ロピア小田原高田店1坪1000万円の「シンプルで易しい商売」
フランス大統領選第2回投票で、
現職のニコラ・サルコジが負けた。
勝ったのは社会党のフランソワ・オランド。
ともに57歳。
得票率は、
オランド51.68%。
サルコジ48.33%。
オランドは勝利宣言のメッセージ。
「仏国民は変革を選んだ。
私はすべてのフランス人の大統領になる」
サルコジは、この結果を、
「『民主と共和』に基づいたフランス国民の選択」
「全ての責任は私にある」
潔い。
そしてオランド新大統領への電話でのコメント。
「試練の中での幸運を祈る」
ともに、気分のいい発言で、
こちらも気分がよくなる。
一方、ギリシャ総選挙は、投票、即日開票。
暫定政権を担っている二大政党が後退。
政権はますます不安定になる。
さらに、ロシア・モスクワでは、
ウラジーミル・プーチン大統領の就任式。
民主化の遅れと対欧米強硬姿勢が懸念される。
フランスは社会党で左向き、
ロシアは保守化で右向き、
ギリシャは渾沌。
三者三様のヨーロッパ情勢。
「欧州では左翼、右翼という政治区分は時代遅れで、
『ローカリスト』と『グローバリスト』という分け方が
現実に近い」
日経新聞のコラム『一目均衡』。
特別編集委員の末村篤さんが、
「経済成長のパラダイム転換」と題して、
大上段から語り下ろす。
「経済危機が社会不安に発展し、
財政と雇用のトレードオフが政治問題化した欧州で、
経済成長のパラダイム転換への動きが台頭している」
「危機の打開には成長が不可欠というロジックは、
『改革なくして成長なし』と似ているが、
成長の中身も改革の中身も異なる」
どう違うのか。
国際労働機関ソマビア事務局長の言葉を引用。
「労働を生産コストと捉え、競争力と利益を最大化するために、
できるだけ低く抑えねばならないと考え、
少数者への富の偏在を招いた現在のモデルから、
人々の福利増進と格差是正を主目的とし、
生み出された良質の仕事の量で成功が測られる
異なるタイプのモデルへの転換が必要とされている」
つまりは、「新自由主義的政策」に対して、
対照的な「新社会民主主義の思潮」の台頭。
そしてフランス大統領選挙を持ち出す。
「民主政治の振り子も揺り戻し始めた。
仏大統領選を制したオランド氏は『60の約束』で、
生産と雇用と成長を最優先課題に掲げた」
一方、「米国を筆頭に先進国の多くで
空前の企業利益と戦後最悪の失業率の併存現象が広がる」。
結びの言葉は、
「危機の深化とともに
『むき出しの資本主義』を『人間の顔をした資本主義』に
軌道修正するパラダイム転換の可能性も高まる」
難解な言い回しのコラムニストだが、
おそらく社会民主主義者だろうということは、
わかる。
企業は太る。
人々は細る。
この10年の経済政策の結果、
深まった危機。
「人間の顔をした資本主義」が、
この危機を救うというのが、
コラムニストの主張。
そのアメリカの失業率が下がってきた。
これも日経新聞朝刊。
「米失業率改善は本物か」
4月の失業率は8.1%。
前月から0.1ポイント低下。
なんと3年3カ月ぶりの低水準。
小売りサービス業が貢献しているに違いない。
昨2011年8月には9.1%だったから、
8カ月で1.0ポイントも低下。
アメリカの中央銀行「連邦準備理事会イエレン副議長も、
「謎(puzzle)だ」と発言。
2011年の実質成長率は2%を下回る。
そんな中で失業率が急低下。
失業率と成長率の間には「オークンの法則」がある。
「一国の国内総生産(GDP)が
潜在産出量より1%小さくなる度に、
失業率が約0.55%上昇する」という経験則。
今回はそれを大きく逸脱し、
「特殊事例」のように見られる。
不思議な現象が頻発する。
そんな時こそ、
パラダイムの転換が起こる。
良い方向にあると期待したい。
さて、先々週訪れた㈱ロピアの店舗。
素晴らしい。
ゴールデンウィークが終わって、
やっと紹介できる。
ロピア小田原高田店は、
昨年11月にオープンしたロピアモールの核店舗。
モールの総売り場面積は6081㎡。
県道717号線高田入口交差点そばの工業団地の中に位置する。
モールには、ドラッグストアのクリエイトSDと、
ホームセンターのカインズホームがはいっている。
ロピアのファサード。
新CIを導入し、
デザインを一新。
壁面にはロピアの経営理念が掲げられている。
ロープライスのユートピア。
楽しくて感動的な店づくりを目指す。
入り口には、ショッピング・バッグの説明。
大切なインフォメーションだ。
入り口の両サイドには、今日のお奨め商品が、
什器に1アイテムずつ並べられて単品量販。
左サイドでも単品量販。
入ってすぐに青果売り場。
最初にバナナの木をプレゼンテーションしたプロモーション・コーナー。
青果売り場は、果物のコーナーから入る。
左壁面にはトマトのコーナー。
圧巻の陳列。
野菜の導入部は、季節のお買い得野菜。
新玉ねぎ1個、19円。
可動式の什器に投げ入れ陳列で量販する。
さらに壁面には季節の野菜が続く。
ごらんの通りの、1什器1アイテムでの販売。
そしてこの価格。
きのこ類は平台での展開。
ロピアのPOPは大文字が多い。
遠くからでもおすすめ商品の価格が一目でわかる。
青果売り場から精肉売り場への導入部には、
ハム・ソーセージがこのボリュームで並ぶ。
その主通路の対面は、冷凍食品のリーチインコーナー。
ロピアの強みは精肉部門。
もともと「ユータカラヤ」という精肉店から始まった。
まさしく核部門が食肉ということになる。
お客はお買い得商品の平ケースに、
どんどん吸い寄せられる。
広告の品の牛豚合挽肉100g50円。
この日は雨。
雨の日サービスの若鶏手羽元は100g29円。
対面売場では、牛肉を販売。
この店はいたるところにぬいぐるみが置かれている。
ぬいぐるみがセシウム不検出の情報をながす。
壁面にはロピアのマスコット「ロピタ」。
天井から大判のPOPが大量に掲示されている。
墨文字でデザイン性が高いため、うるささを感じさせない。
むしろ、お店の特徴になっている。
タイル壁面には、フライパンなどの調理器具が
プレゼンテーションされていて、楽しい。
小田原高田店では、特別に松阪牛コーナーを設け、
お客を誘引している。
精肉売り場に面するエンドは、焼き肉のタレのエンド。
精肉売り場から鮮魚売り場へ。
売り場のカラーは、精肉売り場の赤から、
ガラッと青へと変わる。
ロピアは最近、特に鮮魚売り場に力を入れ、
その成果が表れ始めている。
天井からレールを吊り下げ、模型の電車が走っている。
アメリカのウェグマンズのような仕掛け。
ガラスで仕切られているが、作業場が見える。
メバチマグロのぶつ切りにお客が群がる。
鮮魚売り場の奥には、
惣菜売り場を示すオレンジのロピア・ロゴ。
コンコースの平台では寿司の販売。
サービス品の魚萬ランチ握りずしは10貫399円。
視察をしたのは、雨の金曜日、
それも午前中。
よくお客が入っている。
平台では弁当の販売。
ロピア自慢の肉の揚げ物コーナー。
大皿でのばら売り販売。
墨文字のPOPで自家製キャベツ・メンチカツを訴求。
専任のPOP作成担当が手書きでつくる。
平台で販売する自家製おにぎり。
その壁面は日配コーナー。
そして青果の反対側の壁面は牛乳、飲料などのデイリー売り場。
売り場カラーは黄色に変わる。
果実ゼリー98円も、この通り1什器1アイテム。
ベーカリー売場。
ぬいぐるみが空を飛ぶ。
芳醇食パン98円は、これだけの量を並べるが、
補充に忙しい。
冷凍食品売り場は、全品半額。
そして主通路の最後は卵売り場。
水の売り場。下段ではケース販売。
そして売り場の真ん中に設けられた菓子売り場。
ここでも、おすすめ品は、
1什器1アイテムの単品量販を貫く。
「単品量販」がロピアの特徴。
お米のコーナー。
そしてチェックスタンド。
ほとんどのお客が二段カートに、かごを2つセットして店に入る。
そしてお客は、かごいっぱいの買い物をする。
小田原店に限らず、
ロピアは「1坪1000万円」のシンプルな目標を立てる。
そしてそれを実現させる。
だから500坪の店ならば、年商50億円。
小田原高田店のように、600坪ならば60億円。
高木勇輔専務は、語る。
「ロピアは分かりやすくてシンプルなんです」
しかし1坪1000万は、
並大抵のことでは実現しない。
精肉と青果を核部門にして、
鮮魚も強化する。
加工食品、菓子、日配品は低価格を徹底。
そうすると客数が増える。
客数が増えると、
商品回転が高まる。
商売が易しくなる。
シンプルで易しい商売。
それが実現される。
ロープライスのユートピア。
ロピアのネーミングの由来。
同じ商品ならより安く。
同じ価格ならより良いものを。
私はこの店を訪れて、
アメリカの1930年を思い出した。
ご存知、マイケル・カレンの「キング・カレンの店」。
スーパーマーケット最初の店舗。
『最新型高級車にお乗りの方も、うば車をお引きの方も、ご来店歓迎。
流行遅れのお召物でも、そのままお気軽に、さあ、さあ、どうぞ!
金曜午後九時、土曜午後十時まで営業』
『大衆に直結した廉価販売のチェーン方式で、
三〇〇品目は仕入原価、二〇〇品目は5%を、
三〇〇品目は15%を、三〇〇品目は20%を、
それぞれ仕入れ原価にかけた値で売ると、
世の人達は、わが店の入口を破って乱入するでありましょう』
ロピアにはこのキング・カレンのにおいがする。
革新的なスーパーマーケットは、
カレンの言う「大衆に直結した廉価販売」
その「チェーン方式」の原点を持つものなのだ。
<結城義晴>
1 件のコメント
私も、スーパーマーケットにエンターテイメント的な要素を加えることは、
集客力をUPさせるのに大変有効だと考えていました。
顧客にまた来たいと思わせるような夢のある店舗づくりが、
店舗面積の広いスーパーマーケットであれば可能だと思うからです。
ただ、安売りに走るだけでは、いつか行き詰ると思います。
なぜなら値段を安くすることは、一番簡単な方法だけに最初はお客さんが集まりますが、
品物の質に見合った値段ということに気付いたとき、魅力がなくなってしまうのだと思います。
スーパーマーケットといえど、やはりそこに知性が感じられなければ、
長く続かないような気がしています。
しかし、「ロピア」にはこれまでにない、センスが感じられる点で好感が持てますね。
いつも先生のブログは読み応えがあり、楽しみにしております!!