日経コラム春秋の「第三の敗戦」と「平和産業の勝利」
東京・大阪・兵庫・京都に、
今日の日曜日から緊急事態宣言。
17日間でどう変わるか。
国民が試されている。
政治や行政の力量が問われている。
商業、サービス業も、
一部を除いて辛抱のときだ。
横浜にはまだ、
緊急事態宣言は発令されていない。
午後、さっと雨が降って、
さっと上がった。
そして夕日が出てきた。
家々の屋根が雨に濡れて光っている。
オカメアイビーの葉。
水の粒が光る。
ここには新型コロナウイルスも、
変異株もない。
雨が降り、陽が射し、
水滴が葉に残る。
すずらんは下を向く。
雨を避けていたみたいだ。
ネモフィラの花弁にも雨滴。
世界中の雨は、
大地や草花を洗い清める。
さて新聞の巻頭コラム。
朝日、日経、毎日、産経、中日など、
巻頭のコラムを、
インターネットでざっと見る。
時には、
20紙くらいの新聞のコラムを覗く。
私自身、こういった短い文章を書く。
だからコラムが好きなのだと思う。
考えてみると、
1989年に食品商業編集長となってから、
ずっと書き続けている。
食品商業にはそれまで、
巻頭言がなかった。
月刊「商業界」では代々、
倉本長治、倉本初夫と、
主幹が巻頭言を書いていた。
月刊「販売革新」には、
「Editor’s Voice」と言う、
創刊以来の巻頭コラムがあった。
そこで食品商業誌に、
「Message」とタイトルして、
自分で巻頭エッセイを書き始めた。
1996年に取締役に昇格して編集を担当し、
販売革新の編集長を兼務した。
そこでEditor’s Voiceを書き始めた。
2002年に専務取締役となって、
直接、媒体を担当することがなくなった。
しかしEditor’s Voiceだけは、
書き続けさせてもらった。
2003年に代表取締役となった。
そこでPublisher’s Voiceと題して、
販売革新にちょっと長いエッセイを書いた。
それからホームページを刷新して、
こちらに社長の「Message」ページをつくって、
1週間に1本くらいの頻度で、
短い時評のような文章を書いた。
2007年8月末に、
商業界代表取締役社長を辞任すると、
個人的にホームページをつくって、
「毎日更新宣言」のブログを始めた。
2008年2月に㈱商人舎を設立して、
会社としての公式ホームページをつくった。
「毎日更新宣言」を続けた。
2013年には、
月刊商人舎を創刊して、
巻頭の「Message」を書き始めた。
1989年の食品商業のときと同じだ。
私はコラムが好きなのだと思う。
さて今日の「春秋」
「新型コロナウイルスを巡り
緊急事態宣言の発令が決まった翌日の土曜、
東京の繁華街を歩いてみた」
「道路はにぎわい、
高級ブティックの玄関やデパ地下では
密を作り列をなす人々がいる」
「雑談に耳をすまし共通点を見つけた。
コロナという言葉が聞かれなかったことだ」
閑話休題。
この文章、ちょっと変だ。
「ことだ」が余計である。
コラムは続く。
「危機感の薄さを責めるべきか」
そしてカミュ『ペスト』の引用。
「病毒を人に感染させないためには
気をゆるめてはならず、
相当の意志と緊張が要る」
「ペスト患者になると疲れる。しかし
『ペスト患者になるまいとすることは、
もっと疲れる』
『そのためなんだ、
誰も彼も疲れた様子をしているのは』」
意志と緊張、そして疲労感。
危機感の希薄化はしかたないのか。
「『欲しがりません勝つまでは』の標語で
国民を総動員できた情報鎖国の頃とは違う」
「病床やワクチンの確保で
対応のまずさや出遅れが目立ち、
太平洋戦争、バブル崩壊に続く
第3の『敗戦』だと見る向きも出てきた」
『第三の敗戦』は2011年6月発刊。
故堺屋太一さんの著書だ。
堺屋さんの主張は、
第1の敗戦は幕末、
第2の敗戦は太平洋戦争、
そして第3の敗戦は、
東日本大震災後の混迷。
コラムは第1の敗戦が太平洋戦争、
第2がバブル崩壊後の対応、
そして今回のコロナ禍対応が第3の敗戦。
誰の主張かはわからない。
コラム。
「軍事、経済、医療と分野こそ違うが、
3度の敗戦には共通項がある」
「共通項」を探すコラムニスト。
「縦割りの弊害、
根拠なき楽観、
科学の軽視、
始めたらやめられない組織」
そしてここで問題提起。
「4度目があるなら食料か水か、
エネルギーか」
「予想外の、しかも
自信のある分野を突かれるだろう」
「国内の資源や備蓄を適切に分配できず、
輸入も滞る未来図――
杞憂(きゆう)なら良いが」
同感したくはないが、
そんなことが起こるかもしれない。
しかしそのまえに世界は、
国家主義を脱しているかもしれない。
COVID-19パンデミックが、
国家主義の枠組みを崩すのか。
はたまた国家主義を強めさせるのか。
商業は国家の枠を飛び越して、
国際化を進めている。
その反動のようにローカリズムも、
大切になってくる。
真のグローカリズムの時代だ。
それを商売の世界が先導する。
商売ベースの成長を志向しながら、
グローカリズムを実現させてしまう。
ウォルマートがそれだ。
イオンもセブン&アイも、
ファーストリテイリングも、
グローカリズムを目指す。
「敗戦」も「戦勝」も、
まず「戦争」がなければ起こらない。
そして敗戦も戦勝も国家がなすことだ。
商業は平和産業を志向する。
平和とは「国のかたち」を維持しながら、
国家の垣根を超え、
国家間の融合をつくって、
敗戦も戦勝も生まれない世界を築くことだ。
商業はそれに貢献してもらいたい。
〈結城義晴〉