「齋藤充弘 お別れの会」と「凝縮されたシンプル」
Everybody! Good Monday!
[2021vol㉞]
2021年第34週。
8月に入って第4週。
今日は二十四節気の「処暑」
二十四節気は1年を24等分する。
だから一つの節気はほぼ15日間。
大暑⇒立秋⇒処暑⇒白露⇒秋分と続く。
「処暑」は、
暑さが峠を越えて後退し始めるころ。
その最初の日を「処暑」と言い、
その期間も「処暑」と呼ぶ。
私は毎日、空を見上げているが、
暑さの峠は空に現れる。
処暑そのものだ。
今日は東京・日比谷。
帝国ホテル。
もちろんいつものように、
二重マスクをして、
十二分に気をつけつつ、動く。
駐車場側の出入り口に看板が出ている。
「齋藤充弘 お別れの会」
全日本食品㈱と、
全日食チェーン商業協同組合連合会、
日本ボランタリーチェーン協会の共催。
7月22日のこのブログで訃報を書いた。
全日食チェーンの齋藤充弘さん、
ご逝去。合掌。
惜しい人だった。
これほど残念な思いはない。
本館2階孔雀の間が献花の会場。
遺影が飾られて、
お別れする人たちが、
間隔を空けて並び、
静々と献花する。
齋藤さんの遺影は、
厳しい顔つきをしていた。
残された人たちを一喝するようだった。
それも齋藤さんらしいと思った。
献花が終わると次の間には、
主催者と親族の皆さんが立っていて、
参列者一人ひとりにご挨拶。
平野実全日本食品社長、
木村建造連合会理事長、
泉田幸雄VC協会会長、
そして「全日食の顔」田中彰さん。
最後に親族代表は齋藤さんのご長男。
平野実さんは、
重い重い責任を感じている風だった。
木村建造さんも、
全日食チェーンを背負う意志を示した。
泉田幸雄さんは本当に寂しそうだった。
田中彰さんはひどく悲しそうだった。
その次の間には、
齋藤さんの想い出の写真などが、
掲示されていた。
全日食チェーンの赤いブレザー姿。
副社長時代の執務室での写真。
このほかにもお孫さん二人との、
ほほえましい写真もよかった。
理路整然の理論家。
現場に即した実務家。
独特の人間観察者。
ボランタリーチェーンという、
地味ではあるが面白い組織体。
齋藤充弘は、
人と人が集うこの組織体を、
心から愛していた。
再び、合掌。
献花が終わると、
帝国ホテルの1階ロビーへ。
シャンデリアとサンフラワー。
今が旬の向日葵が存在感を示す。
1階のランデブーラウンジ。
アイスカフェオレ。
1650円。
しかし何倍飲んでも同じ値段。
日本経済新聞社次長の白鳥和生さんと懇談。
故人の業績をよく知るふたりが、
それを語り合いつつ、
その故人を偲んだ。
齋藤充弘さん、
さようなら。
昨日の朝日新聞「折々のことば」
第2122回。
シンプルさが逆に
内容の飛躍や凝縮を生み、
美しく力強い作品を
生むことができるのです
(田畑精一)
『ありがとう 絵本作家・田畑精一の歩いた道』から。
「絵本は、形式が単純であっても
内容まで単純なわけではない」
絵本作家・田畑精一は言う。
「削り、切り捨ててシンプルであるのと、
凝縮してシンプルであるのは同じでない」
つまり大事なのは、
凝縮してシンプルであること。
削り、切り捨てての「シンプル」は、
20世紀の「トレードオフ」である。
あちらを立てればこちらが立たず、
こちらを立てればあちらが立たず。
ならばどちらかを切り捨ててしまえ。
しかし凝縮された「シンプル」は、
あちらを立ててこちらも立てる。
こちらを立ててあちらも立てる。
それが「トレードオン」だ。
齋藤充弘さんが田中彰さんから受け継いで、
その上で目指したボランタリーチェーンも、
凝縮してシンプルな組織体だと思う。
つまり、あちらもこちらも立てる。
個店を立てて、
チェーンも立てる。
もしかしたらこの、
ひどくしんどい仕事が、
齋藤充弘の命を蝕んだのかもしれない。
しかしそれは、
齋藤さんにしかできなかったことだ。
齋藤さんも満足していたと思う。
平野さんや木村さんが、
その遺志を継いでくれるに違いない。
私は確信している。
編著者の鷲田清一さん。
「人の成熟もきっとそういうこと」
人の成長段階はトレードオフで、
成熟のときはトレードオンなのだ。
では、みなさん、今週も、
凝縮したシンプルを目指せ。
Good Monday!
〈結城義晴〉