敬老の日の「人生は楽ではない・しかしそこが面白い」
Everyone, Good Monday!
[2024vol㊳]
2024年第38週。
9月第3週。
その第3月曜日は、
敬老の日の祝日。
太平洋戦争の敗戦から三年目の秋に、
兵庫県多可町が「としよりの日」を設けた。
それが国民の祝日となった。
今年、65歳以上の高齢者は3625万人。
最多記録が更新された。
朝日新聞「天声人語」
武者小路実篤を引用した。
雨が降った
それもいいだろう
本が読める
有名な言葉だ。
私は中学から高校のころ、
武者小路に嵌(はま)った。
「友情」「愛と死」「お目出たき人」、
「真理先生」「武者小路実篤詩集」など、
新潮文庫のほとんどを読み漁った。
私は勝手に「武者先生」と呼んで尊敬した。
学習院中等科で志賀直哉と親友になり、
東京帝国大学を卒業すると、
文学同人誌『白樺』を創刊した。
有島武郎、里見弴(とん)、柳宗悦なども誘って、
「白樺派」をつくった。
人道主義、理想主義を標榜し、
自ら理想郷「新しき村」を設立した。
自給自足の理想的な村の実践運動である。
そして92歳まで生きた。
私ももうじき
満八十五歳になる。
よくも生きていたものと思う
生きている事は嬉しいものだ
死ぬ事はいやなものだ
米寿を過ぎたころからは、
耳が遠くなり、手の震えも目立った。
それでも創作を続け、
死去の半年前、こう記した。
わたしはまだ生きている
本気になって生きている
嘘をついて生きてみたいとは思わない
真から本気になって生きてみたい
人生は楽ではない
そこが面白いとまあしておく
人生は楽ではない
人生は楽ではないから、
武者小路実篤は、
迷走し続けた。
そしてその迷走を、
率直に作品にした。
幸せな人だった。
私はその後、「白樺派」を卒業し、
「無頼派」に傾倒した。
とりわけ坂口安吾に。
その『エミール』から。
「もっとも多く生きた人間は、
もっとも多く年をかさねたものではなく、
もっとも多く生を感じたものである」
コラム子。
「生と死を考え続けた先達たちの姿は
力強く、そこはかとなく美しい。
彼らの大いなる励ましを受けつつ、
自らの老いもまた、
しずかに見つめてみたい一日である」
私も静かに一日を過ごした。
人生も仕事も楽ではない。
しかしそこが面白い。
この「楽ではない面白さ」こそ、
ルソーの言う「生を感じる」ことだ。
三連休の成果は上がったのだろうか。
仕事は楽ではない。
しかしそこが面白い。
彫刻家の平櫛田中。
「今日もお仕事、
おまんまうまいよ」
このあとの続き。
「びんぼうごくらく、
ながいきするよ」
楽な仕事は面白くはない。
生を感じることもできない。
では、みなさん、今週も、
生を感じたい。
Good Monday!
〈結城義晴〉
2 件のコメント
介護施設でのボランティアで、色々なおばあちゃんおじいちゃんと会います。そうすると、老いとどう向き合いどう受け入れていくべきかを、自然とよく考えさせられます。
現時点での結論は「生涯現役」ですが、老いていく中で、何の現役でいるのか、その中身をその時々の自分の状態に合わせて変えていく必要があって、それがなかなか難しいなと思っています。
そこをうまくやるには、とにかく好奇心を大切にして、興味あることにはどんどん手を出していくことかなと、今は考えています。
吉本さん、素晴らしいですね。
「生涯現役」―――。
自分の関心のあることで現役を続ける。
それが正解だと思います。
好奇心はそのよりどころになります。