東京駅に正午。
宮本洋一さんと待ち合わせた。
ブルーチップ㈱社長。
二人並んで北陸新幹線に乗り込む。
車内で幕の内弁当とおーいお茶。
長野の小布施のあたり。
空は青い。
上越妙高駅に到着。
新潟県の地方紙「新潟日報」
大学時代の親友がこの新聞に入って、
常務になった。
その巻頭コラム「日報抄」
ときどき読む。
4月22日版。
「新潟市など県内の平野部は
桜の見頃も過ぎた」
ああ、ちょっと残念。
「気温が上がり初夏の装いだが、
お忘れなきよう。
中山間地では、
まだ雪をかぶった農地も少なくない」
「雪解けが進むこの時季、
豪雪地には特有の空気がある。
正確に言えば、あると信じている」
「匂いもないので言葉ではうまく言い表せない」
「陽光が降り注ぐ日に、
鼻の奥までスーと入り込み、
心も体も浄化されるような気持ちになる」
上越妙高の駅を降りて、
そんな気分になった。
「少しひんやりとした
その空気と結びつく景色は、
雪が消えかけて土が見える田んぼだったり、
雪解け水が勢いよく流れる川の岸だったり」
「水蒸気が多く含まれているのだろうか。
マイナスイオンかもしれない。
遠い子どもの頃から
体に備わるセンサーが反応する。
だから懐かしい」
コラム子は文学的だ。
「残雪の脇でスイセンの芽が顔を出していた。
山並みに新緑がもえだすのは間もなくだろう。
平野部から周回遅れの桜の開花も味わい深い」
「至宝の山菜だと確信する木の芽が待ち遠しい。
のどかな地域でしか味わえない、
ささやかな優越感を覚える」
新潟にはそういった趣がある。
イチコ高田南店に寄った。
2008年オープン。
すっきりとしたいい店だ。
アートホテルにチェックインして、
イチコ協力会総会の会場デュオ・セレッソへ。
4時から総会。
そして4時半から記念講演。
昨年もこの場で語った。
はじめに向井去来の「去来抄」から。
松尾芭蕉の弟子が書き残した師の言葉。
「蕉門に千歳不易の句、
一時流行の句と云ふ有り」
芭蕉の教えには二つの句がある。
千歳不易、千年も変わらない句。
一時流行、その時々に流行のように変わる句。
「是を二つに分けて教へ給へる。
其の元は一つ也」
変わるものと変わらぬもの。
分けて教えてくれたけれど、
おおもとは一つだ。
今日の講演はここに集約される。
「其の元は一つ也」
故伊藤雅俊さんが残した、
「基本の徹底と変化への対応」
イトーヨーカ堂の社是であり、
セブン&アイ・ホールディングスの大原則。
これも基本の徹底は変わらないもの、
変化への対応は変わるもの。
そのもとは一つでなければならない。
買わらないものとして、
商業界倉本長治の言葉。
「店は客のためにある」
そして「商売十訓」
さらに「顧客が変わる」と題して、
スチュー・レオナードと、
イータリーの紹介。
2月のニューヨークでの写真を使った。
その「Our Policy」の対比。
それから競争が変わる。
イチコに対しても私なりの提案をした。
さらに商品が変わる。
それから間髪を入れず、
懇親会。
200人の参加で盛大な会となった。
乾杯の音頭は、
鳥山畜産食品㈱社長の鳥山真さん。
見識を持った酪農家だ。
そして竹内寿会長、87歳。
矍鑠(かくしゃく)としていて、
まだ現役。
米づくりをはじめ、
農業、畜産業を指導し、
商品開発の経験も深い。
懇親会では多くの人が挨拶に来てくれた。
感謝したい。
中締めは㈱平八代表取締役の横山亘さん。
いつも軽妙な話しぶりだが、
この人は優秀だ。
最後の最後は竹内社長、宮本社長と三人の写真。
二次会はこれも盛大で、
店を借り切っての懇親。
楽しく懇談した。
変わらないもの。
「千歳不易」
変わるもの。
「一時流行」
「其の元は一つ也」
今日はずっとこれを考えていた。
〈結城義晴〉