イオン「ESGブランド調査」の首位とKKRクラビス会長の「履歴書」
「第5回ESGブランド調査」
イオンが初の首位。
日経BPの調査。
ESGは「環境・社会・企業統治」
その活動に対する企業イメージ。
2020年の調査開始。
昨2023年まで4年連続で、
トヨタ自動車がトップだった。
今回は6位だった。
このESGブランド調査は4部門で評価される。
⑴環境(Environment)
⑵社会(Society)
⑶ガバナンス(Governance)
⑷インテグリティ(誠実さ)
ブランド名を含む主要560社名を対象に、
2024年5月30日〜6月28日の期間に、
インターネット調査を実施して、
約2万1000人から回答を得た。
イオンは環境部門で1位だった。
イオン環境財団の活動は高く評価された。
個別項目では、
リサイクル、廃棄物削減に力を入れている、
プラスチックの使用削減など
資源の有効利用に努めている、
などで高い評価を得た。
イオンは全部門で10位以内に入って、
総合1位となった。
小売商業全体にとっても、
誇らしいことだ。
総合2位はソニー。
さすが。
昨年の20位から躍進した。
イオン同様に全部門で10位以内。
6位に下がったトヨタは、
型式指定の認証不正があって、
ガバナンス部門の評価が大きく下がった。
環境と社会、インテグリティの3部門では、
依然、ブランドの強さは健在だった。
日本最大企業にして、
世界最大の自動車メーカー。
イオンの今回の首位は、
トヨタから恵んでもらったようなものか。
それでも「いい会社」という評価は、
とてもうれしい。
さて日経新聞「私の履歴書」
今月はヘンリー・クラビス。
KKR共同創業者兼会長。
1944年、ニューヨーク生まれ。
名門コロンビア大学でMBAを取得後、
投資銀行ベア・スターンズに入行。
1976年、親友のジョージ・ロバーツ、
ジェローム・コールバーグと、
3人で投資会社を興した。
コールバーグ・クラビス・ロバーツである。
頭文字をとってKKR。
株式の公開買い付けで大胆な買収戦略を展開。
レバレッジド・バイアウト(LBO)と呼ばれる。
1980年代には、
ウォールストリートを象徴する企業となった。
1989年、RJRナビスコを買収。
これは史上最大のLBOとして知られる。
西友の筆頭株主は今、KKRである。
西友はウォルマートに買収され、
2021年に今度は楽天とKKRが、
ウォルマートから西友株を取得。
その後、楽天はその持ち株をKKRに売却した。
今、KKRが85%、ウォルマートが15%。
つまり日本の小売業とも深い関係をもつ。
そのクラビスは言う。
「私たちは資本主義の力を信じている。
資本が自由に動くことで
企業も人々も繁栄する」
「企業は世の中を変える力を持っており、
そんな企業への投資は
世界が対応を迫られている
脅威をも解決できる」
KKRは買収ファンドの草分けだ。
現在はプライベート・エクイティ(PE)とか、
「代替投資」と呼ばれる。
セブン&アイがイトーヨーカ堂を売却する際、
エクイティファンドに声をかけた。
そこから今回の件が漏れた。
「企業を買収、改革して価値を高める。
幹部も社員も自社株を持ち、
投資が成功すれば誰もが豊かになれる」
創業期の企業ならばそれもできる。
しかし超巨大な企業となると、
社員は自社株を持てなくなる。
それでもクラビスは強調する。
「ファンドにお金を出すのは、
公的年金基金や財団、近年は個人に及ぶ。
私たち自身個人的に、
あるいは会社の自己資金で投資している」
アメリカ人には年金制度がない。
だから株式投資が年金の機能を果たす。
個人の責任において。
「共に所有する」が、
KKRの哲学の核心にある。
クラビスとロバーツは共同創業者であり、
いとこ同士である。
どちらも祖父たちが、
ロシア帝国下の国々から移民してきた。
クラビスの祖父はベラルーシ、
ロバーツの祖父はラトビア。
クラビス家は小売業を、
ロバーツ家はホテル経営をした。
そしてどちらにも共通する哲学があった。
「自分がしてもらいたいように、
人にもしてあげなさい」
JCペニーと同じ「ゴールデン・ルール」である。
これがKKRの風土の根幹をなす。
KKRが人を採用するとき、
どこを見るか。
採用される候補者が、
夕食でウエーターにどんな態度を取るのか。
タクシーの中で運転手にどう接するのか。
ウエーターや運転手は、
二度と会わない人かもしれない。
だがそのような人にどう向き合うのかが大切だ。
日々の行動にこそ、人間の本当の性格は表れる。
クラビスはそう言う。
「ハゲタカファンド」などと揶揄されるが、
だからこそクラビスたちは、
「ゴールデンルール」を大切にする。
日経の「私の履歴書」の連載に登場する狙いは、
ここにあるのかもしれない。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
理念は常に形骸化のリスクがあります。それを何度でも甦らせることのできる企業が、生存権を得ています。
理念を語り続けることのできるリーダーを、継続的に育成することは、本当に難度の高い作業だと思います。結城さんも言われていた記憶があるのですが、その点は、ファミリー企業にアドバンテージがあるように思います。
理念や精神はすぐに形骸化します。
言葉は残っても、その意味が伝承されにくい。
クラビスさんのように繰り返し繰り返し言い続けることですね。
それしかない。