロッパー系の不動産会社として、
日本で6番目の規模の企業だ。
旧富士銀行(現みずほ銀行)系の不動産会社。

日経の情報網に入った。

ほかにはベインキャピタルと、
日本産業パートナーズが手を挙げている。
前者は米国投資ファンド、
後者は日本の投資ファンド。

昨年の1次入札を通過した3社が、
1月末までに応札した。

セブン&アイは各社の正式提案をもとに、
春までに1社に優先交渉権を与える予定。

いずれにしても投資ファンドが、
ヨーク・ホールディングスを買おうとしている。

嫌な気分だ。

会社は誰のためにあるのか?
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いつも書くけれど、
イトーヨーカ堂やヨークベニマルの幹部・社員は、
どんな気持ちなのだろう。

イトーヨーカ堂は業績不振だが、
ヨークベニマルは問題はない。

ただセブン&アイの子会社になってしまった。
それだけで勝手に売り買いの対象にされている。

ドナルド・トランプ大統領が、
さまざまな大統領令に署名して、
カナダ・メキシコ・中国などの関税を上げる。

カナダ・メキシコは25%、
中国は10%の追加関税を課す。

アメリカ自身を加えて、
関係する4カ国でGDPが目減りする。
年間90兆円規模。

そのうち半分は米国自身が負う可能性がある。
これも日経の記事だが、
世界経済に波乱が巻き起こる。

それが日本の株価まで下げている。

ファンドにとって、
会社という商品を買いやすい状況が生まれる。

それも大いに迷惑だ。

一方で、西友の売却期限も迫っている。

何事もない立春ではなくて、
愚の上に愚にかえる立春である。

それでもわれわれはいつも、
顧客を向いて仕事をしたい。

ちいさな喜び、つくります。
ささやかな幸せ、ご提供。
あすへの希望、つむぎます。

では、みなさん、今週も、
あすへの希望を。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年02月02日(日曜日)

節分「恵方巻・手巻き寿司」と藤井聡太「神の手」/原稿用紙の「効用」

2025節分。
明日は立春。

今年は2月2日のゾロ目の日曜日となった。

けれど今冬一番の寒気が、
日本列島に南下してきた。

ライフ中原井田店。

鮮魚売場は手巻き寿司セットを売り込んだ。
円形のトレーは1380円。
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四角い大型トレーは1680円。IMG_0455 (002)

惣菜売場は寿司コーナーを2倍に広げた。
そして平ケースは恵方巻。
1本ものとハーフを半々くらい。

恵方巻と手巻き寿司。
徹底して売り込んだ。

今日は朝から、
第50回将棋棋王戦。
その第一局。
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藤井聡太棋王に増田康宏八段が挑む。
持ち時間それぞれ4時間の1日制の対局。
5番勝負の第一戦。

ときどきパソコンとスマホで、
AbemaTVを開いて観戦。

手が進むたびに覗いた。

藤井棋王は22歳。
現在、タイトル七冠。

2023年に史上初の全八冠独占。

叡王のタイトルだけ、
同年の伊藤匠に奪われて、
今、七冠。

棋王戦は2022年度に、
当時の渡辺明棋王に挑戦。
3勝1敗で破ってタイトル奪取。
今期は3連覇に挑む。

増田八段は27歳。

「藤井が西の天才、増田は東の天才」
そう呼ばれたこともある。

東京都昭島市出身。

2024年度に順位戦のA級にランクイン。

棋王戦参戦10期目となる今期、
タイトル初挑戦を決めた。

注目の一戦だ。
.棋王戦

角換わり相腰掛銀の戦型。
増田が新工夫を見せて、
中盤までリードした。
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しかし終盤、増田にわずかに緩い手が出ると、
藤井が逆転して一気に優勢に持ち込む。
そしてそのまま藤井曲線で勝利。
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読みの深さが他を圧している。

今、藤井聡太と同時代に生きている。
大谷翔平とも井上尚弥とも。

それは幸せなことなのだと思う。

さて1日中、とびとび将棋観戦。

一歩も外に出ず、
原稿執筆に勤しんだ。

日経新聞夕刊「あすへの話題」
作家の荻原浩さんの1月30日のエッセイ。
「原稿用紙、1枚2枚」 

「昔の文豪のポートレートでは
万年筆を手に
原稿用紙に向かっている姿を
よく目にするが、
私は文豪ではないし、
いちおう昔の人というほどでもないので、
原稿はパソコンで書いている」

私も。

「ほとんどの小説家が
キーボードを叩いて文章を書いているのに、
小説の世界では、なぜか、
文字の分量を表す単位は、
いまだに原稿用紙換算だ」

原稿料の支払いも。

「20字×20行の400文字が1枚で、
何枚を書くとか、書いたとか、
というやり取りをするのが、普通」

私も自分の名前の入った商人舎の原稿用紙に、
何枚書いた、とやっていた。
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「著者渾身の大作、1200枚!!」
「一挙150枚掲載」

このときの「枚」は原稿用紙の1枚2枚。

萩原さん。
「新聞の連載小説は、1日分が原稿用紙2枚半弱。
週刊誌連載は経験上は毎週15~17枚。
月刊小説誌の場合、50~60枚をメドにしている」

「こういう枚数って、書きはじめる時には、
『○枚かあ。ずいぶん多いな』
と思うのだが、書き進めるうちに、
なぜか毎回、文字数がオーバーしそうになるのだ」

「このコラムも気づけば、
ああ、残り1行。また来週」

このエッセイ。
ネタがないときの常道。

いわゆる原稿用紙ネタ。

わかる‼

私は今「何枚」を卒業した。

「何文字」

ブログは今年の初めに、
1000字から1500字と宣言した。
2000字を超えることもある。

1000字は原稿用紙2枚半。
やはり短い。

1500字は3枚と4分の3。
2000字は5枚。

雑誌に書くときは、
4ページで5000字くらい。
原稿用紙にすると12枚ちょっと。

いい具合だ。

以前は1本1万字くらいだった。
原稿用紙で25枚。
雑誌原稿では大作だ。

思い返せば、
立教大学院で指導した院生の修士論文が、
最少で4万字だった。

結城ゼミでは、
10万字を書き連ねた豪の者がいた。
そのころから私も「原稿用紙何枚」を卒業した。

20代から30代のころは、
原稿1枚について会社から500円が支給された。
毎月100枚書けば5万円だった。

私は少なくとも年間に1000枚以上は書いた。

原稿料が欲しかったわけではない。
取材したり座談会を開いたりして、
それを原稿にして雑誌に載せたら、
自然にそうなった。

万年筆かボールペンテルで、
筆圧強く、原稿用紙に書き込んでいく。

中指にペン蛸ができた。

1時間に4、5枚。
2時間で8枚から10枚。
3時間で1本。

そんなペース。

原稿書きの仕事は、
本来、出来栄え管理なのだが、
原稿用紙に書いていくと、
出来高管理の気分になる。

それはそれで、
「やったー」「書いたー」の心持ちになって、
いいもんだった。

原稿用紙には効用がある。

出来栄えという「質」の仕事と、
出来高という「量」の仕事。

「量と質」には、
単純には言い表せない、
不思議な関係があるのだ。

〈結城義晴〉

2025年02月01日(土曜日)

「正答」という値札は豆の中に埋まっていていい。

2月1日。

如月や値札ふかぶか豆の中
〈中村草田男〉

節分の豆の販売だろうか。
量り売りなのだろう。
値札が深々と豆の中に埋まっている。

もう一句。
約束はひかへ目にして如月は
〈稲畑汀子〉

2月の約束は控えめに。

私は2月6日(木)からニューヨーク。
帰国は21日(金)。

だから約束も控えめだ。

その前に月刊商人舎2月号を仕上げる。
だから今日も出社して原稿執筆。

今月は現場の問題に取り組んだ。
なかなかいい特集になってきている。

いつもいつもモノづくりには、
「これでいい」という限界はない。

「もっともっと」と上を目指す。
時間はいくらあっても足りない。

夜食はパスタハウス。

大いに満足。
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疲れも癒される。
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朝日新聞「折々のことば」
第3325回。

真理はひとつ、これだ、と言って
自分の中にあるものを示す説き方に、
私はうたがいをもつ。
〈鶴見俊輔〉
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鶴見俊輔は、
1922年(大正11年)生まれ。
ダイエーの中内さんと同じ年。

リベラルな立場で論壇を牽引した。
2015年に93歳で亡くなったが、
そんなに長生きだったのかと思ったりする。

「生徒が誤った答えをした時、
間違いを指摘し、
唯一の正答へ導こうとする教師と、
そこに『別の問題への芽ばえ』を感じ、
問いの別の途(みち)を
ともに歩もうとする教師がいる」

「問いはいろいろな形に成長し、
枝分かれしてゆくもの」

「真理を囲い込まずに、
間違いをどう活かすか考えるほうが
望ましい」

『教育再定義への試み』から。
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同感だ。

とくに仕事や商売の場合、
「唯一の正答」などない。

「問いはいろいろな形に成長し、
枝分かれしていく」

だから私は、
「チェーンストアはこうでなければならない」
という言説に疑いをもつ。

メーカーはこうでなければならん。
商社は、問屋はこうあるべきだ。

そんなことにも疑いをもつのがいい。

もちろんそれらは、
仕事の「原理原則」を、
無視してよいということではない。

「真理」を囲い込んではならない。

そしてこの「疑い」をもつところから、
ポジショニング戦略が生まれてくる。
ポジショニングは様々でいい。

「それぞれのドラッカー」でよろしい。

意外かと思われるかもしれないが、
鶴見さんは漫画「がきデカ」を評価した。
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「『がきデカ』の主人公は、
ムキダシの欲望であばれ回る少年です」

「自分の欲望に従って生きようという
がきデカが増えたことが
ファシズムの防波堤になる、と思う」

「簡単に、命令一下の体制に
追い込むわけにはいかないですよ」

1994年には、
コンビニエンスストアも認めた。
セブン-イレブンは1万3923店だった。

「私はコンビニに期待する。
単なる消費者民主主義というが、
たいしたもんです」

セブン-イレブンに限らず、
チェーンストアは言葉そのままに、
消費者民主主義でなければならない。

これにも同感だ。

「真理」や「正答」という値札は、
豆のなかに埋(うず)まっていて、いい。

2月も私はそう考えていたい。
そういう原稿を書き続けたい。

〈結城義晴〉

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