平富郎「勢いが運を呼び込む」と米国企業「株主第一主義」からの転機
今日は二十四節気の「処暑」。
1年を15日くらいずつ24に分ける。
それが二十四節気。
その「立秋」の次のクールが「処暑」。
「暑さが峠を越えて後退し始めるころ」。
中日新聞の巻頭コラム「中日春秋」
この「処暑」をテーマにした。
「街の中で赤トンボが飛ぶのをみた。
アキアカネだろう」
そして飯田蛇笏の句。
いくもどり
つばさそよがす
あきつかな
あきつは「秋津」と書いて、トンボの別名。
「秋津を詠んだ名句ではないけれど」と、
コラムニストはちょっと、
生意気な言い回し。
「涼と残暑の間を行き来しながら、
秋の色は濃くなっていくのだろう」
㈱エコス会長の平富郎さんから、
私のスマホに電話が入った。
「先生! 今月号、いいねえ」
ありがとうございます。
平さんが褒めてくださったのは、
月刊商人舎8月号特集。
増税前の店舗戦略査定!!
わが㈱商人舎には、
「発起人」の皆さんが、
93人、名を連ねてくださっている。
その皆さんを中心に、
私は毎月、レターをお送りしている。
今月の特集は6社、6店舗を、
「星一つ」「星二つ」「星三つ」で、
評価し、査定した。
そしてこのレターに書いた。
私の評価・査定に対して、
「ご批判は甘んじてお受けします」
平さんはこの私の呼びかけに、
わざわざ答えてくださった。
そして「評価」に賛同してくださった。
「星三つのロピアはいいねえ。
勢いが運を呼び込む」
これ、平さんの名言だと思う。
ロピアも完成まではまだまだだけれど、
J・バーニーが指摘する模倣困難性が、
少しずつ現出し始めた。
「ヨークベニマルとヤオコーも、
書いてある通りだ」
「先生は今、
ナンバー1のコンサルタントだ」
私は、いわゆるコンサルタントではない。
しかしそう言って褒めていただくと、
面はゆいけれど、身が引き締まる。
高い志を持ち続けねばならないと思う。
ありがとうございました。
さて今日は、朝から東京・大手町へ。
1014年開業の東京駅。
その丸の内北口の天井。
駅前には新丸ビル。
三沢厚彦のAnimal-2017-01-B2。
1961年、京都生まれの彫刻家。
半年ほど前に、
急に血糖値が上がった。
そこで田嶼尚子(たじまなおこ)先生から、
特別に指導してもらった。
東京慈恵会医科大学名誉教授。
毎月、一度、先生の医院に通って、
検査を受け、診断をしてもらって、
節制に努めた。
今日も「Perfect!」と評価してもらった。
半年間、数値は理想的に推移して、
血糖値は101まで下がり、
ヘモグロビンA1cも6.6まで下がった。
もう一息だ。
田嶋尚子先生。
「こんな人はめったにいません」
うれしい限り。
ここでも身が引き締まる。
さて、8月20日の日経新聞「真相深層」
「米企業”株主第一”に転機」
藤田和明編集委員が書く。
「米国型の資本主義が、
大きな転機を迎えつつある」
この8月19日に、
米国のビジネス・ラウンドテーブル(BR)が、
声明文を公表した。
BRは米主要企業の経営者団体である。
1972年に設立されて現在、
米国主要企業200社の首脳が会員である。
アメリカの財界組織は主に4つある。
⑴全米製造業者協会
(National Association of Manufacturers; NAM)
⑵全米商業会議所
(U.S. Chamber of Commerce)
⑶全米独立企業連盟(中小企業の代表)
(National Federation of Independent Business)
そして⑷BRは、
大企業の利益を代表する組織で、
日本でいえば経団連。
そのBRの今回の宣言は、
従来の「株主第一主義」の見直しにある。
宣言のタイトルにあるのが、
「すべての米国人のためになる経済」
JPモルガン・チェース、アマゾン・コム、
ゼネラル・モーターズなど、
米国の大企業181人の経営トップが、
今回の声明に名を連ねた。
米国の企業社会は金融危機後の10年間で、
力強い回復をみせた。
その米国型経営では、
「株主利益を最重視することが
経済全体を前に動かす」と考えられてきた。
しかしその後、深まる格差や環境問題に、
向き合わざるをえなくなってきた。
そして、
顧客や従業員、取引先、地域社会といった
利害関係者に広く配慮し、
長期に企業価値を高める必要が出てきた。
この宣言は、
株主利益第一からの転換を意味する。
藤田編集委員は述懐する。
「振り返れば、金融資本主義の暴走が
リーマン・ショックを招いた。
しかし危機を脱するために取った施策は
さらなる金融緩和であり、減税だった」
そして株価や土地など、
資産価格の押し上げが、
米国経済を支えた。
しかし、
持つものと持たざるものとの格差は、
それまで以上に広がった。
仏経済学者ジャック・アタリ。
2030年を展望した著書で、
「99%の人々が激怒する」時代の到来を、
予測し、予言した。
アタリは予言する。
「富の極度の集中、環境負荷に、
歯止めをかけなければ、
人々の怒りが爆発する」
この流れを米国企業も、
無視できなくなってきた。
そしてトップ自らが、
軌道修正を宣言した。
この意味は大きい。
欧州は米国よりも、
この修正において先を行く。
たとえば英国は、
上場企業の企業統治指針を改めた。
今年1月以降の決算期から適用している。
「利害関係者として従業員の声を
経営に取り込む」ような改革である。
しかし日本の「企業統治改革」はむしろ、
株主重視へ振り子を振る方向を選んだ。
つまり逆の振り子である。
もともと日本の企業には、
従業員や取引先、社会を大事にする、
そんな企業文化の素地がある。
近江商人の「三方良し」の精神である。
しかしその半面、利益水準は低いままだ。
30年に及ぶ株価低迷を抜け出せない。
この米国BRの宣言は、
「双方離れていた振り子が
米国からは日本の方へ
日本からは米国の方へ
寄る動きともみえる」
小売流通業のチェーンストアにおいても、
同じことが言える。
日本は米国のほうへ寄る。
しかし米国は意外にも日本を向く。
生前のサム・ウォルトンは、
日本型経営を志向していた。
ピーター・ドラッカー先生も、
日本のマネジメントに関心を抱いた。
だから盲目的な米国志向からは、
トンチンカンな施策しか生まれないのだ。
〈結城義晴〉