「台湾総統選挙」とロピア・ニューヨーク研修2日目の「競争の激化」
華民国の総統選挙。
国民全体の直接選挙で、
正副総統が決まる。
「台湾民主化」の父と言われた李登輝総統。
その李第4代総統が1994年に、
中華民国憲法を改定して制度化した。
任期は4年。
だからアメリカ合衆国大統領選挙と、
同じ年に行われる。
そして今回は、
与党・民進党の・現副総統が当選。
蔡英文現総統の路線を継承する政治家だ。
中国の威嚇に強く反発する姿勢を貫く。
それを国民が支持したことになる。
副総統には蕭美琴駐米大使が就任する。
新しい副総統も親米反中である。
投票率は71.9%。
前回の2020年選挙よりも約3ポイント下がった。
それでも高い投票率で、国民が反中を支持した。
頼新総統の得票率は40.05%。
中国の習近平指導部は頼氏を敵視してきた。
台湾独立志向の強い「トラブルメーカー」と。
しかしそれこそが台湾の民主化である。
総統選と同時に実施された立法委員選挙は、
中国派の国民党が52議席で第1党となった。
民進党は1議席の差で第2党に転落した。
まだまだ大変な国情に変わりはない。
日本の上川陽子外相は談話を発表。
「民主的な選挙の円滑な実施と
頼氏の当選に祝意を表する」
「基本的価値を共有し、
緊密な経済関係と人的往来を有する
極めて重要なパートナーで、
大切な友人だ」
これに対して、中国はすぐに反発した。
それでも日本の意思を示したことは、
高く評価されるに違いない。
さて、私はニューヨーク。
日本を発って、
ブルックリンを中心に廻った初日は、
26時間ほど不眠不休だった。
ぐっすりと眠って、
二日目となった。
ロピアのニューヨーク研修2024の第1陣。
朝8時から結城義晴の講義。
The New Yorker Wyndham Hotelの会議室。
初日のおさらいをしてから、
「アメリカ視察の基本的な態度」
ここから始まる。
商業界主幹倉本長治
「創意を尊びつつ良いことは真似ろ」
つまりアメリカをすべて信じるな。
ピーター・ドラッカー
「基本と原則を補助線にせよ」
基本や原則と言われるものは、
補助線と考えて、
自分の目の現実を、
アメリカの現場で見て、聞いて、
自分で判断せよ。
そして「コンシューマー・ドクトリン」
故ジョン・F・ケネディ大統領が、
1962年3月に宣言した。
第一に、安全である権利。
第二に、知らされる権利。
第三に、選択できる権利。
第四に、意見を聞き遂げられる権利。
米国の消費産業は、
この消費者の権利を最優先する。
そしてアメリカ小売業の二つの共通理念。
サム・ウォルトンの言葉。
Retail is Detail.
「小売りの神は細部に宿る」
Take Care of Customers and Associates.
「お客様と仲間たちに配慮せよ」
日米に共通する重要な指針。
第1に、客数主義。
第2に、それが伸び続けること。
最後に4つの目。
すなわち虫の目、鳥の目、魚の目、
そして心の目。
ここから講義は始まる。
アメリカで学ぶために、
経済動向や人口動態なども、
知っておかねばならない。
それらをわかりやすく説明した。
コロナが米国の消費者と小売業に、
どのような変化をもたらしたのか。
その変化は早まったのか。
インディペンデント企業の優位性を、
アメリカのパブリックスやウェグマンズを例に、
強調した。
そしてロピアが目指すべき方向を、
結城義晴の視点で力説した。
レース型からコンテスト型に変わり、
寡占、三占、複占へと大きく変化した。
これも競争戦略として、
認識しておかねばならない。
8時から9時50分までの110分間、
小売業の競争のダイナミズムを
結城義晴の持論を交えて講義した。
そして専用バスに乗り込むと、
1時間ほどかけて、
ニュージャージー州のウッドブリッジへ。
2階にイートインスペースがあり、
美しい売場を見下ろすことができる。
市場感のある青果売場。
これがウェグマンズの第一の魅力だ。
昼食はウェグマンズのデリ。
相川博史団長が、
たくさんデリを買い込んで、
皆にどんどん試食させる。
これがロピアの企業文化だ。
ウッドブリッジから北上して、
モリスタウンのショップライトへ。
ボランタリーチェーンの1店。
ショップライトの中でも秀逸の店。
生鮮3部門やインストアベーカリー、
さらにデリカテッセンなどは、
屋号サインを掲げた店づくり。
これはロピアと同じだ。
レジでは地元の高校生が、
黄色いT シャツ姿で課外研修。
地域社会との連携として、
実にいい取り組みだ。
すぐそばで競争するリドル。
ドイツ出身のボックスストア。
アルディより遅れて2017年に米国進出。
すでに170店舗ほどに成長。
導入部は青果とベーカリー。
ベーカリーの什器はオリジナルで、
アルディよりもずっと買いやすい。
しかもおいしい。
アルディと同じフォーマットだが、
大きな違いはウィークリープロモーション。
売場の各所で真っ赤なサインを掲げ、
お買い得商品を訴求する。
アルディは1979年に米国進出を果たした。
リドルが38年後に登場した。
両者が競争を始めると、
ウォルマートでもうかうかしていられない。
ウェグマンズにも危機感がある。
現にイギリスではテスコまで甚大な被害を受けている。
「競争の激化」の新しい局面である。
注目しておかねばならない。
急遽、ハドソンパークに立ち寄る。
ニュージャージー州のハドソン河畔。
後半の視察は、
ブロードウェイ沿いの4店舗。
歩きながら自由に視察する。
ゼイバース。
たった1店舗だけだが、
固定客がしっかりついている人気の店。
スモークフィッシュ。
この店が誕生した時からの、
名物商品だ。
惣菜と鮮魚の強い スーパーマーケット。
だから多種多様な魚介類が並ぶ。
もちろん対面販売。
青果出身でボリューム陳列が特徴だったが、
コロナを経て、青果売場はやや縮小された。
コロナ以上に、
周辺のスーパーマーケットに影響を与えたのが、
トレーダー・ジョー。
2層の売場はエスカレーターで
ワンウェイコントロールされる。
ショッピングカート専用のレーンは必須だ。
だからお客は気兼ねなく、
たくさんの商品をカートショッピングすることができる。
2層店舗の理想形だ。
同じビルの1階と2階には
ドラッグストアのデュアンリードが入っている。
ウォルグリーン傘下。
2階はHBCとファーマシーだが、
ほとんどの棚がガラス棚で
鍵がかけられていた。
少ない人数で運営しているから、
驚くほどに万引きが多い。
すべての研修を終えて日が暮れると、
街はエキサイティングなネオンに彩られる。
タイムズスクエアは人人人。
相川博史団長と講師陣、それに事務局。
ニューヨークの飛び切りの中華を楽しんだ。
いい研修が終わると、
みな、優しい笑顔になれる。
発見や収穫も多かった。
今日も一日、お疲れさま。
(つづきます)
〈結城義晴〉