結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年11月09日(土曜日)

ベルリンの壁崩壊30年と「三方一両損」の壁解決法

ベルリンの壁が崩壊してから、
今日でちょうど30年。

第二次世界大戦のあと、
敗戦国のドイツは、
国土が東西に分断された。

東ドイツが共産主義、
西ドイツが資本主義。

国土だけでなく、
東ドイツ側に位置した首都ベルリンも、
公平の原則からか東西に分断された。

終戦後は、分断されていても、
ベルリンの東西往来は自由であった。

しかし1961年8月13日、突如、
東西ベルリン間の通行を遮断するため、
西ベルリンの周囲に有刺鉄線が張られ、
そののちコンクリートの壁がつくられた。

ベルリン市内の境界線を経由して、
東から西への人口流出が相次いだからだ。
東ドイツは深刻な人口減少に陥り、
自国の体制を守るために壁を設けた。

これが「ベルリンの壁」である。

しかし、28年後の1989年秋、
東欧革命が起こって、
ヨーロッパの共産主義は破綻した。

同年11月9日、壁の国境検問所が、
なし崩し的に機能を喪失して、
やがて壁そのものが撤去された。

これが「ベルリンの壁」の崩壊である。
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それから30年。

新聞各紙が巻頭コラムで取り上げた。
そのなかの中日新聞「中日春秋」。

科学者ニュートンか、別の偉人か。
有名な警句。
「人間は壁を造りすぎるが、
橋は十分に造らない」

分断するのは易しく、
協調するのは難しい。

壁は生まれやすいが、
壁は壊しにくい。

私も先月の月刊商人舎10月号で、
「4つの壁」のことを書いた。

特集は、
Big DataMarketing4.0
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私の記事は、
「データドリブン経営」入門
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「データドリブン経営」は、
データを原動力としたマネジメント、
あるいはデータが主導する経営。

そこに立ちはだかる4つの壁。
第1にデータの壁、
第2にリソース(経営資源)の壁、
第3に組織の壁、
そして第4にマインドの壁。

読んでいただきたいが、
もう雑誌は品切れ。

月刊商人舎の年間購読者になれば、
Web版で読むこともできるし、
コピーすることもできる。

12月のDREAMの記念講演では、
この話もする。

さて戦後最大のイデオロギーの壁、
人類の歴史に残る壁は、
30年前に壊された。

しかし今、地域紛争、テロや大量の難民。
人種、宗教、民族、経済などなど、
目に見えない壁が生まれている。

そしてドナルド・トランプ。
多くの複雑な壁を外してゆくのが役目の、
アメリカ合衆国大統領。

数年前に「ニュートンの警句」、
ツイッターでつぶやいた。

しかしその警告を逆読みして、
「だから壁を造るのだ」と考えた。

バカヤローだ。

アメリカ南部のビッグ・ウォール。

コラムニスト。
「三十年を経ても、
世界に壁は多く、
橋は足りない」

同感だ。

日経新聞は3日間の連載。
タイトルは「ベルリンの壁 崩壊30年」

「30年前に崩れたアイアンカーテンの次は
“バンブーカーテン”とも言われ始めた。
日本を含め世界はそれを
どう乗り越えるのか。
一段上の知恵がまた
試されようとしている」

アイアンカーテンは鉄のカーテン。
米ソ対立を中核とした東西冷戦のことだ。

バンブーカーテンは竹のカーテン。
もちろん中国の壁だ。

悩ましい。

中央政府と地方自治体の間にも、
いくつもの巨大産業のなかにも、
それぞれの会社のなかにも、
チェーンストアの本部と店舗の間にも、
店舗運営部と商品部の間にも、
壁は存在する。
組織はサイロ化する。

悩ましい。

この壁を克服する道がある。
大岡政談の「三方一両損」である。
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江戸の町奉行・大岡越前のもとに、
事件が持ち込まれる。

三両の金を拾った者と、
その金を落とした者。

どちらも、
「そんな金はいらねー」と言い張る。
江戸っ子気質だ。

そこで大岡越前は、
懐から自分の一両を出して、
四両の金にする。

そして四両を二両ずつ、
落とした者と拾った者に、
分け与える。

落とした者は三両損するところ、
二両で済んだから一両の損、
拾った者は三両もらえるところ、
二両に減ったから一両の損。
「奉行も一両の損」。

これで両者、納得。

これが「三方一両損」の物語。

世界の町奉行はこれまで、
アメリカ合衆国だった。
「奉行も一両の損」を甘んじて受けた。

現在のバカヤローは、
「一両の得」ばかりか、
三両を全部、奪おうとする。

現代は、日本も中国も、
一両損の覚悟が必要だ。

産業の壁も、会社の壁も、
組織の壁もチェーンストアの壁も、
「三方一両損」でなければ、
それを崩すことも、
壊すこともできない。

〈結城義晴〉


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