「店」に関する考察「寡占と複占」
12月商戦のなかのクリスマス商戦。
今週から始まった前半戦は、
苦しかったと思う。
現在の日本の顧客は、大衆としてみると、
感情の起伏が激しい。
気分が乗ると、大勢で押し掛ける。
乗らないと、どんなに優秀な店に対してでも、
極端に冷淡になる。
ローマ帝国五賢帝時代の地味な皇帝アントニヌス・ピウスの言葉。
「感情を抑制するのに、
賢者の哲学も皇帝の権力も
何の役にも立たない時がある。
そのようなときには、
男であることを思い起こして耐えるしかない」
(『ローマ人の物語』<塩野七生著>より)
ローマ人アントニヌス・ピウスは「男であること」と言うが、
現代日本では、「人間であること」と、
言葉を変えて受け止めたほうがよいだろう。
今日からの、クリスマス商戦後半にこそ、
耐えた力を爆発させたいものだ。
耐えるからこそ、爆発があるのだ。
さて、そんな爆発のときに、
昨日につづいて、
結城義晴の小難しい考察。
フランスの学者ルネ・ユーリックの言葉。
「大きな町には小さな店を、
小さな町には大きな店を」
故川崎進一先生が好んだ学者。
これをイオン名誉会長の岡田卓也さんは、言い換えた。
「大きな町にはセブン-イレブン。
小さな町には、ウォマート」
素晴らしい。座布団一枚。
ただし、ユーリックは、
フランスのカルフールが誕生したばかりの時に、
『ルネ・ユーリックの法則』を考えた。
すなわち生存単位、最小競争単位の「競争法則」であった。
したがって、すべてに共通する教訓となった。
ユーリックは、こうも言う。
「まず25%の顧客を獲得する。
するとその店は、信頼されるようになる。
つぎに40%の顧客をつかむ。
すると経営は安定してくる」
作家・安土敏さんは述べる。
「小売業の店舗は、
もともと寡占競争だ」
賛成。
ある業態やフォーマットという切り口で見なければならないが、
小売業の店舗競争は常に、数店によって展開される。
この、競争の原理が見えないから、
感情を抑制できなくなる。
もちろん現在のように、
小売業がある程度のレベルまで発達したアメリカや日本では、
ルネ・ユーリックの時代と違って、
二つの新しい現象がみられる。
第1は、数店の競争が、3店、あるいは2店になってきたこと。
競争の顔ぶれが、減ってきたこと。
2店の競争を私は「複占」という言葉で表現している。
ただし、複占が最後の段階である。
独占はいつの時代も、どんな環境でも、
市場が許さない。
複占の状態になると、
強いもの同士の競争が展開される。
同時に、常に、新たな強い競争者の出現を、
意識し、覚悟しなければならなくなる。
第2は、異なる業態やフォーマットとの競争が展開される。
複占はマーケットの成熟を意味する。
したがって、業態フォーマットは様々に発達している。
だから異業態間競争が展開される。
アメリカのスーパーマーケットと
ウォルマート・スーパーセンターは異なるフォーマットである。
しかし両者は激しい競争を展開している。
複占状況だからである。
日本の都心。
スーパーマーケットとコンビニは競争し始めている。
セブン-イレブンも価格競争を始めた。
スーパーマーケットもコンビニも、
それぞれの商圏内で、
複占しているからである。
クリスマス商戦前半、
感情を抑制させて、観察してみるとよい。
苦しかったのは、異業態・異フォーマットに、
顧客を奪われたからである。
インターネット販売を含めて。
最後に、ローマ人を代表してユリウス・カエサルの言葉。
「身の安全を心配しながら生きたのでは、
生きたことにならない」
<まだまだつづく、結城義晴>