私は諸君に「考える商人」であることを求めたい(倉本長治)
政治と宗教には関わるな。
口出しするな。
故倉本長治先生が常々言っていた。
故渥美俊一先生も同じように言っていた。
しかし近頃は、
自分が年を取ってきた所為もあるが、
政治に対して言わずにおれないことが多い。
岡目八目で物申すつもりは全くないが、
政治家のレベルも落ちてきていると思う。
政治屋は
次の選挙を考え、
政治家は
次の時代を考える。
(クラーク・ジェイムス・フリーマンとされる)
英語の原文は、
“A politician thinks of the next election
and a statesman thinks of the next generation.”
“politician”が政治屋、政客。
“statesman”が公正な政治家。
河井克行衆院議員と、
河井案里参院議員。
公職選挙法違反容疑で、
東京地検に逮捕され、
夫婦そろって、
「容疑者」となってしまった。
政治に物申すどころの話ではない。
初入閣と初当選。
順風満帆な2人。
次の選挙のことしか考えない政治屋が、
その選挙さえも「金」まみれだった。
昨2019年7月の参議院選挙で、
地元議員ら約100人に、
現金約2500万円を配った容疑。
朝日新聞の記事のタイトルは、
「お金でしかつながれない」
一昨日のブログでも書いた。
コトラーの「お薦めする人」と
「悪徳弁護する人」
「マーケター、
コンサルタントなども、
さらに学者でさえも、
金をもらって、
あるいは金になるからと、
悪徳弁護士のようになる場合がある」
繰り返すが、
「私は断じて、それをしない」
倉本長治先生。
1899年(明治32年)~1982年(昭和57年)。
商業界初代主幹。
商人は消費者に代わって、
商品を選び、仕入れ、販売する。
その活動の対価として
適正な利潤を得るのは当然である。
逆に、商人は消費者に対して
公平公正でなければならない。
それによって小売業の成長があり、
消費者の生活の向上と社会の発展がある。
この思想が商業近代化の精神的原動力となった。
著書多数。
手書き原稿。
色紙も武者小路実篤のように描いた。
倉本初夫著『あきないの心』。
初夫は一生、父・長治の伝道者だった。
それは極めて意義の高い役割だった。
「商人の善とは」
「商人だから……」という考え方は、
商人は一般の人とは違うという
無意識な不徳義につながると私は思う。
人間として生きる、
人間として善を
その行動や思考の基本に置くということは、
商人としても政治家としても、
同じでなければならない。
そこで商人として
正しきにつくということには、
まず「善」とは何かというところから
考えなくてはならないだろう。
人間の生き方の根本の問題に、
商売は直結しているのである。
私は諸君に、
「考える商人」であることを求めたい。
それには、
店舗を構えるにも、
商品を仕入れるにも、
これに値札をつけるにも、
売上げや経費を記録するにも、
お客に応対するにも、
店員に何かを命ずるにも、
つねに人間として、
善の目的にかなうかどうかを
考慮しなければいけない。
だが、善悪の価値は転倒するし、
内面的動機や私利もある。
行為行動には損得がからみやすい。
だから
「哲学する商人」でありたいのである――。
ん~、言うことなし。
私の本籍地は、
なんといっても商業界である。
政治家も商人も、
哲学する人間でなければならぬ。
〈結城義晴〉