「寒中マーチャンダイジング」と上野光平「最高で無比の仕事」
二十四節気の「大寒」
1年を24回に分ける。
それが二十四節気。
ほぼ半月ずつに分けられる。
それがいわゆる12カ月よりも、
季節に沿っていて、
商売をするには便利だ。
小寒から大寒、そして、
立春の前日の節分までのほぼ1カ月を、
「寒」という。
1年で一番寒い季節だ。
一番寒いときには、
それにふさわしいものが売れる。
食べ物では鍋材料、
着る物では防寒の下着上着。
家電でも、住居関連品でも、
ガーデニングでも。
サービスも。
だから1月、2月と区分するよりも、
小寒から大寒、節分までの「寒中」をベースに、
マーチャンダイジング、
プロモーションを組み立てるほうが、
理屈に合っている。
1月の31日間よりも、
2月の28日間よりも、
1月5日の小寒から2月3日の節分までの、
「寒中」のほうが寒い。
敢えて表現すれば、
「寒中マーチャンダイジング」
その寒中の真ん中が、
今日の大寒。
横浜商人舎オフィスの裏の遊歩道。
木々の葉は落ちて、
寒々しい。
今日の横浜の最低気温は0℃、
最高気温は8℃。
けれど今日は商人舎にとって、
いいことがあった。
おいおいこのブログでもお知らせする。
それにしても月刊商人舎1月号。
たいへんご高評をいただいている。
ありがたいことです。
ある人が「刺さった!」と、
言ってくださった。
島田陽介と結城義晴。
存分に語っていただいたし、
思いきり書いた。
それでもまだ語り足りないし、
書き足りない。
しばらく、これは続けようと思う。
ご期待ください。
1月号の特集のまえがきは、
謹賀新年、予言仕る
このなかで上野光平さんの文章を引いた。
西友の実質的創業者。
「私たちに課せられた課題の大きさに比べて、
私たちの仕事の質の低さに
いらだたざるを得ないのも事実であります」
「私たちの課題は、
“最高で比べるものもない”
ということであります。
私たちの規模と社会的責任とは、
私たちに最高かつ無比の
仕事のレベルを要求しております。
私たちはこの要求に
応えなければなりません」
「商品部の諸君、
あなた方は戦略商品群について、
“最高で無比の”戦略体制を
実現しているのでしょうか」
「管理部の諸君、
あなた方は経営管理の精度と
合理化と管理コストにおいて、
“最高で無比の”業績を
達成しているのでしょうか」
「店舗の皆さん、
あなた方は高い労働生産性と
低い店舗コストによる運営によって、
“最高で無比の”店舗運営を
しているでしょうか」
「課題への挑戦には、
自己満足のひとかけらも
許されないのです」
これはかつての西友ストアーの社内報、
1967年6月の「今月のことば」からの引用。
もちろん当時の西友ストアーは、
全員が奮い立った。
上野先生は大正13年生まれで、
イトーヨーカ堂創業者の、
伊藤雅俊さんと同年だったが、
63歳で逝去された。
オーナーの堤清二さんに請われて、
西武百貨店に入社し、
西友ストアーを創業して支配人となり、
最後は流通産業研究所理事長・所長。
業界のご意見番のような存在だった。
人柄はすこぶる穏やか。
しかし随一の読書家、勉強家で、
高くて広い視野を持ち、
実に本質的な鋭い分析をした。
上野先生と盟友の故杉山昭次郎先生が、
毎月のように勉強会を開催していた。
私は門前の小僧のように、
その研究会に顔を出して勉強した。
今月号の「禁欲円と享楽円」概念は、
上野先生の座標軸を基本にしている。
「生活マネジメント」と、
「生活エンターテインメント」。
前者に使う金が「禁欲円」であり、
後者に費やす金が「享楽円」である。
そしてコロナ禍「キャズム」を経て、
「享楽円」購買が頭をもたげてきた。
それが私の観察だ。
その上野先生は、
秀逸の文章家であり、
言葉を大切にした。
その言葉をそのまま、
みなさんに贈ろう。
「みなさんは今、
最高で無比の仕事を、
しているか。
課題への挑戦には、
自己満足のひとかけらも
許されない」
〈結城義晴〉