ジジ、蝉の命を考える[日曜版]
ボクが気づいたように、
ヨコハマには、
秋がやってきました。
朝から、セミの声が、
はげしいけれど。
秋は、物思いにふけるとき。
ボクだって、考えます。
ボクは、寝ます。
よく、寝ます。
目があいてますが、
寝ています。
ボクの、不思議な特技。
起きたら、あくび。
これが、気持ちいい。
そして、歩いて行って、
定位置で、食べる。
きちん、きちんと、食べる。
水も、飲む。
食べたら、元気が出てくる。
ユウキヨシハルのお父さん、
「元気を出そうよ」って、
いつも、言ってる。
それから、家の中の家へ。
ボクの定位置のひとつ。
家の中の家の屋根に上って、
顔を洗う。
右手で、顔を、
くるくるとやるだけですが。
これも、きちんきちんと、
毎日、やります。
そして、正座して、
物思いにふける。
お父さんが、
教えてくれた。
セミは、夏が終わると、
死んでしまう。
秋の気配がすると、
死んでしまう。
土の中から出てきて、
そのあと1週間くらいしか、
生きることができないらしい。
ボクは、毎日、
寝て、食べて、顔を洗って、
生きている。
生きるって、
なんだろう。
死ぬって、
なんだろう。
いつまで、
生きるんだろう。
いつ、
死ぬんだろう。
ボクも、秋を感じたら、
そんなことを考えます。
生きてるセミの声をききながら、
死んだセミのことを思います。
<『ジジの気分』(未刊)より>