「ケインズvsハイエク」の対立軸と「EDLP対ロイヤルティ・マーケティング」の融合
Everybody! Good Monday!
[vol43]
2011年も第43週。
10月の第4週というか5週というか。
最終週というか、その前の週というか。
今日24日月曜日から、
来週月曜日の31日ハロウィンまで、
ひとくくりに一気呵成。
「秋の日はつるべ落とし」
まさしくこの言葉のように、
あっという間に時間が過ぎる。
その一刻、一時、一瞬を、
大切にしたい。
私は今週、金曜日から、
アメリカ。
ダラス、ワシントンD.C.、ニューヨーク、ロサンゼルス。
10日間。
商人舎第10回記念USA研修会。
大久保恒夫さん、林廣美先生、
豪華ゲスト講師陣とともに、
今年最後のアメリカを楽しむ。
期間中31日にハロウィンがやってきて、
そのハロウィン一色の売場が、
11月第4週木曜日のサンクスギビングデー向けに変わる。
その様を見る、聞く。
これも楽しみの一つ。
今月の商人舎標語は、
「着眼大局 着手小局」
アメリカでは、東海岸、西海岸、中南部を巡り、
ハロウィンやサンクスギビングのプロモーションを感じ取りつつ、
一方で、2012年を展望する。
今日の日経新聞朝刊『オピニオン』。
コラムニストの土谷英夫さんが、
「ケインズvsハイエク再び」と題して、
「着眼大局」の視点を書いている。
「今日10月24日は、
世界経済にとって縁起の良い日ではない」
1929年10月24日はウォール街の株が暴落し、
「世界恐慌」が始まった日。
「その世界恐慌の原因や対処法」をめぐって、
「ケインズ」と「ハイエク」の対立軸が今、
再びみたび注目されている。
1883年生まれのジョン・メイナード・ケインズは、
イギリス人で、マクロ経済学の父。
1899年誕生のフリードリッヒ・ハイエクは、
ドラッカーと同じオーストリア人で、
「『小さな政府』派の教祖」。
<ちなみに、ハイエクは故倉本長治商業界主幹と同じ年だし、
ドラッカー先生よりも10歳上>
土谷コラムニストは、
ハイエクとの直接インタビューを思い出しつつ、
その主張をまとめる。
「政府の役割を減らすべきだ。原則は2つ」
①個人の自由な行動に干渉しない。
②市場に適さないものに保護や補助金を与えない。
1980年代は「ハイエクの10年」だった。
イギリスのマーガレット・サッチャー首相が、
「規制緩和、国有企業の民営化、所得税のフラット化など、
小さな政府を実践し世界に広めた」
「快走するかに見えた市場任せの経済は、
世紀の変わり目辺りで変調をきたす」
土谷さん、文章が簡潔で、鋭い。
「米国でIT(情報技術)バブルがはじけた。
そして2008年、世界を巻き込むリーマン危機――」
「『ケインズに返れ』の声が高まる番だった」
20カ国・地域首脳会議、すなわちG20も、
ケインズ理論を選ぶ。
「日米欧が一斉に景気刺激に踏み切り、
中国も大盤振る舞いした」
その結果が昨年のV字回復。
「2009年にマイナス成長だった世界経済が
2010年には5%成長」
ケインズ優勢、ハイエク劣勢か?
だが、第2幕。
「ギリシャなど欧州の国家債務危機」
「政府が危機の原因では、
景気刺激どころではなく、
緊縮策を迫られる」
アメリカの民主党バラク・オバマ大統領は、
高い失業率に業を煮やし、異例の「雇用演説」。
ケインズ派のスタンスで、
来年の大統領選挙に臨む。
一方の「共和党は、だれが候補者になろうとも、
ハイエク派の『小さな政府』を看板にする」
さて、日本の野田政権。
「期せずしてケインズ政策をとる」
ケインズは書いた。
「ピラミッドの建設、地震、そして戦争でさえもが
富の増進に一役買うかもしれない」
ケインズが2011年の東日本大震災を言い当てたわけではないが、
復興に巨額の財政出動を要する状況は、
ケインズ政策そのものだ。
ただし、国家財政から見て、
「復興増税、消費税増税」は避けられそうもない。
米国のポール・クルーグマン教授。
このブログでもよく取り上げる。
「世界は50%以上の確率で景気後退に陥る」
しかし、中国をはじめとする新興国の経済効果で、
「世界全体では穏やかな後退にとどまる」
この点が、「30年代と大きな違い」とコラムニストは指摘する。
「先進国では格段に充実した社会保障などセーフティーネットが下支えになる。
半面、それが財政悪化の要因にもなり財政出動の余地を減らし、
時に政府自身を危機の原因に追い込む」
まさしく、オクシモロンの問題解決が要求される。
あちらを立てて、
こちらも立てる。
「ケインズは、
政府が市場の欠陥を正せると考えた。
ハイエクは、
思うままに市場を操れるほど人間は賢くないと考えた」
コラムの結び。
「この勝負、なかなかつかない」
二者択一の勝負がつかないのが、
21世紀の特徴。
そのギリギリのところで、
妥協点を見つけ、これしかないという解決策を導き出す。
これこそオクシモロンの問題解決だ。
「着眼大局 着手小局」こそ、
オクシモロンの具体的方針となる。
さて先週発表された小売業態別の9月実績。
真っ先に10月18日発表の「全国百貨店売上高概況」。
日本百貨店協会に加盟している86社の調査。
9月の総売上高は4369億7845万円で、
前年比はマイナス2.4%。
3カ月連続でマイナス。
商品別売上高は軒並みマイナス。
震災特需で夏場まで順調に推移していた家電も
ここにきて、前年比マイナス16.5%。
また、台風が週末に重なったことや、
残暑が続いたことも影響して、
秋冬物の衣料品の動きは鈍く、
マイナス2.5%だった。
エリア別にみると、新店効果が続いている福岡は、
プラス10.9%(全店ベース)と順調。
東北地区は今月、プラマイ0。
復興需要が一段落してきたことを示している。
10月20日、日本フランチャイズチェーン協会から発表の
「コンビニエンスストア統計調査」。
9月の既存店総売上高は6779億4000万円、
そして前年同月比はマイナス4.0%で、
11カ月ぶりにマイナスとなった。
昨年9月は、10月のたばこ増税を前に、
たばこを大量購入した人が多かった。
この駆け込み需要で昨年9月の売上げは絶好調。
その反動で、今年の9月は、
売上高、客平均単価ともにマイナスとなった。
たばこを含む、非食品カテゴリーの前年比は、
なんとマイナス18.5%。
ただし、来客数は微増だが、プラス0.4%。
昨年の反動を抜きにして考えれば、
9月も比較的堅調だったといえる。
最後に「スーパーマーケットの販売統計」
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会、
3協会からの合同発表。
9月の総売上高は7807億7316万円。
既存店の前年同月比は98.0%、
つまりマイナス2.0%。
食品合計は6726億9875万円(マイナス1.2%)、
生鮮3部門の合計が2524億7310万円(マイナス1.9%)、
そのうち青果が1039億0810万円(マイナス3.9%)、
水産が697億2718万円(マイナス0.4%)、
畜産が788億3782万円(マイナス0.4%)。
惣菜は689億3206万円(プラス0.4%)、
日配は1446億6981万円(マイナス1.3%)、
一般食品は2066億2379万円(マイナス0.6%)。
非食品が654億0283万円(マイナス3.6)、
その他が426億7157万円(マイナス5.8%)。
全体総括を語ったのは、
オール日本スーパーマーケット協会松本光雄専務理事。
「商売として難しい9月。
売上減の要因のひとつは、2つの台風上陸。
関西、東海、関東に被害の影響がでた。
ふたつめは、寒暖の差が激しく、
季節変動の売り場づくりができなかったこと。
昨年は、スーパーマーケットにもたばこ特需が吹き荒れた。
その反動で、4%マイナスの企業もあった」
「北海道、東北エリアが落ち着いてきたが
まだ震災による閉鎖店がある」
「部門別では、
野菜高騰が顕著だった昨年に比べ、
今年は価格が落ち着いている分、売上げはとれない。
水産はやや回復基調。
放射能汚染の風評被害は
潜在的にあっても、表には出ていない。
ただし牛肉は7掛けの値崩れ、
販売数量は8掛けと厳しい」
9月のゲストスピーカーは、
㈱ヤマナカ取締役常務執行役員の平山逸美さん。
「東海地区は50%が自動車関連産業で成り立っている。
リーマンショック、トヨタショックで
生産関連が悪化したが、回復基調にあった。
そこに震災が起こり、急激に落ち込み、
食料品支出は全国平均を下回っている」
「節電で工場などの稼働日が変更され、
週末に稼ぐ小売・サービス業は大きな影響を受けている。
一家に車が2台あればいいが、1台だと通勤に使うため、
週末の車による来店客が減り、大物購入も減った」
「円高で産業の空洞化が懸念され、
買い控えやPBなど低単価商品の購入、
ディスカウント店へのシフトが進んでいる」
「東海地区は激戦地。
地元の中での戦いから、
他府県からの参入企業との戦いに変わった。
とくに岐阜のバローの出店が加速し、
3年で20店が計画されている」
「5年前は6000人に1店舗だったが、
現在は4000人に1店舗」
「EDLPは消費者に受け入れられ始めた。
バローとマックスバリュが売上げを伸ばし、
勝ち負けが鮮明になってきている」
「ヤマナカも『チェレンジハウス』というEDLP店舗を
既存店舗の活性化策として展開しはじめている」
「ヤマナカでは新たにFSPのポイントカードを導入した。
予定の30万人を超え9月時点で37万人会員を集めた。
チラシ販促から、カード会員への
サービス、販促にシフトしていきたい」
エブリデー・ロープライス(EDLP)と、
ロイヤルティ・マーケティング。
アメリカ小売業の対立軸だ。
しかしアメリカの好調スーパーマーケットは、
HEBもウェグマンズも、
EDLPとロイヤルティ・マーケティングを、
融合させて、
ウォルマートやアルディに対抗している。
ナショナルチェーンのクローガーも、
EDLPとフリークエント・ショッパーズ・プログラムを、
両立させようと悪戦苦闘。
あちらも立てて、
こちらも立てる。
どちらかで勝負がつくことはないし、
融合も両立も簡単なことではない。
それに挑むのが、私たちの仕事。
では皆さん、今週も。
Good Monday!
<結城義晴>