「何事も、ひとつの手法に頼りたいという誘惑は退けなくてはいけない」
3月の「街角景気」の現状判断指数。
景気の実感を示す内閣府の景気ウオッチャー調査。
前月比9ポイント上昇で、3カ月連続アップ。
しかし指数自体は28.4と低次元であることに変わりない。
先の好況のピーク2005年夏には50台後半を示した。
企業経営者や小売店主ら約2000人の回答だから、
一部の参考意見といった感じ。
これに対する内閣府の判断コメントは、
「景気の現状は極めて厳しいものの、
悪化のテンポがより緩やかになっている」。
一方、2月の国際収支の経常収支は、
前年同月比55.6%マイナス。
1兆1169億円の黒字だが、1月はこの収支が13年ぶりの赤字だった。
輸入額は、前年同月比44.9%マイナス。
これは過去最大の減少率だった。
輸出額も前年同月比50.4%マイナス。
これも過去最大の減少率だった。
輸出動向の中では、自動車が前年比7割減。
日本全体の景気は、輸出入がひどく落ち込んで、
とどまる気配はないが、
「街角景気」は、そんなに悲観的ではない。
輸出に頼った日本経済を、内需の掘り起こしで立て直す。
だから「小売流通業・サービス業が日本を救う」。
私の持論。
もちろん、2008年度自動車販売伸び率第一位のプリウスに代表されるように、
日本のものづくりの技術力はやがて、
再び輸出を隆盛させる可能性を持っていると私は思う。
ものづくりの技術とは、工業技術だけでなく、
農林水産業技術から、
環境技術、マネジメント技術まで、
広範なものだ。
その技術水準において、
技術イノベーション力において、
私たちはもっと、自信を持ってよい。
例えば、先日のコーネル大学RMPジャパンの実習をさせてもらったサミット。
そのレイバースケジューリング・オペレーション。
これは、世界の小売業の技術力の中でも特筆すべきものだ。
セブン-イレブンのシステムや技術も、
ユニクロと東レのヒートテック技術も、世界に誇ることができるものだ。
私のいう「知識商人」とは、
そんな技術を持つ人材、
そんな技術開発力を備えた人材である。
だから大げさなようだが、こうなる。
「知識商人が21世紀の日本を救う」
そしてその根本にあるのが、今月の商人舎標語。
「差異が価値を生む」
さて昨4月8日は、夕方から、東京・広尾。
「分とく山」
2階に上がったところに「商」の書。
思わずシャッターを切ってしまった。
わが「商人舎」の社名にも「商」の字があるが、
なかなかうまく書くことができない。
難しい字。
この字、とても、よい。
精神力が表れている。
この「分とく山」で、懇親。
㈱アイドマ代表取締役の蛯谷貴さん、
同東京営業本部長の川勝利一さん。
川勝さんは、ご存知「商人舎エグゼクティブ・ディレクター」でもある。
その川勝さんのお引き合わせで、
蛯谷さんとは初対面で、すぐに意気投合。
蛯谷さんは、富山の人。
20代で創業した苦労人だが、
「アイドマ」の社名が示すように、
スーパーマーケットのプロモーションを専門とする。
私と同学年の4月1日、早生まれ、未年。
「チラシ中心の販促法が、変わってくる。
インターネットへの傾斜が増える」
この点は同意見。
しかし、ではインターネットがすべてになるのか。
私は、思う。
「何事も、ひとつの手法に頼りたいという誘惑は、
これを退けなければならない」
顧客は便利さを求める。
「例えば、かつては100%に近い顧客がチラシに頼った。
しかし現在は、例えば60%の客がチラシを見、
40%はインターネットを見る。
そして大事なことは、30%の顧客が両者を活用する。
全く情報を持たずに来店する顧客も多い」
その意味では、多様化・個性化している。
商品や消費行動の多様化・個性化だけでなく、
購買行動の多様化・個性化が進む。
販促の多様化や個性化も、
「差異が価値を生む」の考え方につながってくる。
ウォルマートのプロモーションは、まさしくそんな次元にある。
蛯谷さん、川勝さんとそんな議論をして、
気分のいい夜だった。
<結城義晴>