2月の業態別売上実績の「商略」と商売の三大原則
昨日の商人舎流通スーパーニュース。
2月6業態統計まとめ|
コンビニ増収/総合スーパーとスーパーマーケットは減収
今年の二月、逃げる。
2月決算企業も3月決算企業も、
最後の追い込みにもかかわらず悪かった。
しかし、
全業態が低調というわけでもない。
既存店売上高の前年同月比。
良かった業態から並べよう。
⑴コンビニエンスストア2.0%増
⑵外食産業1.9%増
⑶ショッピングセンター0.9%増
⑷百貨店0.4%増
ここまでが前年比プラス。
⑸スーパーマーケット2.2%減
⑹総合スーパーは2.5%減
その業態の全体の売上高が、
スーパーマーケットは97.8%、
総合スーパーは97.5%。
ただし業界や業態が、
全体でマイナス2%台というのは、
前年比100%前後の企業があった半面、
9割を割る企業も多かったということだ。
95%を切った企業、
90%にしか行かなかった企業は、
厳しい表現となるが、
根本的に何かがおかしい。
あるいは決定的に競争の敗者である。
小手先の「商略」では、
問題は解決しない。
「商略」という用語は、
故渥美俊一先生がよく使われた。
商いの駆け引きや策略。
あの手この手の目先の作戦。
あるいは士気高揚だけの方策。
くるくると方針が変わる。
政策の軸がぶれる。
「すぐ役に立つことは
すぐに役立たなくなる」
(橋本武)
何度でも言わねばならない。
商略に頼っていては、
これからの競争時代に、
絶対に生き残ってはいけない。
厳しい時代に入ってきた。
ただし、小売業は、
回転差資金が働く生業(なりわい)だ。
一言でいわば、
キャッシュフロー経営をやりやすい。
最も潰れにくい業種である。
だからオーソドックスに、
基本の徹底を繰り返すこと。
その三大原則はQSC。
第1にQuality
第2にService
第3にCleanliness
第1は「品質、鮮度、味」
第2は「フレンドリーサービス」
第3は「クレンリネス」
クレンリネスははただ清潔で、
きれいなだけでは足りない。
ピカピカなこと。
一方、鈴木敏文さんが考え出した、
セブン-イレブンの四大原則は、
①品揃え
②鮮度管理
③クリンリネス
④フレンドリーサービス
商売の原則のQSCの中のQualityが、
コンビニでは鮮度管理だとすれば、
①の品揃え、欠品しないことが加わる。
ただし近年は、
「売り切れ御免」の商売も成り立つ。
それを戦略にしている企業もある。
ドン・キホーテがその代表だし、
エブリイも故岡﨑雅廣さんが、
この戦略を打ち出した。
アメリカでは、
「ポップアップセール」と呼んで、
大きな成果を上げている。
⑴全店に、
⑵標準化して、
⑶エブリデー、
⑷品揃えしなければいけない。
それもあっていいだろうけれど、
それがない企業もあっていい。
それがない時期があってもいい。
年末商戦などその一例だ。
これもポジショニング戦略の一環である。
もちろん、
基本の徹底とともに、
変化への対応も必須だ。
イトーヨーカ堂の社是。
変化への対応が、
マーケティングであり、
イノベーションだ。
しかしその前に、
基本の徹底がなければ、
商売は基礎の部分から崩れていく。
さて、今日は、朝から、
東京・小平。
第一屋製パン㈱の定時株主総会。
小平の本社と小平工場。
その敷地に桜が八分咲き。
前年の決算を発表し、
今年度の方針を株主に問う。
東証一部上場企業だが、
アットホームな社風で、
工場の大会議室と中会議室に、
株主の皆さんに集まってもらって、
定時総会を開催する。
総会もそうだし、
その後、続けて行われる懇親会も、
温かい励ましや提案などが、
次々に発言される。
細貝理栄代表取締役会長には、
株主のファンがいて、
発言の最後に声をかけてくれる。
「会長! 100歳まで頑張ってよ!」
いいパン屋さんだね。
私もこの会社のそこが好きだ。
まだまだ改革し続け、
努力しなければならないことが、
山積しているけれど。
「おいしさに まごころこめて」
桜の花がそれを祝福してくれる。
取締役が入れ替わって、
私も再選された。
その後、役員会の面々に、
本部長や幹部全員が加わって、
立川でランチ。
お疲れさまでした。
そして今年度もよろしく。
その後、横浜商人舎オフィスに戻ると、
裏の遊歩道の早咲きの桜は、
完全に散っていた。
それでも春はこれから本番。
桜の花も「それぞれの咲き方」。
小平の工場の桜、
横浜北幸の遊歩道の桜。
どれもいい。
それがまた、
ポジショニング戦略の総体図である。
朝日新聞「折々のことば」
3月25日の第1413回。
世界がぜんたい
幸福にならないうちは
個人の幸福は
あり得ない
(宮沢賢治「農民芸術概論綱要」から)
「人は自己のみならず
他者の不幸をも悲しむ。
他人のみならず他の生き物、
さらに宇宙の苦しみをも苦しむ、
つまり共感(シンパシー)が
〈人〉の本性であるかぎり、
“世界”が幸福でなければ
自分も幸福でない」
編著者の鷲田清一さんは、
寺山修司の『幸福論』から、
とある接客業の女性の言葉を引用する。
「ひとりで
幸福になろうとしても、
それは無理よ」
私のポジショニング戦略は、
「それぞれのドラッカー」に、
根差している。
だからそれぞれに、
それぞれの良さや強みを貫く限り、
世界は幸福になる。
商略ばかりで、
自分だけ
儲けようとする者は、
必ず滅びる。
〈結城義晴〉