商人舎11月号特集「会社は誰のためにあるのか」と野渡毅之新社長
Everyone, Good Monday!
[2024vol㊻]
2024年第46週。
11月第3週。
表紙デザインは七海真理さん。
そのハトの意味は?
わかりますよね。
[Cover Message]
日本最大の小売企業セブン&アイ・ホールディングスが買収をかけられている。日米のコンビニの経営状態も芳しくはない。会社は苦境にある。イトーヨーカ堂のハトは荒海の中で、ノアの箱舟に乗れるのか。セブン&アイは多くの傘下企業を三つに分割して乗り切ろうと考えている。世界に冠たるコンビニのセブン-イレブン・コーポレーションと、イトーヨーカ堂やヨークベニマルを中核とするコングロマーチャントのヨーク・ホールディングスと、セブン銀行の金融関連企業とに。
この状況は「会社は誰のためにあるのか?」というテーゼを考察する材料として最適である。買収しようとする者にとって会社は、売り買いの対象たる「商品」である。経営する者にとって会社は、マネジメントし、社会貢献する「組織体」である。働く者にとって会社は、収入を得つつ人生を全うし、働きがいや生きがいを見つけ出す「職場」である。顧客にとっては、生活を支えてくれる「店」である。そんな多様な存在である会社とは何か。誰のためにあるのか。
前略 ヨーカ堂のみなさんへ
会社は大変なことになっていますね。
ご心労、お察しします。
それでもお客さまのために、
毎日の商いを怠りなく続けてください。
お願いします。
みなさんの会社の創業者・伊藤雅俊さんには、
私自身、大変お世話になりました。
勉強もさせていただきました。
1979年、伊藤雅俊さんが、
日本チェーンストア協会第三代会長のときに、
私は密着取材をしました。
そして一冊丸ごとの「販売革新別冊号」をつくりました。
「チェーンストアフェア’79全記録」というタイトルでした。
この中で伊藤さんは求めている人材像を語りました。
第1は人間的な温かみがある人。
第2は地道に物事に取り組み、真正面から挑戦できる人。
第3に誠実で正直な人。
伊藤さんは付け加えました。
「チェーンストアを別の言葉で言えば信用業です」
伊藤さんはお取引先との四つのルールを、
社内に徹底しました。
⑴ 対等の立場
⑵ 約束は必ず守る
⑶ 接待は受けない
⑷ 返品しない
今も、これからもイトーヨーカ堂にとって、
とても大切なことです。
東日本大震災のあと、
伊藤さんとお話ししました。
「潮目が変わりました」
どういう潮目の変化ですか?
「自分たちの力が及ばないところで、
大変化が起こります」
すると新型コロナが世界を席巻しました。
預言者のような伊藤さんでした。
今、イトーヨーカ堂にも、
自分たちの力が及ばないところで、
大きな変化が起こっています。
その変化にも誠実に、正直に、
真正面から挑戦してください。
そして温かい商人でいてください。
伊藤雅俊さんのご遺志を継いでください。
ご健闘を祈ります。
いつまでも応援しています。 草々
特集はセブン&アイをケーススタディとして、
「会社は誰のためにあるのか?」を考察した。
井坂康志さん、島田陽介さん、
そして小島健輔さん。
それぞれに深い考察を展開してくださった。
結城義晴が書いたのは、
[特集のまえがき]
「産業論理の会社と商業論理の会社」
[特集のあとがき]
「会社を顧客と従業員のためとするには」
是非、読んでください。
それから特別企画。
チェーンストア半期の通信簿
中間決算の成績に岡目八目で
「S・A・B・C・D」をつける。
悪しからず。
これまでストレートに、
成績をつけたことはなかった。
決算特集や中間決算特集で、
それなりのことを書いても、
はっきりと、きっぱりと、
この会社はSだ、こちらはDだ、
などとは書かなかった。
それをやった。
「勝手な通信簿で、悪しからず。
しかし通信簿は奮起を促すためのもの。
了解してほしい」
そして特別研究。
小売業「DX」NOW!
「後進の先進性」を活かす商売のヒント
デジタル・トランスフォーメーションは、
急速に進んだ。
それでも日本は、そして日本の小売業は、
まだまだ遅れている。
そこで「後進の先進性」「後発の優位性」を活かして、
商売と仕事の変革を成し遂げることができる。
その最近のチェーンストアのDXのネタを網羅した。
資料的な価値もあります。
今月も提案性の強い雑誌となった。
先生方、デザイナーの皆さん、
そして編集部のみんな、
ありがとうございました。
さて今日は 午前中に来客。
お会いしたのは、
11月11日11時となった。
ユースキン製薬㈱の野渡和義会長、
そして10月25日の株主総会で、
代表取締役社長に就任した野渡毅之さん。
ほんとうにおめでとうございます。
未来は明るい。
伝統の基幹商品「ユースキン」。
ハンドクリームとして圧倒的な人気だ。
そこに新しい柱が加わった。
「yuskin hana」だ。
それらが牽引して、
過去最高の売上高と最高益を出した。
野渡会長は聖光学院中学・高校の、
器械体操部の3年先輩。
ほんとうにあこがれの先輩だったし、
大変お世話になった。
その野渡先輩は39歳で社長になった。
それ以来、75歳の今日まで、
36年間、トップの座を守り、
会社を成長させてきた。
毅之新社長も39歳。
大いに期待しよう。
私はインディペンデントな、
ファミリービジネスがいいと考えている。
小売業に辣腕の専門経営者がいる会社もいい。
しかし非上場のオーナーシップ経営も強い。
ユースキン製薬はそんな会社である。
いいバトンタッチができて、
野渡先輩も穏やかな顔つきだった。
最新刊の『チェーンストア』をプレゼント。
「野渡毅之様 恵存」
「恵存」の意味は、
「お手元に置いていただければ幸いです」
30代の若い社長。
それだけで、いい。
あとは「艱難が商人を鍛える」
イトーヨーカ堂の人たちも。
では、みなさん、今週も、
艱難を喜びとしよう。
Good Monday!
〈結城義晴〉
2 件のコメント
私自身は、ある責任ある立場にいた時は、雇用責任を第一優先にしていました。それが、顧客満足にもとつながると考えていました。株主の優先順位は、正直、低かったです。
後悔はしていませんが、正解だったとも思っていません。未だによくわかりません。
雇用責任を第一優先にしていたのは、
とても素晴らしいことです。
それが株主を含めたすべてのステークホルダーのためになると、
最高なのですが。
私も商業界の経営者の時代には、
なかなか理想通りにはできませんでした。