「日本経済閉塞感の元凶は人口減ではなく、 イノベーション不足である」
関東地方に今年、
春一番は吹かなかったが、
今日は遅ればせながら、
「春一番」もどき。
「立春から春分の間」に、
「その年に初めて吹く」、
「東南東から西南西まで」の、
「風速8m/s以上の強い風」。
だから今日の強い南風は、
「春一番」ではない。
「春二番」くらいか。
まず、今週うれしかった出会いのご報告。
名古屋の折兼セミナーの私の講演に、
豊橋市の㈱デライトの白井正樹社長が聴講に来てくれた。
白井さんは2009年の第5回USA研修会の団長。
この日は、息子さん二人を伴っての参加。
私の隣は次男の白井孝典店長。
USA研修会にも参加してくれた
その横が長男の取締役経営企画部長・白井健太郎さん。
昨年、コーネル大学のビル・ドレイク教授が、
インディペンデント・カンパニーの優位性を主張し始めた。
デライトはそれを実現させているし、
さらに、この優位性を証明してほしい。
久々にお会いして、
講演を聞いてもらって、
本当にうれしかった。
そして昨日は、午後から、
商人舎にご訪問者あり。
まず、宮田昇税理士事務所長の宮田昇先生。
東京・赤坂に事務所を設け、
年間250回も講演する超売れっ子の税理士。
商人舎発足の2008年2月から、
顧問税理士になってもらって、
さらに今年4月から、
商人舎Special Memberに加わっていただく。
その宮田先生の商人舎決算へのコメント。
「教科書のような決算書で、
素晴らしい」
私は売上げにこだわらない。
もちろん利益に対しても商人舎では、
目くじら立てるほどにストイックにはならない。
ただし、「良い会社」であることには、
真摯でありたい。
「小さくて良い会社」
だから例えば、
労働基準監督署に入られるような事態は、
商人舎では絶対に起こらない。
そんな事件が起こりようのない仕組みになっている。
いわば労務に関する安全保障の「保障」の体制が、
会社の構造の中に出来上がっている。
この構造や仕組みが大切で、
だから欲張らない、急がない、突っ張らない。
それが決算に表れて、
私、幸せ。
私が宮田先生著作の「The 税制改正」のパンフレットを持ち、
宮田先生が商人舎税務申告書をもって、
幸せそうに記念写真。
夕方の5時には、
沖本美幸(よしゆき)先生来社。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科教授。
私と同年生まれで、
2009年4月、立教大学院教授就任。
これも私と「同期の桜」。
現在、みなとみらいの高層マンション29階がお住まい。
阿蘇に山荘をもって、年間に3分の1くらいは、
そちらで悠々自適。
立教では、ベーシック・マネジメント、
コンサルティング・メソッド、
さらにビジネスシミュレーションと、
調査研究・演習指導(ゼミ)を担当。
小売業・サービス業のコンサルタント諸氏、
沖本先生に学ぶことは多いはず。
早稲田大学政経学部4年のときに、
公認会計士資格を取得した俊英。
その後、東京銀行に入行し、大活躍。
三菱銀行との合併のとき、監査法人に転職し、
現在、一般社団法人俯瞰工学研究所首席研究員をも兼ねる。
沖本先生と話していると、
触発されることが、とにかく多い。
商人舎オフィスで熱談した後、
近くの料理屋「柳せ」で一献。
もちろん意気投合。
一緒に研究会を開いたり、
仕事したりすることになると思う。
その沖本先生、
5月に単行本を出版の予定。
『本を因数分解する』(SIC刊)。
楽しみな本だ。
さて、日経新聞のコラム『大機小機』。
コラムニスト与次郎氏が、
「人口と経済成長」と題して、書く。
「世界経済の先行きに薄明かりが差しても、
株価が少々上がっても、
日本の経済社会を取り巻く閉塞感が
払拭される気配はない」
これがコラムニストの問題意識。
そして、その閉塞感の原因をここに求める。
「悲観論の根拠の代表格は人口減少である」
今年1月、新しい将来推計人口が公表された。
日本の人口は2060年までの50年間で、
「8674万人にまで減少」という推計。
「人口が減っていくのだから、
経済成長などできるはずがない。
せいぜいよいところゼロ成長だろう」
こんな気分が蔓延している。
ここまでがこのコラムの前半のトーン。
「しかし」と反論して、断言する。
「先進国の経済成長と人口の間には、
短期的にも長期的にもまったく関係はない」
「過去100年間のデータを一見すれば直ちに明らか」
「先進国では一般に経済の成長率は
人口増加率よりはるかに高い」
ドイツは欧州連合経済の機関車だが、
「その人口減少は、
年平均マイナス0.09%(2005~2010年)。
これは日本の人口減少率を上回る」
「韓国の人口増加率も0.39%(05~15年)」。
人口成長率の世界ランキングは下から40位ほど。
しかし韓国経済の好調さも人口増に牽引されたものではない。
さらに「世界全体を見渡せば、
フロンティアはいくらでも存在する」
そこで最後にコラムニストの提案。
「頭数に頼るモノやサービスは
『コモディティ化』しやすく、
付加価値は低くなりがちだ」
私は人口がじわじわと減少するトレンドの中では、
コモディティ化現象を逆手に取ったビジネスモデルも、
おおいにあり、だと思う。
コラムニストの視点はオーソドックス。
「人口減少といい高齢化といい、
社会が大きく変わると きには
潜在的なニーズも変わる」
「それこそがイノベーションの基なのだ。
言葉の生みの親であるシュンペーターはそう言っている」
ピーター・ドラッカーは、指摘している。
イノベーションのタブーのひとつとして、
「未来のために行われることは
避けねばならない」。
コラムニストの結論。
「日本経済の閉塞感の元凶は
人口減ではなく、
イノベーション不足なのである」
私も、そう思う。
人口減を嘆いたり悲観したり、
それを口実にあおったり脅したり、
それは避けねばならない。
人口がじわじわと減っていく。
しかしこれは政策によって、
回避することができる可能性がないわけではない。
ただし高齢化は止めようがない。
この変化をとらえるイノベーションは、
高齢化対応店舗づくりだけではない。
何かとてつもなく大きな可能性が匂う。
今年の「春二番」を超えるほどの。
<結城義晴>