トップマネジメントリレー対談【1】いなげや社長 遠藤正敏さん
「人財開発と経費構造改革から着手、まことに的確」
【第1回】結城義晴の述懐
第1回のトップバッターは、いなげや社長の遠藤正敏さん。私とは同い年で、すぐに意気投合。
そのいなげやは、東京を中心にしたスーパーマーケットとして100店舗を超え、現在、130店、年商は2300億円。しかし1991年が経常利益のピークで、長く低迷が続く。15年間も、利益予算を達成することがなかった。「環境変化への対応がなかった」と遠藤さんは総括する。それでも多摩地区という豊饒なマーケットにドミナントを築いてきた、その歴史的成果に支えられて、いなげやには力が残る。
低迷を脱する手立てとして、社長になった遠藤さんは、まず人財開発部を作った。
これ、正しい。
企業は人なり。人が目覚めることによって企業は活きる。人材開発を続けることだ。本当の人財の開発をやり遂げることだ。
同時に第2に、経費構造の改革に着手。
これも、まことに正しい。
営業利益予算が達成できないという営業問題の解決法として、経費構造の改革を図る。経営を知る経営者の施策である。営業問題とは、まず販促対策が優先されるのでは、絶対にない。このあたり、いなげやと同業のスーパーマーケット経営者だけでなく、日本中の小売業経営者・幹部、幹部候補生には、心に留めておいてほしい。
営業会議をする。営業問題を討議し、意思決定する。そのとき顧客満足と営業利益が最大化する方向で、政策が決定される。これである。
結果として、PL(損益計算書)が良くなる。
いなげやの場合、もともとバランスシート(貸借対照表)は良い会社。だからPLを問題にする。そして経費構造を変える。
ただし、店舗の適正規模が、競争上、小さすぎる。悲しいほど小さい。
だから、今後、バランスシートを見ながら、増床や改装を施してゆく。
さらに「ブルーミングブルー」という実験フォーマットへのチャレンジ。出来てみないと、私にはわからないが、ユニクロ柳井正さんの「一勝九敗」の気分で取り組んでほしい。
イオンが15%の株式を持ついなげや。イオンのトップ勉強会でも真剣に勉強するという遠藤さんだが、現場に強く、明るいキャラクターは、これまでのいなげやになかった経営者のタイプ。何かを変えねばならないときのリーダーとして、最適の人物。
私は、徹底してほしいと思う。地味ないなげやの改革を、明るく推し進めることを。この対談の記念すべき第1回に登場するというのは、決して地味ではないけれど、会社と改革は、「地味に地味に、明るく明るく」。スーパーマーケットとは、そんな商売なのだから。