2つの「ユニ」世界戦略のイノベーションとマーケティング&マネジメント
商人舎ミドルマネジメント研修会。
正式募集を開始しました。
このホームページのトップ。
左側にミドルマネジメント研修会、
右側にUSA視察Basic研修会。
左側のバナー、
私の写真が大きすぎて、
ちょっと気恥ずかしいので、
修正します。
が、修正版が出来上がるまでの一両日、
このバナーをさらします。
会社や店舗現場を動かすのは、
ミドルマネジメント。
ミドルマネジメントの存在抜きには、
組織は動かない。
そのミドルマネジメント教育に関して、
現在の日本の小売業界やサービス業界には、
大きな誤解があります。
欧米のアカデミズムでは、
アンリ・ファヨールの古典的マネジメント学派に対して、
ピーター・ドラッカーの体系化を経て、
ヘンリー・ミンツバーグに至って、
現代マネジメントが展開されています。
ファヨールは日本では、
MTPと称する古典的マネジメント手法として実用化され、
日本の流通業界には広くこの考え方が適用されています。
<MTPとはマネジメント・トレーニング・プログラムの略称>
しかし、その組織的弊害が、
顕著になっているのが現状です。
これは安土敏さん(荒井伸也AJS会長)のご指摘。
MTPやその考え方の普及によって、
知らず知らずのうちに、
組織問題が起こっている。
元凶は、この古典的マネジメント論にあるのです。
例えば、映画「踊る大捜査線」。
「本店」と呼ばれる警視庁の横暴に抗して、
「支店」の湾岸署の現場刑事たちが奮闘します。
この警察機構を揶揄した映画は、
MTP理論の矛盾や古典理論の弊害を、
面白おかしく表していますが、
ほんとうは笑い事ではないのです。
様々な会社、様々な組織に、
映画に負けないくらいの「間違い」が、
起こっています。
商人舎ミドルマネジメント研修会は、
その誤解や齟齬や矛盾を、
解消すべく設計されています。
そのためにドラッカーの考え方を基準において、
現場主義のカリキュラムが組まれています。
ドラッカー学会初代代表の上田惇生先生をはじめ、
私の信頼する先生方にお集まりいただきました。
マーチャンダイジングは鈴木哲男先生、
オペレーションは高野保男先生、
計数は白部和孝先生。
そして私がミッションとマネジメントを担当します。
私が『店ドラ』を書く前からの構想がやっと実現したことになります。
その意味で、ほんとうに待望の研修会の始まりです。
開催日は5月29・30・31日の2泊3日。
会場は、東京都庁舎を臨むベルサール西新宿 1階ホール、
宿泊は新宿ニューシティホテル。
ハードな3日間ですが、
アメリカの1週間で成し遂げる「自ら、変われ!」を、
国内の3日間で実現させる内容です。
是非、商人舎ミドルマネジメント研修会への参加を、
ご検討ください。
さて、昨日の日経新聞に、
編集委員の田中陽さんが
「2つの『ユニ』共通点3つ」 と、
題して書いた記事がいい。
2つの「ユニ」とは、
ユニクロとユニ・チャーム のこと。
田中さんは昨日の日経MJにも、
「ユニー」のサークルKサンクス完全子会社化の記事を書いているから、
田中さんにとって昨日は、
実は「3つのユニ」だった。
「すぐにでもナンバーワンになりたい」
ファーストリテイリング柳井正会長兼社長の言葉。
いかにも柳井さんらしい。
かといって、それが大風呂敷ではない。
高い目標を掲げ、
全軍を、全ミドルマネジメントを鼓舞する。
ユニ・チャームも同様。
こちらの行動原則は、
「尽くし続けてこそナンバーワン」
2020年の目標。
「ユニクロは売上高5兆円(前期8203億円)。
ユニ・チャームは1兆6000億円(同3769億円)」
この時点で、それぞれに世界第1位。
ユニクロはカジュアル衣料、
ユニ・チャームは生理用品や紙おむつカテゴリー。
「2つのユニ」の「成長を支える3つの共通点」を、
田中さんが分析する。
第1は「イノベーション」。
〈イノベーションとは、
人的、物的、社会的資源に対して、
新しい、より大きな富を生む能力を
与える仕事である〉
ピーター・ドラッカーの言い回し。
フリースもそうだったし、ヒートテックもイノベーション。
「不織布・吸収体の高い開発力で独創性のある製品」も、
イノベーション。
しかしそうした目に見えるものだけではない。
「新しい、より大きな富」を「生む能力」、
それだけではない。
「その能力を与える仕事」
ユニクロにもユニ・チャームにも、
そのトップマネジメントはもとより、
ミドルマネジメントにまで、
イノベーションが満ち溢れていなければならない。
田中陽さんが指摘する第2は、
「社会的な非効率や不条理などの排除」。
ユニクロは「SPA(製造小売り)は中間流通を省略し、
工場から店頭まで垂直統合を実現」
ユニ・チャームは「生理のほかに子育て、
介護など女性の負担軽減に尽力」
これも大きく見るとイノベーションではある。
第3は「メガトレンドに乗ること」。
「ファッション業界はカジュアルの流れが続いている」
「高齢社会の進展、ペットブームも見逃せない」
これらはマーケティングである。
イノベーションとマーケティング。
故倉本長治商業界主幹に言わせれば、
「創意を尊びつつ良い事は真似ろ」
「お客に有利な商いを毎日続けよ」
2つのユニは、
「極めて高い目標から、
現在に引き戻して、
実現に向けた課題に取り組む」
極めて高い目標を掲げるのが、
トップマネジメントの仕事。
実現に向けた課題に取り組むのが、
ミドルマネジメントの役目。
2つのユニにはいま、それがある。
「過去からの積み上げ、
延長線上ではない」
柳井正さんの言葉。
「成長しないと死んだも同然」
ユニ・チャーム社長高原豪久さん。
「今までの成長で満足しては駄目。
4倍速で仕事を進める」
田中さんは最後に提言する。
「まずは自らの事業を3つの文脈に落とし込もう。
存在意義を見つめ直すことにもなり、
成長の新芽も見つかるはずだ」
私も賛成。
現状否定を原動力に、
イノベーションとマーケティングを展開する2つのユニに学ぶ。
しかし学ぶといっても、
学び取りつつ、ユニークさを創造したい。
だいいち、そうしなければ、
2つのユニに失礼だ。
私は、トップマネジメントを育てることは、
簡単ではないと思う。
突然変異的に、
英雄待望論に押し出されるように、
登場するのが、いい。
しかしそんなトップも、
ミドルマネジメントを、
計画的に養成しなければ、
やがて停滞がやってくる。
サム・ウォルトンは言った。
「平凡な人たちによって、
平凡な仕事をして、
非凡な成果を上げる」
ただしサムの言う「平凡」とは、
大いに社会に貢献し、
多くの人々を幸せにするものだった。
高い目標を掲げる。
それを現実に引き戻して、
実現に向けた課題を解決する。
トップとミドルの役割が明確な企業こそ、
いつも大きな成果を上げる。
<結城義晴>
4 件のコメント
「ミドルマネジメント」について,ドラッカーも交えながらの小考・・・
以前,スタジオアリスの本村前社長からメールをいただく機会がありました。
本村社長は,同社の<サッカー型経営>というのは,同社のビジネス形態からやむにやまれず,開発した経営手法で,ややもすると,表面的なビジネスモデルで評価されるきらいがありますが,それ以上に同社の発展は,この<サッカー型経営>に負うところが大きいとおっしゃっていました。
ドラッカーは,チームワークについて,アメリカはひとつの専門化されたポジションが固定化されている“野球型”であり,日本は,サポートのうまい“サッカー型”といっています。 しかし,これは業務の分業体制についての見解であるので,現場に権限を与えるという意味でのスタジオアリスの「サッカー型経営」とは,また違うと思います。
むしろ,組織の知識創造という観点からみれば,同社の場合,トップの役割がカリスマでもない,スポンサーでもないカタリスト(触媒)である企業における,企業家的ミドルを中心としたリーダーシップが発揮されるミドル・アップダウン型組織に近い例ではないかと感じました。
即ち,トップの創り出した概念がミドルにとっての与件となり,ミドルはそれをどう実現するかの方法を決定する。そして,今度は,ミドルの決定がロワーにとっての与件となり,彼らもまた,その実現方法を決定するという組織です。なお,この組織は,組織の知識創造が最も進む形態ということです。
このトップダウンでもボトムアップでもない,ミドル・アップダウンというのは,野中郁次郎先生が唱えられている概念です。トップダウン型組織におけるトップはカリスマ,ボトムアップ組織におけるトップはスポンサーなんだそうです。
また,野中先生は,ミドル・アップダウン・マネジメントにおいて「ミドルを選ぶのはトップであり,人の選別がもっとも重要な戦略要因となる。トップは危機ないし緊張創造の触媒を演ずると同時に,誰に任せるかを戦略的に考える。」と指摘しています。
但し,この組織の欠点は,“成員の疲労”であるとしているので,ストレス耐性の強い人材の選定がポイントになるのかもしれません。
トップの考えた戦略がどれだけ素晴らしいものであっても、それを実際、現場に近いところで具現化する人間がいなければ、その戦略は、「絵に描いた餅」となる。戦略を「絵に描いた餅」にしないための最大のキモはミドルマネジメントである。ミドルは「夢」と現実とをつなぎ合わせる役割を担わなければいけない。そのために、部下に対しては指示・命令を伝えるだけではなく、「なぜ・何のために」を伝え続ける必要がある。
そして、高い目標を現実に引き戻すセンスを磨かねばならない。
嶋内仁さま ありがとうございます。
すべては人材、あるいは人財。
しかしこのテーマを思うときいつも私は、
松園芳子さんのことを考えます。
横須賀で美容院を経営している松園さんは、
日本の美容院経営グループのリーダー。
美容院経営を的確にすると同時に、
採用する人材は少年院からしか採用しない。
つまり、様々な人材としての要件も必要なのでしょうが、
それを育てる環境や、共に育つ人が重要なのだと。
上山功樹さま、ミドルマネジメントの重要さ、
私も、身に染みて感じています。
東日本大震災のときにも、
ミドルマネジメントである店長たちが、
独自の判断で、素晴らしい活躍をしました。
本部やトップマネジメントとの連絡が取れなかったからです。
会社としての高い目標を現実に引き戻して、
日々、問題解決を図る。
それがミドルの仕事です。