結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2007年03月07日(水曜日)

Publisher’s Message by Yoshiharu Yuki<7March.2006> 

米国オーガニック業界に衝撃走る!

~1位ホールフーズと2位ワイルドオーツ合併で301店~

2月21日。ウォルマートの2006年度決算が発表された翌日。
ホールフーズとワイルドオーツの合併調印が発表された。
ホールフーズマーケットは1980年にテキサス州オースティンで創業されたオーガニック&ナチュラルスーパーマーケット全米ナンバー1企業。いや、世界第1位の規模とクオリティを誇るオーガニックスーパーマーケットと表現して、異論は出ない。
2006年9月末の決算において、年商56億0700万ドル(6728億円)、純利益2億0400万ドル(225億円)。アンビリーバブルな企業なのだ。2006年の年商伸び率は19.3%。2003年が17%だったが、それ以外は21世紀に入ってこの7年間、20%を超え続ける成長を見せている。
さらに凄いのが、既存店伸張率。最新の2006年で11.1%。2005年は12.8%、2004年は14.9%。これも信じられない数値だ。ウォルマートが21世紀に入ってからの7年間、2002年の6%をピークに、だんだん既存店の数値を下げてきているのとは対照的だ。
粗利益率もずっと34%台から35%と、高い。
ホールフーズホールフーズ店内

ワイルドオーツワイルドオーツ店内

決算数値だけでなく、店舗展開においても、売場づくりにおいても、まさに他の追随を許さないのがホールフーズである。現在、191店舗。
対して、ワイルドオーツはコロラド州ボーダーに本拠を置く第2位のオーガニックスーパーマーケットである。1987年に創業し、現在、年商12億ドル、24州に110店舗。USAとカナダに店舗を持つ。
両者ともにナスダックに株式公開しているが、合わせると、301店舗、年商68億ドルとなってしまう。
アメリカの有機食品は、2006年度は160億ドル(約1兆9000億円)、2005年度に140億ドル(約1兆6000億円)のマーケットといわれている。2005年度のボリュームは全米食品販売額の約2.5%である。2003年度は約1.9%、遡って1997年度は約0.8%であったから、まさしく急速成長市場の代表である。
一方、アメリカのオーガニック非食品のマーケットサイズは、2005年の統計だが、7億4400万ドル(860億円)。
食品・非食品トータルでは、2005年度で147億ドル、2006年度で170億ドルといったところか。
アメリカでは2002年10月21日に、連邦政府農務省がオーガニック基準を設定し、正式履行した。これがバネになって、マーケットが爆発的に拡大した。
ホールフーズの時系列業績も、2003年を経て、2004年からブレイクしているのだ。

さて、両社の合併に際して、ホールフーズの創業者であり、チェアマン、CEO、共同ファウンダーという長ったらしい肩書きを持つジョン・マッケイがコメントを出している。
「今回のホールフーズとワイルドオーツの合併は、アメリカ合衆国のオーガニック&ナチュラルフーズ市場に大きく、先進的な衝撃を与えるであろう。われわれの会社は共通のミッションと中核的な価値を有するものであるから、今日の食品小売業の中で最速成長を実現させるグループのひとつとなるであろう」
ホールフーズは、これまでの歴史の中で18社の有機食品小売業とM&Aを繰り返してきた。その中には、かの有名なミセス・グーチスなども含まれている。そして、それぞれの顧客(カスタマー)と取引先とシェアホルダーのために、長期的な価値を生み出し続けてきた。
M&Aといっても、力でねじ伏せるといったニュアンスではない。1970年代からスタートした自然食品・有機食品の仲間が、大河となって大同団結したような様相が、ホールフーズにはある。同社の店舗を訪れると、壁に歴史が記されている。ホームページでも見ることが出来る。この歴史は、ホールフーズから始まるものではない。1972年、カリフォルニアのグラナリーマーケットから始まって、延々と支流が本流に流れ込む歴史がつづられる。
今回のワイルドオーツとの合併は、その最後にして集大成のようなものである。
マッケイは語っている。
「オーガニック・カテゴリーの成長の機会は、さまざまなプレイヤーに与えられ、それによって競争が沸き起こるだろう。ほとんどの企業は、オーガニック&ナチュラルフーズのスーパーマーケットに専念し、この分野にすべてを捧げるというものではないだろう。しかし彼らは私たちより量的に大きくはなるだろう」
そう、ホールフーズとワイルドオーツの合併は、ウォルマート対策なのだ。ウォルマートのオーガニック取り扱いと、それに追われるようにしてオーガニックを品揃えに加え始めた巨大スーパーマーケットチェーンへの対抗措置なのである。
しかし彼らは、従来から存在するオーガニックの顧客と生産者・加工業者に対して、専門家にはなれないだろう、とマッケイは宣言する。
「ワイルドオーツは、地理的にわれわれの11の商勢圏に店舗を加えて強化してくれるし、われわれの3つの最も小さな商勢圏では<クリティカルマス>をもたらしてくれるに違いない」
ジョン・マッケイは、確かに「クリティカルマス」という言葉を使っている。
典型的なノンコモディティのオーガニック食品においても、「クリティカルマス」がさまざまなメリットをもたらすことを、ホールフーズとマッケイは知っているのである。そして、オーガニックというすぐに有限の見えてしまう世界では、クリティカルマスによって巨人の侵入を防ぐ以外にない、という認識なのである。
新生ホールフーズは2010年、年商120億ドルを目標に掲げる。

<『食品商業』4月号
「誰がウォルマートを殺すのか?第3回」より>


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