イオン純粋持株会社に移行、セブン&アイはディスカウント&値下げ推進
今日、イオンが、
純粋持株会社に移行する。
「とうとう」というよりも、
「やっと」という感じ。
イオンほど、
持株会社に適したグループはない。
傘下に150社を超える企業群を持つ。
歴史的にも、緩やかな連帯を推進し、
その後、ヤオハン、マイカル、ダイエーと、
破綻した企業群を再生させてきた。
「イオン」という名称は、
総合スーパーを主体に展開する会社のことであると同時に、
日本最大の小売り・サービス総合グループの総称でもあった。
だからイオンの総合スーパーは依然として「ジャスコ」と呼ぶ。
本業の事業を展開しながら、持株会社の機能を有するものを、
「事業持株会社」と呼ぶ。
これに対して、自ら、一切事業をせず、
グループ会社のアドミニストレーションを専門に行うものを、
「純粋持株会社」という。
岡田元也現イオン社長には、「純粋持株会社」にすることに、
ある種の抵抗感があったらしい。
私には、その気持ち、分かるような気がする。
しかし、イオンは、「純粋持株会社」を誕生させ、
また歴史的な一歩を踏み出した。
イオンには、経営者層の人材が豊富である。
今後は、それらの若手経営者陣が、
それぞれの企業の舵取りをしつつ、
ホールディングカンパニーは、
グループ総体の管理と、
軌道づくりにまい進することになる。
純粋持株会社は、別に新しいことではないし、
小売業でも、珍しくはない。
戦前の財閥は、みな、純粋持株会社として君臨していた。
それが戦後に制定された独占禁止法によって解体された。
1997年、独禁法の改訂により、
純粋持株会社制度が復活した。
日本で、復活純粋持株会社をつくったのは、
誰あろうダイエーの中内功氏であった。
「ダイエーホールディングコーポーレーション」といった。
しかし2001年、財務悪化で、解散した。
ホールディングカンパニーは、
子会社群が利益を出し続けねば、
存在の意味は全くない。
このことは重大な前提である。
さて、持株会社としては先行した一方の雄、
セブン&アイ・ホールディングスは、
二つの政策を出した。
イトーヨーカ堂が、
「ザ・プライス」という新業態を始めることと、
ファミリーレストランのデニーズが値下げすること。
ザ・プライスは、8月29日、現イトーヨーカ堂西新井店を、
改装し、新業態開発するもの。
約1000平米のディスカウント・タイプのスーパーマーケット。
これもダイエーが、かつてチャレンジした「トポス」に近い発想。
「トポス」といったらセブン&アイは「ノー」というだろうが、
改装店で業態転換するというのは、いわば常套手段。
アメリカでも10年から20年おきに、この手法への挑戦がある。
かつて、「フードラック」や「フードバーン」という店名の、
ディスカウントタイプが登場したことがある。
ラルフ、ボンズといったスーパーマーケットが試みた。
すべて失敗した。
なぜか。
ディスカウント店とは、
一言で言えば、
経費削減をどこまで
徹底出来るかにかかっている。
徹底とは、
①細かく
②厳しく
③続けること
イトーヨーカ堂は、徹底の会社だ。
しかし、ディスカウントタイプの会社ではない。
ここに問題がある。
ディスカウント店には、
場合によっては、「顧客無視」と誤解されても、
「低価格こそ顧客から歓迎されるものだ」という信念が
なければ続かない。
続かないということは徹底できないということ。
ラルフもボンズも、そしてダイエーも徹底できなかった。
イトーヨーカ堂にそれが出来るか。
一度、ディスカウント店を始めたら、
やめられない。
再び、通常店にしようとしても、
その店には拭い去ることができないおりのようなものが、
べたりとついてしまって、
それを取り去ることが出来ないからだ。
その店は、その企業の店舗としては、死を迎える。
従って、ザ・プライスは、
しばらく時流に乗って、
利益を出すかもしれない。
しかし、
新店で、このフォーマットが成功するか否か。
ここまで待たねば、本当の評価は出来ない。
何しろ、経費削減を徹底しなければ可能とならない商売だからだ。
イトーヨーカ堂にそれが試されている。
デニーズの値下げは、
これはプロモーションであるから、
一定の効果を出すに違いない。
しかしこのフォーマットも、
目先の値下げではなく、
フォーマットとしての根本問題を
解決しなければならないときを迎えている。
イオンとセブン&アイ・ホールディングス。
彼らは、もう、秋に向かって、
明日に向けた「事」を起こしている。
それだけは、確かだ。
<結城義晴>
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ザ・プライスは20年以上前、IYと言われた時代に赤羽で誕生したけれど結局巧く廻らすに失敗した業態。今回のザ・プライスはどこまで仕入れフォーマットから販売フォーマットにいたるまで、ものの考え方を切り換えているのか分らないけれど、あの優等生に出来るのだろうか?と疑問を感じざるを得ません。今までのようにIYやセブンからの出向者では廻しきれないことは過去の例を見ても明白だからです。
デニーズのディスカウント化、プロモーションにしても効率を追及しているのがIY。更なる冷食化の推進ならば悲しい限りです。お客様だって冷食と手作りの差はわかります。消費者の感性をごまかすような間違った方向や方法にならなければと、切に願います。
旬さま、ありがとう。
潮目が変わる時代、
様々な変化や変更が行われます。
ここで、判断を間違わないことなど、至難の業。
だから私は、こう思います。
まず、失敗を恐れない。
しかし失敗と気づいたら、
すぐさま引き返す。
これ、ユニクロの柳井正さんの流儀。
償却が終わった既存店の廃物利用を、
新業態開発と位置づけたり、
誉めそやしたりは、気をつけねばなりません。
しかし、ここから始めて、
新しい業態を確立してしまうこともあります。
九州のトライアルなど、
それをつかみかけています。
だから失敗か否かは、当事者と神のみぞ知る。
自分が一番よく分かっているものなのです。