「マイナス金利政策解除」と小売業の「価格政策競争の本番」
日銀のマイナス金利政策が解除される。
利上げは17年ぶりである。
政策金利のマイナス0.1%が、
0〜0.1%程度に引き上げられる。
2%のインフレターゲットに対して、
「持続的・安定的に実現していくことが
見通せる状況に至ったと判断した」
ここまでの大規模緩和政策に対して、
「役割を果たした」
それでも、
「当面、緩和的な金融環境が継続する」
これを受けた東京株式市場。
日経平均株価は上がった。
終値は4万0003円60銭。
円相場は1ドル150円台まで下落した。
マイナス金利政策は、
金をあずける側が金利を払う。
異常な政策だ。
金融機関は当座預金を日銀にあずける。
その一部(現在は5%)に、
マイナス0.1%の金利がかけられる。
ばかばかしい預金だ。
だから金融機関は金を日銀に預けたら、
金利をとられる。
そこで金利が低くても、
日銀にあずけるよりも何らかの融資をする。
結果として低い金利での融資が進む。
これがマイナス金利の狙いだ。
2008年にリーマンショックが起こった。
そのあと通常の量的緩和では、
まったく事態が改善されない状況に陥った。
そこで12年7月にデンマーク中央銀行が、
はじめてマイナス金利政策を導入した。
14年6月に欧州中央銀行、12月にはスイス国立銀行。
日銀は黒田東彦前総裁が16年2月に導入した。
「黒田バズーカ」第3弾。
しかしそのマイナス金利政策の解除は、
正常化に向かう転換点となる。
これによって、
世界でマイナス金利を導入する中央銀行はなくなる。
日本の金融機関の基準金利は上がる。
変動型の住宅ローン金利には上昇圧力がかかる。
0.2%台などの超低金利で金を借りられた。
その環境は変わる。
一方、預金金利も上昇する。
当たり前の「金利のある時代」。
2022年は値上げラッシュの年だった。
主要食品メーカー195社では、
通年の値上げ品目数は2万5768品目に及んだ。
昨2023年はさらにそれが進んで、
累計で3万710品目となった。
一方、2023年の賃上げは、
平均妥結額1万1245円だった。
前年の22年は6898円で、
賃上げ率3.60%。
前年の2.20%に比べて1.40ポイント増。
今年もそれを上回る賃上げが予想される。
日本経済は、
物価と賃金が先行して、
金利が上げられた。
そして消費と経済は、
ダイナミズムを取り戻しつつある。
ポール・クルーグマン。
2008年度ノーベル経済学賞受賞。
ゼロ金利を超えたマイナス金利を日銀に提言した。
「金融緩和は、
人々の期待を変えないかぎり
効力を発揮しない」
「そして、期待を変えることは
簡単ではない」
黒田バズーカは、
人々の期待を変えたか。
植田新総裁の「マイナス金利解除」は、
人々の期待を変えるか。
小売業の価格政策も、
人々の期待を変えないかぎり、
効力を発揮しない。
そして低価格政策は、
このダイナミズムの中でこそ、
実は生きるものだ。
「金利のない時代」には、
低価格の効果は薄かった。
「金利のある時代」こそ、
価格によるポジショニング競争の本番である。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
お金の無価値化が進んでたステージからお金に値段のつくステージになったので、4Pがダイナミックに連携して機能し始めるイメージを持てるようになりました。
吉本さん
ありがとうございます。
同感です。
これまで11年、異常事態事態だった。
それ自体が異常だった。
これからです。
私たち自身が期待をもつことが大事です。