第15回ミドルマネジメント研修会の「仕事が人間を高める」
子を殴(う)ちしながき一瞬天の蝉
〈秋元不死男〉
中日新聞の巻頭コラム「中日春秋」が、
明治生まれの俳人の句を取り上げた。
「反抗期の男の子と父であろうか。
親が手を上げる、そのときを詠んだ句」
「痛んだのは、親の手と胸のほうであろう。
感情がはじけた後に訪れた”ながき一瞬”に、
早くも悔いがみえる」
私は他人を殴った経験がないから、
実際のところはわからないが、
明治の人の気骨や気分は、
理解できるような気がする。
自分の息子を殺害した事件。
「七十六歳の農林水産省の元次官。
手には包丁が握られていた」
息子は44歳だった。
中学生のころから、
家庭内で暴力をふるっていた。
最近は母親にも、
その暴力の矛先が向けられた。
事件の直前には、
近くの小学校の運動会の音に、
「ぶっ殺してやるぞ」などと言っていた。
すべて父親の証言だが。
川崎市登戸の児童らの殺傷事件が、
頭の中に浮かんだのかもしれない。
「怒りに満ちていて、
殺意を口にしている大人が目の前にいる。
それがわが子である」
「体力は高齢の親を上回っていようか。
知力も子どものとは違っていよう」
「追い詰められた父の気持ちと怖さ、
同情したくもなる」
安易に片付けてはいけない。
「それでも、その一瞬には、
命を奪うことのほかに、
方法があったはずである。
親なればこその手が」
何とも痛ましい。
言葉がない。
しかし自分の問題ととらえて、
深く深く考えねばならないと思う。
私は仕事こそが、
人間を人間らしくすると信じている。
今日は朝から、熱海へ。
駅前の熱海軽便鉄道7機関車の前で。
そしてニューウェルシティ湯河原。
商人舎ミドルマネジメント研修会。
もう15回となった。
午後1時から、大観の間。
ピーター・ドラッカー亡き後の、
マネジメント界のグル。
ヘンリー・ミンツバーグ。
「ミドルマネジャーこそが、
組織を変えていく力を持っている」
私もそれを信じている。
そしてドラッカーの言葉。
“Practice comes first”
実践が第一に来る。
“Theories follow events”
理論は現実に従う。
英語の授業ではないけれど、
わかりやすい英語。
みんなメモを取りつつ、
真剣に聞いてくれる。
“As a rule, theory does not precede practice.”
「原則として、理論が実践に先行することはない」
それから流通産業の志、
商人の本籍地と現住所。
さらに脱グライダー商人。
私の主張は変わらない。
倉本長治の「商売十訓」
それがドラッカーと符合している。
最後は戸籍のない産業。
スーパーマーケット。
結城義晴の2時間半の講義。
あっという間に終わって、
鈴木哲男先生の時間。
新刊の『流通RE戦略』を使いながら、
実践と経験に基づいた講義。
受講生も単行本を手に取りながら聴講。
マーチャンダイジング、
プロモーション、
そしてストアコンパリゾン。
佳境は「52週マーチャンダイジング」
誤解されていることばかり。
その誤解を解きつつ、
売場づくりの基本中の基本を、
丁寧に指導してくださる。
52週MDとは、
「毎週の重点商品を中心に
商品計画と販売計画、販促計画を
連動する組織的仕組みづくりのこと」
52週MDとは、
毎週、売場を変えることではない。
お客の生活サイクルに合わせて、
商売を組み立て実践することだ。
鈴木先生の定義が、
日本中の小売業と製造業、卸売業、
それぞれの現場で使われている。
鈴木先生の理想は、
「1日365日Day MD」
そこまでできる企業があれば、
必ず顧客から熱い支持を受ける。
鈴木先生の3時間半の講義も、
あっという間に終わって、
午後8時終了。
講義が終わったら、
明日の午前中担当の白部和孝先生と合流。
ありがとうございました。
このあと、やっと夜の食事。
それから受講生は、
各自、復習と自習。
明日の朝、理解度テストが行われる。
みんな、一心に、
今日の講義をおさらいする。
それはテストのためだけではない。
自分の仕事に生きてくる。
“Practice comes first.
Theories follow events.
As a rule,
theory does not precede practice.”
仕事は人間を鍛える。
仕事は人間を清める。
仕事は人間を高める。
人間は、それぞれに自分の仕事をもって、
その仕事から離れてはいけない。
いくつになっても、
どんな境遇でも。
(つづきます)
〈結城義晴〉