「ゲルニカ」と「フィンランディア賛歌」と「ウクライナは滅びず」
朝日新聞、昨日の「天声人語」
パブロ・ピカソの絵画「ゲルニカ」は、
ドイツ軍による無差別爆撃をテーマにした。
「1937年、パリで暮らすピカソは、
祖国スペインの都市が爆撃されたことを知る。
すぐにスケッチを始め、
1カ月ほどで完成させた」
「死んだ子を抱く母親。
倒れた兵士。おののく馬――。
叫び声まで聞こえるような作品は
パリ万博のスペイン館で公開された」
「非人道的な行為を
世界に告発する手立てとしては、
どこか”速報”を思わせる」
しかし感動的である。
「いまウクライナからも、
ロシア軍の蛮行が次々と伝わる」
毎日新聞、昨日の巻頭コラム「余禄」
「おお立ち上がれスオミ
なんじは世に示した
隷属のくびきを断ち切り
抑圧に屈しなかったなんじの姿を」
ジャン・シベリウス作曲、
「フィンランディア賛歌」
スオミはフィンランドのこと。
そのフィンランドは19世紀、
帝政ロシアの支配下にあった。
ロシア革命を機に独立を果たすが、
第二次大戦中にソ連に侵略され、
この「賛歌」が生まれた。
シベリウスはフィンランドの作曲家。
「フィンランド化」という言葉がある。
フィンランドとソビエト連邦の関係に、
なぞらえて生まれた言葉で、
「超大国への従属を迫られた、
小国の悲哀を意味する」
フィンランドはソ連に従属を迫られた。
しかし東欧諸国とは異なって、
自由経済や民主主義体制が守られた。
第二次大戦中、ソ連に頑強に抵抗し、
降伏せずに講和に持ち込んだからだ。
ときにはナチスドイツとも組んだ。
サンナ・マリンさん。
いま、フィンランドの首相。
NATOへの加盟を望む意向を表明した。
そしてコメント。
「ウクライナ侵攻ですべてが変わった」
これがロシアを知り尽くした国の判断である。
フィンランドは2年連続で、
幸福度1位となった。
首都ヘルシンキは、
ワークライフバランスで世界1位。
コラム。
「反発したロシアがミサイルを
フィンランド国境に移すという情報もある」
「自らの愚行が、
平和を望む人々の心を変えたのである。
隷属を拒否する周辺国の覚悟を
軽視してはならない」
国も組織も人も、
誰かに隷属してはならない。
仕事をする人も、
商売をする人も、
隷属には、
徹底的に抵抗しなければならない。
隷属した仕事、隷属した商売は、
それを顧客に見透かされて、
認められることはない。
そして、
ウクライナ国歌。
パヴロ・プラトノヴィチ・チュブンシキー 作詞、
ムハイロ・ヴェルビツィキー作曲。
1863年完成。
ウクライナは、
ロシア帝国に支配されていたが、
ロシア革命の1917年に独立を宣言。
この歌はソ連に併合されるまで国歌となり、
1992年、ソ連から独立のあと、
再び国歌に採用された。
「ウクライナは滅びず」
1.
ウクライナはいまだ滅びず
その栄光も 自由も
同胞よ
運命は
我らにふたたび微笑むだろう
我らの敵は
太陽の下の露の如く消え
我らは国を治めよう
我らの地で
魂と身体を捧げよう
我らの自由のために
そして示そう
我らがコサックの子孫であることを!
2.
同胞よ
戦場であろうとも
我らは立とう サン川からドン川まで
我らは認めぬ
他者による支配を
黒海は微笑み
父なるドニプロ川は歓喜に満ちる
ウクライナでの
幸運の再来に
魂と身体を捧げよう
我らの自由のために
そして示そう
我らがコサックの子孫であることを!
3.
我らの忍耐と
誠実なる努力は報われ
自由の歌は
ウクライナの地に響き渡る
その歌はカルパチア山脈に反響し
草原にも鳴り響く
ウクライナの名声と栄光は
すべての国に知られるのだ
魂と身体を捧げよう
我らの自由のために
そして示そう
我らがコサックの子孫であることを!
併合されたり、
隷属させられたり、
無差別爆撃されたり。
そんな国の歌や絵画は、
なぜか、美しいし、
感動的だ。
そして併合したり、
隷属を強いたり、
無差別爆撃したりした、
国や政治家よりも、
長くながく残る。
これも不思議なことだ。
仕事も商売も、
店も会社も、
長くながく残るために、
もっとも必要なことは、
自立と美しさである。
〈結城義晴〉