バファローズ日本一と二所ノ関部屋の「Innovation」
ハロウィン・イブ。
日曜日がハロウィン前日で、
本番ハロウィンは月曜日。
盛り上がりは異常なほど。
韓国・ソウルの繁華街・ 梨泰院(イテウォン)では、
ハロウィン前々日に大事故が起きた。
狭い街に10万人が押し寄せていた。
群衆は将棋倒しとなって、
死者154人、負傷者132人。
コロナパンデミックのストレスが、
世界中に溜まっている。
一方、
第73回プロ野球日本選手権シリーズ。
その年のプロ野球日本一を決める試合。
オリックスバファローズが優勝した。
東京ヤクルトスワローズに、
対戦成績4勝2敗1引き分け。
最終戦もシーソーゲームで、
5対4の1点差の試合だった。
その最終ゲームの最後の一球。
三振でゲームセット。
子どものころなど、
日本シリーズが始まると、
ワクワクして眠れなかった記憶がある。
しかし最近は関心が薄れていた。
とくにどこのファンということもなく、
応援するチームがなかった。
けれど、なぜか今年は違った。
わからない。
バファローズの日本一は、
前身の阪急ブレーブス時代を含めて5回目。
オリックスと名前が変わってからは、
1996年以来26年ぶりのことだった。
その26年前は、
プロ5年目のイチローがいた。
監督は仰木彬(あきら)だった。
2000年オフにイチローが、
大リーグに去ってから、
オリックスは停滞し始めた。
そして2020年に中嶋聡監督就任。
中嶋聡(53歳)は、
1987年に阪急ブレーブスに入団。
スター選手ではなかったが、
強肩、強打、俊足の捕手だった。
その後、西武ライオンズ、
横浜ベイスターズ、
北海道日本ハムファイターズと転々。
現役選手としての一軍実働年数は29年で、
工藤公康と並んで日本プロ野球最長記録。
その後、ファイターズのGM特別補佐に就任。
サンディエゴパドレスに派遣され、
コーチとして傘下球団を巡回して勉強した。
2019年、オリックスの二軍監督に就任、
2020年途中から一軍監督。
すぐに昨2021年と今年22年に、
パリーグを制覇した。
さらに今回、日本シリーズを制した。
現在のバッファローズには、
コーチが23人いる。
多い。
投手は「育成」という実質的な3軍を含めて、
44人も抱えていて、
競争が激しい。
日本シリーズの檜舞台でも、
若い投手陣がどんどん使われ、輝いた。
21歳の宮城大弥(背番号13)、
23歳の宇田川優希(96)、
24歳の山﨑颯一郎(63)。
野手では、
20歳の紅林(くればやし)弘太郎(31)、
21歳の太田椋(24)。
彼ら若手を中嶋監督が、
積極的に起用した。
若手たちは先輩に学んだ。
投手はエースの山本由伸(よしのぶ)を見習った。
その投手四冠の山本も24歳だ。
野手では吉田正尚(まさたか)が手本となった。
若い人財が躍動し、
リーダーが存在した。
イチローのDNAを継承していた。
そして大黒柱の山本由伸を欠いても、
スワローズに勝ち切った。
私はそんなバファローズに、
組織や人財の質を感じたのだと思う。
もちろんスワローズも、
高津臣吾監督のマネジメントは秀逸だった。
22歳の村上宗隆は三冠王を獲った。
山田哲人はリーダーシップを発揮した。
だからこのシリーズは、
面白かったのだと思う。
ビジネスも商売も、
チェーンストアも、
若い組織、若い人財が必要だ。
10月27日の日経新聞。
「二所ノ関寛さん
大学院の学び生かし角界に新風」
元横綱稀勢の里。
1986年茨城県牛久市生まれ。
2002年に入門し、
2017年に第72代横綱に昇進。
19年に引退すると、
2021年3月に早稲田大学大学院に入った。
スポーツ科学研究科を修了して、
昨21年12月、年寄二所ノ関を襲名。
今年22年5月に自前の部屋を開設。
その茨城県稲敷郡阿見町の二所ノ関部屋には、
土俵が2つある。
これまでの相撲部屋では、
土俵は一つだった。
稽古をするといっても、
弟子たちは順番を待ち、
見ている時間のほうが長かった。
二面の土俵は、
稽古時間が二倍になる。
合理的だ。
さらに相撲部屋では通常、
朝稽古前に何も食べない。
しかし大学院時代に、
空腹状態で練習をするスポーツは、
相撲くらい、と知った。
今、二所ノ関部屋では、
うどんなど消化の良いものを食べてから、
稽古を始める。
サプリメントによる栄養補給も、
専門家の指導のもとで取り入れた。
筋力トレーニングにも注目し、
土俵わきに専用ルームを設けた。
ビデオカメラを活用して、
動作解析もする。
弟子のケガを防ぐためだ。
これだけの設備を整えるには、
都内では土地も確保できない。
そこで茨城の阿見町に部屋をつくった。
さらに企業による支援体制も固める。
地元茨城の企業だけでなく、
全国的に有名な企業にも後援してもらう。
一言で言えば、
「相撲部屋を経営する」
これは大学院で学んだことだ。
野球チームをマネジメントする。
相撲部屋を経営する。
そのために新しい組織が必要だ。
若い人財も求められる。
スポーツの世界にも、
イノベーションが起こっている。
そのイノベーションが、
勝利を引き寄せ、
それがまた少しずつ、
人々を惹きつけているのだと思う。
組織とイノベーション。
そのための学習と経験。
仕事も商売も同じだ。
うれしいことだ。
〈結城義晴〉