ルーズベルトの手紙と倉本長治の「人間の味」
1月9日の夕空。
今日はちょっとだけ温かかった。
まだまだ寒くなる。
NHK調査の全国新規陽性者数。
全国で8249人。
沖縄が一番多くて1533人。
東京は1000人を超えて1223人。
大阪880人、広島619人。
神奈川443人、埼玉401人。
油断はできない。
日曜日は倉本長治。
その「倉本長治 商訓五十抄」
タイトルは、
「店はお客さまのためにある」
2003年2月19日の発刊。
私は㈱商業界の専務取締役だった。
2月の商業界ゼミナールに向けて、
急遽、発刊された小冊子だった。
もともとは月刊『商業界』の巻頭に、
倉本長治主幹が書いた文章である。
そこから50編を集めた。
500円の値段をつけて販売したが、
実によく売れた。
私もこれを真似して、
商業界社長になった年に、
2月ゼミナールに向けた本を出した。
それが『Message』
サブタイトルは、
「店に元気を、仕事に勇気を」
これも50の巻頭言を集めた。
長治師の真似ばかりしていた。
その「倉本長治 五十抄」のなかの一文が、
「人間の味」
セオドア・ルーズベルトは、
第26代米国大統領だが、
ニューヨーク州知事だったことがある。
そのころの秘書は、
メジモア・ケンダルと言い、
「思い出」を書き残している。
倉本長治は実に博学で、
その手記を読んだことがあるという。
「ルーズベルトの談話を筆記して、
そのとおり間違いなく
タイプライターで打って、
署名をもらい、手紙を出すのが
自分の仕事だったが、
いつも決まってルーズベルトは
署名したタイプ済みの手紙の一部分を
自分で消したり、書き込んだりするのだった」
「ある時、書き込みの多かった手紙を
もう一度タイプライターで打ち直して、
再び署名をもらおうとしたら、
そのときルーズベルトが言った」
『僕がタイプした手紙に、
わざと書き込むのは、
別にトリックではない。
機械で印字した手紙に
自分のパーソナリティ(人間的な味付け)を
盛り込みたいという一心からなのだ。
だから、それを打ち直されてはたまらないョ』
長治は言う。
「機械的な事務処理がますます増えている昨今、
ふと考えさせられるものがある」
私はこの一文がずっと頭に残っていて、
商業界の編集長のころから毎月、
雑誌が発刊されるたびに、
手書きの手紙を親しい経営者に送った。
商人舎を興してからもそれに倣って、
毎月、月刊商人舎を贈呈するときに、
手書きのお便りを添える。
出張などで出かけている時は、
パソコンで打ったものを送るが、
それは本意ではない。
テレワークが増えて、
やはりワード文章が多くなる。
これも避けたいものだ。
手書きには「人間の味」が滲み出る。
心を正して書かなければ、
文字に乱れが生じる。
「書」と同じだ。
ずいぶん書いていって、
大きな間違いが出ると、
はじめからやり直し。
ルーズベルトのように、
書き加えたりするときは、
吹き出しを入れたりする。
小さな書き間違えは、
ホワイトでちょっと修正したりするが、
基本的に思いのまま一気呵成で書き上げる。
毎月、亀ヶ谷純子さんからは、
達筆の返礼が届けられる。
これは素晴らしいものだ。
書くことはなかなかに大変だが、
それもルーズベルトや長治師が言うように、
「人間の味」やパーソナリティのひとつである。
そしてそれは、
そのときの自分の精神力などが、
表れたものとなる。
同じように、
手描きのPOPやショーカードも、
「人間の味」が出る。
ただし、いずれも、
「人間の味」が出てしまうところが、
良いとは思うけれど、
またひどく怖いものだ。
〈結城義晴〉