上野光平の「クラシックライブラリー」と「自己啓発のすすめ」
カスミつくばセンター。
茨城県つくば市の㈱カスミの本社。
このつくばセンターの1階に、
レコード鑑賞室があって、
地元の人たちにも公開されている。
「上野光平クラシックライブラリー」
上野光平さんは、
実質的な西友の創業者で、
「支配人」を名乗った。
その後、流通産業研究所所長・理事長。
流通業界きっての論客で、
西友のトップを退任するときに、
ダイエーの中内功さんから、
スカウトの話が持ち込まれた。
もちろんそれは丁重にお断りして、
研究の道に進んだ。
その上野さんは、
クラシック音楽マニアだった。
亡くなられたときに、
その膨大なクラシック音楽のコレクションが、
つくばセンターに寄贈された。
個人所蔵のレコードは5000枚。
その貴重盤がここに収められている。
CDではなく、レコード。
レコードの良さが見直されているが、
最新のレーザーシステムによって、
リアルに聴くことができる。
私は上野光平の弟子を自任している。
ここに来ると、
上野さんに会っているような気がする。
その著『自己啓発のススメ』
名著だと思う。
月刊「商業界」に3年間、
毎月書いてもらった。
その連載がまとめられて、
一冊の単行本になった。
「自己啓発とは、
資質(個性)を変えることではない」
「資質が行動として表現される能力を
高め、深め、豊かにすることである」
「自己啓発の根っこと幹は、
人間としての”自分”を”啓発すること”、
言いかえれば、人間としての自分が、
人間としての自分を、
より充実した人間としての自分に、
創り変えることであり、
そのために、どのような方法で、
どのように努力するか、ということを学び、
考え、そして行動することである」
上野さんは「人間」を重視した。
亡くなられて1年後、
渋谷の鳥屋で追悼の宴がもたれた。
流通産業のトップや著名人が、
30人くらい参加して、
車座で鳥鍋を囲んで、
上野さんのことを語り合った。
全員が順番にスピーチした。
私も上野先生から原稿をいただく話をした。
遅れてやって来たのは、
共産党の上田耕一郎さんだった。
ちょうど国会が開催されていて、
参議院議員として出席していたからだ。
日本共産党中央委員会名誉役員。
前議長の不破哲三さんは実弟だ。
その上田さんが最後にスピーチした。
「日本共産党に入党するためには、
2人の推薦人が必要とされました。
上野君は私の推薦人の一人です」
そして述懐した。
「上野君は優れたコミュニストでしたが、
それ以上に類稀なるヒューマニストでした」
拍手喝采だった。
そのヒューマニストの上野光平だからこそ、
西友でもチェーンストアでも、
「人間」を重視した。
「人間産業」をつくろうとした。
「啓発の対象が技術やモノではなく、
“自分”であり、
“自分という人間”であり、
それを”自分一人”でやらねばならず、
他人の言うとおりにやってもできず、
学ぶことはできても真似ることはできない、
むずかしくはあるがやりがいのある、
そして死ぬ時まで終わることのない
時間のかかる作業、
それが自己啓発の本質である」
上野さんがつくった西友。
現在の社長は大久保恒夫さんである。
その大久保さんと、
カスミ社長の山本慎一郎さん。
対談をしてもらって、
食事の懇親をして、
今日はゴルフ。
常陽カントリー俱楽部。
歩いてのラウンド。
午前中は風もなく絶好の日より。
午後は風が吹いててこずったが、
実に気分のいい一日だった。
ありがとうございました。
上野光平の言葉。
リーダーシップに関して、
「忘れてはならないことがある」
「心を動かすことができるのは
心だけだ、ということである」
上野さんに感謝しよう。
〈結城義晴〉