藤井聡太「五冠獲得」と平和堂の「LSPと労災防止策」
2月の3連休。
その連休明けの月曜日は、
2月14日、バレンタインデー。
雪がつもれば
クリスマス♫
想いがつのれば
バレンタイン♫
山﨑眞幹作詞作曲。
「セント・バレンタイン」
いつもその旋律と歌詞が、
口をついて出てくる。
若いころ商業界会館の2階の集まりで、
この歌を弾き語りしたら、
結構、年を取った人たちが、
いくつものペア―をつくって、
くるくると回りながら踊ってくれた。
今日は将棋王将戦第四局。
その2日目。
私の趣味の話で恐縮。
他のタイトル戦はAbemaTVで見ているが、
毎日新聞主催の王将戦は、
同チャンネルでは放映しない。
そこで囲碁将棋プレミアムに加入して、
ずっとパソコンで仕事しながら観戦した。
渡辺明名人(37歳)が現在の王将で、
藤井聡太竜王(19歳)の挑戦を受けた。
これまでの三局は藤井の辛勝。
いずれも名局だったが、
藤井の3連勝。
両者の差はない。
それでも結果は3連勝。
今日は封じ手を開いた後、
後手藤井の4四銀という妙手が出て、
徐々に渡辺を追い詰めた。
そして122手で勝利。
ご存知、藤井聡太は、
14歳2カ月で史上最年少のプロ棋士となった。
史上5人目の中学生棋士である。
デビューから29連勝の新記録を達成し、
2020年に棋聖、王位、
2021年に叡王と竜王を奪取。
棋聖と王位もタイトルを防衛し、
現在、タイトルを4つ保有する。
「四冠」というが、
今日の王将獲得で五冠となった。
19歳7カ月の五冠は最年少。
そして五冠を達成した3人の名人に次いで、
4人目となった。
故大山康晴第十五世名人、
中原誠第十六世名人(74歳)、
そして羽生善治九段(51歳)。
ちなみに羽生は1996年、
25歳のときに全七冠を奪取して、
初めての国民栄誉賞を受賞した。
私は対局後の渡辺明の言葉が印象に残った。
渡辺は名人位と棋王をもつ。
3つ目の王将を藤井に獲られた。
渡辺も中学生プロ棋士で、
羽生の次の世代では無敵なのだが、
「残念というのもなんか違うし……
なんというか、そういう感じですね」
さて話は変わって昨日の日経新聞。
「小売り労災、建設超え」
サブタイトルが、
「平和堂、作業手順を作成」
記事の冒頭。
「小売業で労働災害の増加が深刻だ」
小売業の年間の死傷事故件数は、
過去20年で4割増えた。
そして建設業を上回った。
建設業や製造業と比べると、
死亡や重いケガが少ない。
だから安全への意識が不十分な面もある。
そんな中で平和堂は、
全社的な労災対策で成果をあげる。
「社長の平松です。
新年が幕を開けました。
くどいようですが
今年も転倒には注意しましょう」
「1月初旬、初売りの準備が進む平和堂の
各店舗で経営トップのメッセージが響いた」
「開店45分前の店舗に
一斉に流す朝礼放送で、
従業員に安全な作業を訴える」
「マンネリ化を防ぐため、
平松正嗣社長が毎月、
録音をし直す力の入れようだ」
平和堂はLSPに取り組んで、
一つ一つの作業を分析し、
安全対策を盛り込んだ手順に落とし込んだ。
レイバースケジューリングプログラム。
LSPは防災対策にもなる。
鮮魚や青果を調理する際は
切り傷を防ぐ手袋着用を義務化した。
転倒防止のため、
脚立の天板に乗ることを禁止した。
対策は本部の発案だけではなく
現場も知恵を絞る。
きっかけは2018年に遡る。
「事故の発生件数が
高止まっていることに対し、
各店で起きた負傷事例の情報共有が
不十分だったことを問題視した」
全社の安全衛生委員会は、
人事部や総務部が中心だった。
そこに営業幹部を加え、
組織横断型で対策を始めた。
平和堂の良さはここにある。
作業内容の見直しとルール化を進めた。
その結果、21年の業務上災害の件数は、
250件と3年で3割減った。
21年秋に全店に配置したのが、
無事故連続日数を書き込むホワイトボード。
平松さんはソニー出身だが、
製造業の工場には、
必ずと言っていいほど、
それがある。
全店の意識が高まる。
人事課の松嶌環さんは語る。
「まだ減らせるはずだ」
記事は痛いことを言う。
「平和堂の取り組みは
製造業では当たり前にみえるが、
小売りでは先進的だ」
製造業の取締役会では必ず、
今月の労災件数が報告される。
厚生労働省のデータを基にした、
日本経済新聞の推計。
21年に小売業で起きた死傷事故は、
1万7000人弱。
過去20年で39%増えた。
この間に小売業の就業者人口は7%減。
だから従業員1人当たりの事故件数は増加。
製造業では、
21年の死傷事故件数2万7000人弱。
過去20年で37%減。
建設業は約1万5000人と46%減。
20年に初めて、
小売業は建設業を逆転してしまった。
小売業の労災が増え続ける理由を、
記事は3つ挙げる。
第1は就業者の高齢化。
総務省の労働力調査によると、
65歳以上で小売業で働く人数は
21年に96万人。
01年から5割以上増えている。
身体機能が低下した高齢者ほどケガしやすく、
事故件数の高止まりを招いている。
第2は省人化の遅れ。
従業員1人当たり労働生産性は、
製造業が約1100万円。
小売業は500万円弱。
労働集約型の働き方を変えなければ、
ケガのリスクを減らせない。
第3は経営者の安全意識の低さ。
小売り現場で起きる事故の多くは、
転倒や切り傷など軽微なものが多い。
だから労災の意識が低い。
平和堂と平松さんの着眼点は、
本当にお手本になる。
LSPと労災が結びつくことは、
優れた教訓である。
〈結城義晴〉