石原靖曠先生との「忘年会」と岩井克人さんの「倫理と公共性」
2020年へのカウントダウン。
あと4日。
今日は夕方から、
横浜駅西口の髙島屋前に集合。
石原靖曠先生と忘年会。
スペシャリティ研究所所長。
84歳で、すこぶるお元気。
月刊商人舎12月号で対談した。
[徹底議論]流通の未来と現代化
今日は石原靖一郎さんと、
奥平哲朗さんもご一緒した。
靖一郎さん(中左)は先生のご長男で、
スペシャリティ研究所海外担当。
奥平さん(左)はこの35年も、
先生の海外ツアーのコーディネーター。
(有)タイムズコーポレーション代表取締役。
私は㈱商業界の新入社員のときから、
石原先生にご指導を受けた。
故渥美俊一先生の次の世代からは、
4人の新進気鋭のコンサルタントが活躍した。
故高山邦輔先生、
島田陽介先生、
山本浩史先生、
そして石原先生。
高山先生は亡くなり、
山本先生は芸術家となり、
島田先生と石原先生が現役コンサルタント。
石原先生のもとからは、
橋詰昇さんや有田英明さん、
そして故宗像守さんらが、
次々に登場した。
多くの若手コンサルタントが生まれ、
現在、彼らはそれぞれの領域で、
トップコンサルタントとして活躍している。
私は正確に言えば、
コンサルタントではないけれど、
石原先生にご指導をいただいた一人だ。
2008年4月17日に、
商人舎発足の会が開催された。
私は記念講演をして、
決意表明した。
「30年間は現役として頑張って、
この産業に貢献します」
このときにも石原先生には、
発起人になっていただいた。
振り返ってみると、
石原先生の年齢まで、
やり抜くということだ。
その意味でも石原先生は私の師匠だ。
今日はそんなことも思った。
ありがとうございました。
さて、日経電子版に、
岩井克人さん登場。
「貨幣が基礎、倫理と公共性必要」
日経は来年1月1日から、
「逆境の資本主義」という連載を、
スタートさせる。
その前宣伝のようなもの。
東京大学名誉教授で、
現在、国際基督教大学特別招聘教授。
理論研究の第一人者でありながら、
その文章はきわめてわかりやすい。
変な言い方だが、
私、大ファンだ。
現在の資本主義は、
大きな危機にある。
その危機を描くために、
簡潔に歴史をたどる。
1989年のベルリンの壁崩壊、
1991年のソ連崩壊。
「社会主義は全面的にではないものの
没落し、資本主義一本やりになった」
「そこで米英型の
自由放任で株主主権的な資本主義と、
様々な形の規制をもち、
ステークホルダーの利害を調整する
日独型といった選択肢があった」
米英型と日独型。
しかし、当時。
「日本はバブル崩壊に直面し、
ドイツも病人と呼ばれるほどの
経済状況だった」
だから90年代は、
「米国が未曽有の経済成長を遂げ、
欧州では英国が一人勝ち状態だった」
「その勢いで世界は米英型資本主義に
収れんするという考え方が
学界やビジネス界、政界を支配した」
ここに現在の問題の根源がある。
「結果、世界は金融の不安定化や
所得格差の拡大、環境破壊という
問題を抱えるようになった」
当時から言われ始めた、
「グローバル化」とは、
煎じ詰めれば、
米英型資本主義のことだ。
そこで岩井先生の指摘。
「問題の根源は、
理論を間違えていることだ」
ここからが岩井先生のご専門であり、
同時に重要な点だ。
「資本主義は貨幣を基礎としている」
「モノを売ってお金を得るのは、
貨幣側から考えると
モノを人に渡してお金を買っている」
「お金自体は
紙切れや金属のかけら、電子情報などで
何の役にも立たない」
「貨幣は純粋な投機であり、
投機はバブルの生成と崩壊を起こしうる」
だから貨幣経済を、
「完全に自由放任にすると
必然的に不安定になる」
そこで、
「制御する公共機関や規制が
なければうまくいかない」
「所得格差は特に、
米英で広がっている」
その最大の要因は、
「経営者が高額報酬を得ていることだ。
株主利益を最大化するために、
経営者も株主にすればよい
ということになった」
「経営者は会社に
忠実義務を負うはずなのに、
自己利益を追求する機会を
与えてしまった」
「米国で株主至上主義に
歯止めがかかり始めたのは
いい傾向だが、まだ不十分だ」
「資本主義には
倫理と公共性が必要であると
確認しなければならない」
ここで、倉本長治。
損得より先に善悪を考えよう。
これは倫理だ。
公正で公平な社会的活動を行え。
これは公共性を意味している。
岩井先生は警告する。
「民主主義も
危機に直面している」
しかし、
「資本主義は1人1票の民主主義に
常にチェックされる」
したがって、
「社会が硬直しないように
自由の余地を残し、
資本主義と民主主義がバランスすると、
自由民主主義がうまくいく」
資本主義と民主主義のバランス。
「大統領制の米国の民主主義は
ポピュリズムに陥る傾向がある」
さらに、
「米国には政治資金の問題もある」
「法人にも献金を許すシステムを作り、
本来1人1票であるべき政治に、
資本主義の論理を持ち込んだことが
米国の民主主義を大いにゆがめた」
そしてドナルド・トランプが登場した。
一方、中国は、
「社会主義的要素が残ったまま
資本主義をうまく取り込んだ」
「米国で資本主義と民主主義が
ともに崩れ始める一方、
中国の国家資本主義は
急成長している」
だから、
「発展途上国は中国型の民主主義を
モデルにし始めている」
「こうした動きは資本主義の問題より、
さらに大きな危機だ」
わかりやすいし、
見事に本質を突いている。
「資本主義には、
倫理と公共性が
必要である」
資本主義をベースにした経営には、
だから倫理と公共性が必須である。
そして資本主義と民主主義の、
バランスをとれるよう、
自由の余地を残しておく。
だから企業にも、
資本主義と民主主義のバランスが、
是非とも必要になるのだ。
ここに21世紀の希望がある。
〈結城義晴〉