朝6時のリムジンバスで、
横浜から羽田へ。
8時発のJALに乗り込んで、
1時間半ほどで福岡空港。
到着するといつも、
少し早めの昼食を食べる。
そして名物やりうどん。
真ん中に槍を見立てたごぼうの天ぷら。
麺はつるっとした噛みごたえのないうどん。
これがいい。
伯父が亡くなった。
結城信行。
3月に満100歳の祝いをした。
「百寿」という。
伯父はカウントダウンしていたそうだ。
「100歳まで生きる」
それを成し遂げて、
安らかに眠った。
葬儀、出棺、火葬場、
そして初七日の法要。
粛々と進んだ。
ずっと浄土真宗の念仏の読経が流れていた。
「南無阿弥陀仏」
伯父は結城一族の長老。
かつては町会議員を務め、
博識だった。
驚くほどの記憶力だった。
私の父結城義登は一つ下の弟だ。
2014年11月4日に逝った。
父も米寿まで生きた。
伯父は父を「義ちゃん、義ちゃん」と呼んだ。
父は伯父を「信ちゃん」と言った。
仲良く碁を打っていた。
伯父にとって父は自慢の弟だった。
子どものころから父のほうが健康優良児。
成人し、壮年しても、父のほうが元気だった。
伯父は60歳で腎臓を患った。
それでも節制を重ねて、
100歳まで生きた。
その伯父は第二次大戦に召集されて、
関東軍に入った。
戦って敗戦。
伯父はシベリアに抑留された。
捕虜だ。
その厳しい抑留期間の最後のころ、
本当に珍しいことに、
缶詰が支給された。
若い日本兵が、
その缶詰を開けようとした。
しかし手がぶるぶる震えて、
開けられなかった。
寒さと喜び、それに緊張感が加わって、
缶切りで缶詰を開けることができない。
伯父が代わって、
「ナマンダブ、ナマンダブ」と唱えながら、
缶切りを動かすと、
すんなりと缶詰が開いた。
「ナマンダブのおかげ」
伯父は思い出しながらつぶやいた。
「ナマンダブ」は万能だ。
伯母との最後のお別れのときにも、
伯父は「ナマンダブ、ナマンダブ」と唱えた。
私も「ナマンダブ、ナマンダブ」と、
伯父を見送った。
100歳の大往生。
凄い伯父だった。
ナマンダブ、ナマンダブ。
さて今日は東京で、
イオン㈱の2025年2月期決算説明会。
場所は神田ベルサール。
山本恭広編集長が取材した。
会場に用意された約150席は、
メディア関係者で7割方埋まる。
登壇者は3人。
江川敬明執行役財務・経営管理担当、
吉田昭夫代表執行役社長、
そして四方基之執行役戦略担当。
江川執行役から業績の説明。
営業収益10兆1349億円(対前期比6.1%増)、
営業利益2377億円(5.2%減)、
経常利益2242億円(5.6%減)。
営業収益はとうとう10兆円を突破した。
過去最高収益。
しかし粗利益率を下げて、
増収減益。
商人舎流通SuperNews。
イオンnews|
営業収益10兆1349億円6.1%増/全セグメントで増収
総合スーパー事業が全体で3兆5594億円、
スーパーマーケット事業は3兆600億円、
ドラッグストア事業は1兆3228億円。
いずれも日本でトップのスケールをもつ。
実質的には日本最大の小売業である。
決算概要の説明のあとは、
吉田社長が2025年の取り組みを説明した。
いつも説得力がある。
環境変化が激しい。
それは業界内の競争や再編だけでなく、
産業構造そのものが変容を見せているからだ。
消費者と市場の変化、
供給側の変化、
新規参入者の変化、
そして技術革新による変化。
それらが業界内の競争を激しくし、
シェア競争が加速化される。
吉田さんは何度も、
「スケーラビリティ」という言葉を使った。
それがイオンの強みである。
イオンの決算説明会終了後、続いて緊急会見。
「ドラッグ事業の今後について」
イオン吉田昭夫社長、
ツルハホールディングス鶴羽順社長、
ウエルシアホールディングス桐澤英明社長、
3人が壇上に揃った。
イオンnews|
12月にツルハ、ウエルシアと3社統合/2032年3兆円へ
イオンを中心に、
ツルハホールディングスが、
ウエルシアホールディングスと、
資本業務提携に関する最終契約を締結。
経営統合に関する株式交換契約も締結。
3社の統合は2024年2月に発表されて、
2027年度をめどにしていた。
それが早まった。
株式交換は2024年12月1日。
ウエルシアホールディングスは、
11月27日に上場を廃止する。
両社合わせて売上高2兆3124億円、
店舗数5659。
日本最大で圧倒的な、
ドラッグストアチェーンが誕生する。
ツルハの鶴羽社長。
「イオンが有する食品などの知見、
物流インフラをはじめとする資源、
そしてスケールメリットを最大に生かし、
アジアNo1ドラッグチェーンになりたい」
続いてウエルシア桐澤社長が統合の意義を説明する。
「ウエルシアは調剤に強みを持つ。
ツルハは日用雑貨の品揃えが強い。
両社の強みに、イオンの食品をいち早く融合させて、
より競争力のあるドラッグストアをつくりたい」
イオンの吉田社長。
「ヘルス&ウエルネスは、
さらなる成長フェーズを迎える。
鶴羽社長、桐澤社長の若い2人が、
新しいドラッグストア像を、
つくりあげると思っている」
ふたつの記者会見の段取り組み。
絶妙だったと思った。
私はあとから会見の模様を知った。
そして万能の「ナマンダブ」を唱えた。
〈結城義晴〉