明治ステップのセシウム検出対策とノンアルコールビールのコモディティ化と万代ドライデイリー会での講演
昨日の午後、共同通信の報道で、
チェーンストアやスーパーマーケット本部に衝撃が走った。
㈱明治の粉ミルク「明治ステップ」の一部製品から、
1キログラム当たり最大30.8ベクレルの放射性セシウムを検出。
ちょっと共同通信が煽りすぎたようにも感じたが、
日経新聞の夕刊にも載って、
夜のニュースや朝のワイドショーでも、
トップか二番目に取り上げられた。
逆のトップか二番手のネタは、
柔道オリンピック金メダリスト内柴正人容疑者の事件。
明治の「ステップ」(850グラム入り缶)は、
生後9~12カ月の乳児向け粉ミルク。
だからこそ、消費者も非常に敏感。
明治は、検出された製品と同期間に生産した粉ミルク約40万缶に関して、
すぐさま無償交換に応じ始めた。
小売店舗はその無償交換の窓口になる。
つつがなくこの手続きを進めることだ。
厚生労働省は「暫定規制値を下回っている」ため、
回収命令を発してはいない。
暫定規制値は200ベクレルだから、
7分の1ほど。
検出された製品は埼玉県春日部市の埼玉工場製のもの。
3月14~20日に原料を乾燥させる工程を経た製品。
消費者から「放射性物質を検出した」との指摘があった。
この指摘を受けて、明治自身で調査したところ、
賞味期限が2012年10月の4日、21日、22日、24日の製品の一部から、
放射性セシウムが検出された。
原料の脱脂粉乳はすべて東日本大震災より前に加工されたもの。
一部は北海道産だが大半は米国やオセアニア地域からの輸入。
加熱した大量の空気で乾燥させる製造過程で、
「福島原発事故で放出された
大気中の放射性セシウムが混入」
これが真相のようだ。
200ミリリットルの湯に粉ミルク約30グラムを溶かして使う。
従って放射性セシウムの濃度はさらに下がる。
「暫定規制値を大きく下回り、
毎日飲用しても健康への影響はないレベル」
これは明治の見解。
さらに今後は、粉ミルクについて、
すべての製造日ごとに放射性物質検査を実施し、
結果をホームページで開示する。
最善の対応だろう。
ただしこれで、海外の幼児用粉ミルクの輸入に、
拍車がかかるかもしれない。
さて日経新聞朝刊の消費欄。
「チラシで読むノンアルコールビール」
キリンフリーが開発した新マーケット。
2年半前に登場。
現在、ノンアルコールビールは、
カクテルなどを含めたノンアルコール市場の9割超。
サントリーの調査では、
2011年のこの市場は2900万ケースで、
前年比34%プラス。
1ケースは250ミリリットル入り24本換算。
10年夏発売のサントリー「オールフリー」。
チラシ調査の結果、
オールフリーを掲載した食品スーパーマーケットは、
10月に6988店。
前年同月比約9割増。
一方、キリンビール「キリンフリー」は、
2147店。
問題の特売チラシ掲載販売価格は、低下傾向。
キリンフリーの10月の平均売価は710円。
これは前年同月比6.6%のダウン。
サントリーのオールフリーは700円。
こちらは4.4%ダウン。
記事のインタビューに答えたバイヤーの弁。
「1円単位でノンアルコールビールの値下げが
繰り広げられている」
ノンアルコールビールのコモディティ化現象が起きている。
こうして新製品はコモディティ化していく。
さて昨日は新横浜からのぞみに乗って、
新大阪⇒新今宮⇒堺、
リーガロイヤルホテル。
万代ドライデイリー会12月定例会で講演。
私は「アヌーガ・ドイツ小売業から学ぶもの」
10月のアヌーガ・フランス視察勉強会報告。
私はピーター・ドラッカーのマーケティングとイノベーションから、
アヌーガとドイツの5大食品小売業をとらえた。
2011ドイツケルンメッセ「アヌーガ」の共通トレンドは9つ。
①グルメ食品および特産品
②オーガニック食品
③ベジタリアン・フード
④健康食品および機能性食品
⑤ハラル・フード(イスラム教徒が食べることのできる食品)
⑥コーシャ食品(ユダヤ教徒用の食品)
⑦フィンガー・フード(片手で一口で食べられる食品)
⑧プライベートブランド
⑨原材料
ドイツ小売業から紹介したのは5フォーマット。
①メトロのハイパーマーケット「リアル」
②「アルディ」のハード・ディスカウントストア
③エデカのハード・ディスカウントストア「ネット―」
④リドルの「ハード・ディスカウントストア」
⑤レーベのスーパーマーケット
ここから導き出される仮説と理論は、
クリティカル・マス、スコープの経済、
そしてコモディティ化現象。
その中でリミテッド・アソートメントストアが隆盛している。
最後はドラッカーのイノベーションの原理。
これは本当に大事なこと。
第一に、機会を徹底して分析する。
第二に、自分の目と耳で確認する。
第三に、焦点を絞り、単純なものにする。
第四に、小さくスタートする。
第五は、最初からトップの座をねらう。
ご清聴を感謝したい。
私のあとは、
ヨーロッパ研修参加者を代表して、
三井食品㈱の岡本泰和さんの発表。
ユーモアたっぷりと、
商談や店舗視察の成果を報告した後、
万代への提案は夢一杯のものとなった。
セミナーのあとは分科会で、
9チームからのそれぞれの発表。
これも水準の高い内容だった。
そして夕方6時15分から懇親会。
食事が進んで、壇上に上がったのは、
万代のバイヤーたち。
生鮮食品のバイヤーは参加しなかったが、
ドライ、デイリー、住関連の若いバイヤーがズラリ揃うと、
万代の強さの本質が理解できた。
最後に山下和孝副社長が登壇して、
気合一発「やるぞ~」。
私は加藤徹社長の隣で食事し、
情報交換しながら、
楽しんだ。
企業の目的は、顧客の創造である。
したがって、企業は二つの、
そして二つだけの基本的な機能を持つ。
それがマーケティングとイノベーションである。
マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。
この夜も、ドラッカー先生の言葉が頭に残った。
<結城義晴>
2 件のコメント
結城先生へ
明治ステップミルクの放射能検出は、私の会社も取り扱っており他人事ではありません。以前キューピーさんのベビーフード工場を見学にいった時、会議室に野口 しかさんから 野口 英世にあてた「母の手紙」が飾ってありました。
社員の方に由来を尋ねると「ずいぶん昔にキューピーがベビーフードの発売を目指した時、当時の社長がこの「母の手紙」を示し、「赤ちゃんの商品の開発は会社に母の愛以上のものが無ければ開発してはダメだ、まだ時期尚早だ。」と開発を見送ったそうです。そしてその後森永砒素ミルク事件が発生しました。
いまちゃん、ご投稿感謝。
野口しかさんの言葉、思いですね。
明治ステップのセシウム検出事件も、
重いことです。
丁寧で、素早く、徹底した対応を期待するものです。