桃の節句の「ひな人形が怖い」と「自分の頭で考えろ!」
桃の節句。
上巳(じょうし)の節句という。
「上巳」は上旬の巳(み)の日の意味。
巳は十二支のヘビ。
だからもともとは、
3月上旬の巳の日の節句だった。
それがぞろ目の3月3日となった。
1月7日が人日(じんじつ)の七草の節句。
5月5日が端午(たんご)の菖蒲の節句、
7月7日が七夕(しちせき)の笹の節句。
そして9月9日が重陽(ちょうよう)の菊の節句。
草花の節句が1年に5回ある。
日本らしくて、とてもいい。
日経新聞巻頭コラム「春秋」が、
人形工房「ふらここ」のひな人形を紹介。
まるっこい輪郭につぶらな瞳。
みな「赤ちゃん顔」。
㈱ふらここの代表取締役は原英洋さん。
創業は2008年。
「ひな人形が怖い」
顧客が漏らした一言。
原さんの両親はともに人形師。
家業を継いで働くうちに、
気がついた。
ひな人形を選択する主体が、
祖父母から若い両親に変わった。
豪華絢爛よりかわいい系が好まれる。
職人たちは「迎合するのか」と大反対。
やむを得ず新しい会社をつくった。
以来、売上げは伸び続けた。
「子どもの健やかな成長を
願う気持ちは普遍。
時代に合わせて変化しつつ、
文化を次世代につなぐのが
役目だと思っています」
ふらここの社員は、
原さんをのぞく33人すべてが女性。
子の有無にかかわらず、
働きやすい職場づくりにも心を砕く。
いいコラムだ。
桃の節句も変わる。
時代は変わる。
それでいい。
仕事や商売は、
時代とともに変わる。
もちろん人間国宝の人形もいい。
両方あるのが豊かさであるし、
ビジネスチャンスは、
どちらにもある。
私はやはり爺の世代なのだろう、
オーソドックスなひな人形が好きだが。
さて、朝日新聞「天声人語」
朝日が大嫌いな人もいるし、
なんとなく好きな人もいる。
私は文章ひとつずつ、
是々非々で見ている。
「クレタ人は常に嘘をつく」とクレタ人が言った――。
有名なパラドックスだ。
発言を本当だと仮定すれば、
そう言ったクレタ人自身が必ず嘘をつく。
したがって「クレタ人は常に嘘をつく」との発言も、
本当ではなくなって、
はじめの仮定と矛盾する。
パラドックス。
この後は朝日らしく、
「センセイたちの発言は、
本当だと仮定しようか」
政治倫理審査会に出た安倍派の幹部たちの発言。
「パーティー収入の還付金が
政治資金収支報告書に記されていないとは
知らなかったと口をそろえた」
「とすると2022年、
安倍晋三会長の言葉は、
うわの空で聞き流したのだろう」
このとき安倍元首相は、
「不透明で疑念が生じかねない」と、
還流をやめる方針を決めた。
「のどから手が出るほど欲しい
政治資金が削られる」
「不透明とは? とたださぬはずがない」
その後、還流継続に方針は一転した。
「それでも不記載を知らなかったとすると、
派閥の会計を担った事務職員もずいぶんだ」
「違法行為であるとただ一人知りながら、
幹部には黙っていたことになる」
コラム。
「いやいや、全体に無理がある。
きっと最初の仮定が違うのだろう」
「センセイたちの発言をたどると
矛盾につきあたる。
政治不信が払拭されるどころか
深まった感さえある」
クレタ人は嘘つきか。
センセイたちは嘘つきか。
あのパラドックスは、
論理のあそびの世界だから面白い。
商人舎2018年10月号特集。
「嘘つき!?」マーケティング
会心の特集だった。
[Message of October]
自分の頭で考えろ!
デジタル時代に、
情報があふれる。
膨大なデータが手に入る。
定量調査情報はビッグデータ化する。
定性データもSNSなどから氾濫する。
両者はデジタル化し融合するかに見える。
その結果として、
人間の感情や顧客の心理も、
データ化することができると過信する。
そこに虚が生まれる。
短絡が起こる。
誤謬が生じる。
しかし私たちは記号化された情報を、
素早く、賢く、的確に読み取って、
有益なマーケティングをせねばならない。
そのためには自分の目で見て、
自分の耳で聞く。
そして自分の頭で考える。
それなくしては、
データという間接情報は活かせない。
伝聞情報は使えない。
とりわけ顧客商売のデータ活用は、
最後の最後の最後に、
人間のコミュニケーションが必須となる。
そのうえで自分の頭で考える。
複雑なデータをシンプルな脳で読み解く。
自分の頭で考え続ける。
今、日本の国会で行われている政倫審。
これも私たちが、
自分の頭で考えて、
結論を出さねばいけない。
そのパラドックスを見極めねばならない。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
ひな人形の話、保守的な業界だからと諦めるのではなく、保守的な業界だからこそ大チャンスがあるのだと教えられます。
吉本一夫さま
その通りですね。
保守的な業界こそ、
イノベーションの可能性があります。
イノベーションは顧客から始まります。
顧客が何を求めていのか。
どうしてもそれを忘れがちになるのが、
保守的ということでしょうか。