ウォルマート2011年度決算と小売り4業態別1月販売統計の明と暗
ウォルマートの決算が発表された。
2011年度の総売上高4439億ドル。
いつものように1ドル100円換算で44兆3900億円。
昨年は4189億ドルだったから、
250億ドルの増加で、
これはプラス5.9%。
すごいことです。
100円換算で2兆5000億円の伸び。
80円でも2兆円。
純利益は157億ドル(同1兆5700億円)。
昨年は164億ドルだったので、
こちらは4.2%の減少。
2012年1月末の店舗数は、
アメリカ国内に4479店、
アメリカ国外に5651店。
合計1万0130店舗となった。
コンビニエンスストアやスーパーレットなど小型店を含まず、
1万店の大台を超えたのもウォルマートならではのこと。
ただし、日本の大手小売企業同様に、
国内での成長が止まって、
海外で稼ぐ。
だから二つの道しかない。
国内は新フォーマットの開発、
国外はM&Aや積極的な出店。
国際戦略を推進する第4代目CEOマイク・デュークの発言。
「多くの家庭が新しい“標準”に慣れつつある中、
ウォルマートのプライス・リーダーシップは、
アメリカ全土で差異を生み出している」
「コアな顧客は依然、財政状況に慎重であり、
現在の厳しい経済情勢を生き抜くため、
ウォルマートのEDLPに信頼を寄せている」
エブリデー・ロープライスを貫き、
プライス・リーダーシップを握り続ける。
ポリシーは不変だ。
1962年にサム・ウォルトンが1号店をつくったウォルマートは、
今年、創業50周年を迎える。
デュークは語る。
「大きなチャンスが私たちの前に見える 」
ほんとうに見えているのかどうか。
それは誰にもわからない。
しかしポリシーは1962年以来、
一貫している。
それがウォルマートの強みである。
さて、2012年1月の販売月報が
続々と発表されている。
1月の百貨店の統計結果。
調査対象は日本百貨店協会加盟の86社、254店舗。
まず売上高総額は1月の31日間で5526億7220万円。
既存店前年同月比はマイナス0.3%と、微減。
1月前半の正月商戦は、
福袋や初売り、セールが好調で、
前年を上回る勢いでスタートした。
しかし、後半は例年を下回る気温の低さと
日本海側の記録的な大雪が影響し、
減速してしまった。
地域別では、復興需要が依然好調の
仙台地区がプラス7.8%、東北地区が4.3%。
また、新店、増床店舗が拡大している
福岡がプラス18.1%、大阪がプラス5.0%と、
こちらも好調。
1月のコンビニの販売統計。
日本フランチャイズチェーン協会発表。
主要コンビニエンスストア10社の統計。
ココストア、サークルKサンクス、スリーエフ、
セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、
デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、
ミニストップ、そしてローソン。
コンビニは完全に寡占化された産業。
この寡占化はさらに淘汰される。
1月の店舗売上高は既存店ベースで
6313億6300万円。
前年同月比はプラス1.7%。
前年を上回りはしたが、
ここ数カ月と比べると、
伸び幅は少ない。
それでもやはりコンビニは強い。
来客数、平均客単価、店舗数、
すべての項目で前年同月比、プラスを維持。
既存店の来客数は10億3069万人(プラス0.01%)、
平均客単価は613円(プラス1.7%)、
店舗数は4万4520店(プラス3.8%)。
この時期の気温の低さは、
コンビニにとってプラスに働く。
おでん、肉まん、揚げたて惣菜などの
カウンター商品はもちろん動きがよくなる。
さらに寒気の影響で野菜が高騰するため、
手頃な価格で購入できる
個食サラダや惣菜などもよく売れる。
日本チェーンストア協会からは
1月のチェーンストア販売概況がでている。
こちらはチェーンストア60社、7860店の統計。
イオンやイトーヨーカ堂、ダイエーなどの
大手総合スーパーの企業が名を連ねる。
販売総額は1兆1249億3139万円。
全店でみると、プラス3.5%だったが、
既存店は前年を割り込み、
マイナス1.2%。
食料品の動きが鈍く、
既存店前年同月比がマイナス1.6%。
なかでも、畜産がマイナス3.3%、
水産がマイナス3.2%とふるわず。
さらには家電がマイナス10.7%。
寒かったにもかかわらず、
暖房家電が不調だった。
そして最後に
1月のスーパーマーケット販売統計調査。
スーパーマーケット3協会の合同調査。
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
一般社団法人新日本スーパーマーケット協会。
集計企業数は280社、7582店舗。
このうち、保有店舗数が1~3店舗の企業は45社。
4~10店舗が81社、
11~25店舗が73社、
26~50店舗が45社、
51店舗以上が36社。
つまりこの統計では、
保有店舗が25店舗以下の
スーパーマーケット企業が多いことがわかる。
今月の発表者は、
新日本スーパーマーケット協会・増井徳太郎副会長。
総売上高は7538億7598万円。
既存店前年同月比マイナス1.9%。
食品の合計が6582億3462万円(マイナス1.8%)、
非食品の合計は689億5095万円(マイナス3.7%)。
前年同月を超えたのは、
青果のプラス0.2%と、
惣菜のプラス0.1%のみ。
「青果のプラスは相場の影響とみてよい。
低温の影響で、相場が高騰した
葉物野菜やいちごなどの生育不良、低品質、品不足が原因」
「惣菜はトレーなどの副資材の価格が上がっているため、
利益率が下がっている」
「4年以内に70%の確率で首都圏に直下型地震の報道がされてから、
水などの備蓄用品が売れた。
また、ヨーグルト、トマト、塩こうじなども
テレビで特集されてからの動きがよい。
メディアの影響の大きさがうかがえる」
既存店の前年同月比を業態別にまとめると、
食品スーパーマーケット ▲1.9%
総合スーパー ▲1.2%
百貨店 ▲0.3%
コンビニ +1.7%。
ついでに、
ウォルマート(2012年度)プラス5.9%。
ゲストスピーカーは、
㈱シジシージャパンの芹澤政満さん。
グループナレッジ推進担当取締役。
CGCグループは全国のレギュラーチェーンに対抗するため、
ローカルの中堅・中小スーパーマーケットが結集した協業組織。
スライドを使用しながら、
CGCグループの動向について語った。
「CGCグループは2010年度現在、
4兆2658億円。
総企業数227社、総店舗数3720店舗が加盟。
1990年に加盟企業数がピークに達した」
「加盟企業数は減少しつつあるが、
売上げは一貫して増加している。
つまり、1社あたりの企業規模は大きくなっている」
「コア店舗124店のPOSデータを毎日収集し、
営業動向を調べている。
CGCでは小商圏に展開している会員企業が多いため、
天気の影響を受けやすい。
今月は特に野菜が高く、
鍋物関連商材の数字に結びつかなかった」
「CGCのプライベートブランドは
幅広く展開している。
加工肉の『Vpack』や、雑貨の『くらしのベスト』、
パンの『Alman』、スポット商品の『断然お得』。
しかし問題もある。
CGCの商品であるという認識が低い」
「東日本大震災を機に有名になった大船渡のマイヤは、
CGCの加盟企業。
ここで、CGCの災害マニュアルが大いに役に立った。
これは、原信ナルスホールディングスのマニュアルをベースに作成された。
原信は新潟で2回被災したが、
その被災経験企業の意見が盛り込まれている」
「たとえば、ストーン・ペーパーを使用している。
水に濡れても破れない紙。
水害でマニュアルがダメになってしまった経験が、
ここに活かされている。
これが『協業』の成果である」
「自社努力で足りないところを協業活動で補う。
CGCの目指すところは企業のつながりです」
世界最大の単独企業ウォルマートは44兆円。
中小ボランタリーの日本のCGCは4兆円。
どちらにも存在意義がある。
それが小売流通業の特徴だ。
私が惚れ込んだ世界の面白さだ。
<結城義晴>