小売業125社最新決算ROA7%とイオン、テスコ日本株1円で取得
台風4号、今夕、
四国から関西に上陸の模様。
私はそれを逃れるように横浜ベイブリッジをわたり、
羽田空港からANA59便で、
北海道・新千歳空港へ。
2日間。
㈱とりせん
創業100周年記念式典行事に参加する。
1912年、アメリカのA&Pが、
「エコノミーストア」というフォーマットをスタートさせた年、
前原仙吉が食品卸売業の鳥仙商店を創業。
それからちょうど100年。
とりせんは100年企業である。
その目出度いお祝いの会。
目いっぱいお祝いしよう。
さて日経新聞『経済教室』
アルフレッド・マーシャル(1842~1924年)の第1回目。
イギリスの新古典派経済学者で、
「現代の経済理論の創始者の一人」。
J・M・ケインズの師匠として有名だが、
そのマーシャルが言葉を残している。
「クールな頭、温かい心」
”Cool head,but warm heart”
これは私の「心は燃やせ、頭は冷やせ」と同意。
私は坂口安吾生誕100周年のときに、
その追悼文章からいただいた。
京都大学教授の矢野誠さんは、
「クールな頭、温かい心」に関して語る。
「彼が伝えたかったのは、
安易なパターナリズム(父権主義)ではない」。
「大学教授として、
学生たちに『クールな頭』だけでなく
『温かい心』も身に付けてもらい、
卒業後、実業の場において、
身の回りで起きている生活苦の解決に
少しでも手を差し伸べようとする人たちを
増やしていきたい、というのが彼の考えである」
さて、日経の分析記事。
「小売業、経営効率が改善」
小売業125社の2011年度決算(12年2月期と3月期)を集計。
その結果、
総資産経常利益率(ROA)が、
平均7.0%となった。
これは前年度から0.5ポイントの上昇。
ROAはreturn on assetの略。
総資産に対する経常利益の比率で、
利益を稼ぐうえで資産をどれだけ有効活用したかを示す指標。
故渥美俊一先生も私も最も重視する指標だ。
総資本回転率と売上対比経常利益率の掛け算で、
ROAは算出される。
だから例えば総資本回転2、
経常利益率3.5%ならば、
ROA7.0%となる。
125社合計の総資産は3%、
経常利益は10%増加。
その結果が7.0%。
ROAが最も高いスタートトゥデイは38.6%。
前期より2.5ポイント低下。
第2位のメガネトップは27.8%。
前の期から9ポイント上昇。
第3位のあさひは24.8%、
第4位ABCマートは24.6%。
そして第5位ニトリホールディングス23.0%。
渥美先生の愛弟子のニトリはやはりすごい数字を挙げている。
以下第6位ユナイテッドアローズは5.4ポイント上昇し21.2%。
第7位ポイントはマイナス6.3ポイントだが20.1%、
第8位サンマルク17.8%、
第9位しまむら16.9%、
第10位良品計画16.2%。
なお、2012年度は小売業全体で、
6%の経常増益を見込んでいるという。
さてさてもう一つのニュースは、
昨日の午後から全国を駆け巡った。
イオンが、
撤退表明しているテスコ・ジャパンの株式を引きうける。
今秋、株式50%を1円で取得。
テスコ・ジャパンは現在、
首都圏に117店を展開。
日経に記事によると、
イオンは「持ち分法適用会社」にし、
「いずれ完全子会社化する可能性が高い」
赤字店舗が多けれど、
イオンの「まいばすけっと」の系列に加えようというもの。
まいばすけっとは、
東京・神奈川で約250店を展開する小型スーパーマーケット。
イギリスでのテスコ・エクスプレスをモデルとしている。
イオンは2011~13年度の中期経営計画で、
「大都市シフト」を新たな成長戦略としている。
その中核フォーマットがまいばすけっと。
売場面積150~200㎡、
生鮮・日配、加工食品・菓子、飲料、酒、日用雑貨など
約2000品目の品ぞろえ。
当面は、「テスコ」や「つるかめ」などテスコ・ジャパンのバナーはそのまま。
しかしやがては、
まいばすけっと、あるいはマックスバリュ・エクスプレスに、
変わると私は見る。
テスコが日本に進出したのは2003年。
当時のシートゥーネットワークを買収。
しかしこの組み合わせはよろしくなかった。
業績低迷は続き、昨年8月に撤収を表明。
様々な買い手を探したが、
結局、盟友イオンの手に渡ったということ。
テスコは海外進出が苦手な会社ではない。
むしろ成功事例を多く持つ。
それだけにいち早い撤退とイオンへの売却は、
テスコ自体の中期的なROAの面でも、
良い結果となるに違いない。
しかし日本のマーケットは、
テスコにしても対応不可能だった。
このことがなにより教訓的で、
しかも印象深い。
<結城義晴>