米国経済「財政の壁」とコストコの7つの定休日、今年末の無呼吸泳法
横浜・東京は、
ほんとにいい天気。
あ~あ、いい季節。
その澄み切った秋の空気を吸って、
朝から池袋の立教大学へ。
蔦の絡まる本館のアーチ。
潜り抜けると、光のなかに第一食堂。
今年、改装なった本館は、
やはり立教の象徴。
キャンパスの木々も、
色づいてきた。
私の研究室があるマキムホール。
5階に上がると、中庭が見える。
今日は、結城ゼミ。
来週月曜日が修士論文の仮提出期限。
みんな切羽詰った段階で、
仲間の研究に意見を投げる。
チームワーク方式が結城ゼミの特長。
午前中は全員の報告とディスカッション。
第一食堂で昼食をとって、
午後は指導教授の私との個別討議。
夕方には、あたりに闇が迫る。
それでも池袋の空は澄み切っている。
マキムホール12階から見下ろす、
東京の北側の景色。
そして宵闇迫る立教のキャンパス。
秋の陽はつるべ落とし。
本館にライトがともる。
実り多き秋の一日。
さて、アメリカ合衆国。
バラク・オバマ大統領再選なるも、
開票日の翌日に、
ニューヨーク・ダウ平均株価は312ドル安。
これは今年最大の下げの記録。
いまだに、1万3000ドルの節目を割り込んだまま。
その理由が、「財政の崖」。
リーマン・ショックの後、
米政府は景気を刺激するために、
公共事業などを増やした。
それによって財政赤字は増大。
そこで赤字削減策を決定。
来年から国防費など政府の歳出を、
法律で強制的に減らす。
これによって、
景気悪化が懸念されている。
さらにもうひとつ、
ブッシュ前政権から続けてきた所得税などの減税措置が、
2012年末に期限を迎える。
事実上の増税と歳出削減のダブルパンチ。
その景気悪化は、まるで、
「切り立った崖から突き落とされる」イメージ。
それが「財政の崖」。
米連邦準備制度理事会バーナンキ議長の命名。
来年の2013年、
減税停止と歳出削減の合計は、
5600億ドル(約45兆円)。
これは日本の1年間の新規国債発行額に匹敵。
日本の国債発行額もすごいが、
しかしこの額に、
ウォルマートの年間予算が迫る。
それもすごい。
この5600万ドルによって、
来年前半で米国経済は3%近いマイナス成長と予測される。
そして、アメリカ経済の減退は、
まず日本経済を、
そして世界景気を減退させる。
「財政の壁」は来年に向けた消費マインドにも影響する。
それがこの11月12月の日本の消費にも、
打撃を与えている。
私は年末年始まで、
「無呼吸泳法だ」と言っている。
ただし「崖」を避ける方法もある。
それはてっとり早く、
米国の減税を延長させること。
しかしオバマ政権は、
富裕層向けの減税延長はやめる方針。
負けたロムニ―の共和党は続けるべきだと反論。
歳出削減に関しては、
オバマ政権は社会保障費を減らすのに慎重。
ロムニーの共和党は国防費減縮に抵抗。
どちらにしても歳出削減は実現されにくい。
年末年始、アメリカの経済は低迷。
それを受けて日本も停滞。
このことはしっかりと認識しておかねばならない。
ただし、ガツガツとするばかりでもいけない。
余裕を持った企業もある。
例えばアメリカのコストコ。
ニューヨーク・マンハッタンのイーストリバー・プラザ。
コストコはいつも、押すな押すなの大盛況。
そのコストコは、定休日が多い。
第1は、正月1日。
第2のイースターは、復活祭。
春分の日の次の満月の週の日曜日。
コストコはこの日曜日にも休業する。
第3のメモリアルデーは、
戦没者記念日。
5月最終月曜日。
第4はのインディペンデンスデー。
独立記念日の7月4日。
第5はレーバーデー、労働者の日。
9月第1月曜日で法律で定める休日。
この日もコストコは休業。
第6はサンクスギビングデーの感謝祭。
11月第4木曜日。
日本でいえば、勤労感謝の日だが、
この日も定休日。
そして最後にクリスマスの12月25日。
この日まで定休日。
「無呼吸泳法」と言っても、
コストコにはビジネスモデルの優位性という余裕がある。
「不可能を可能に変える」ナゲット・マーケットにも、
サービス残業などない。
だからたった12店舗の企業でありながら、
FORTUNEの働きがいのある企業上位にランクされる。
「あちらも立ててこちらも立てる」
私がずっと言い続けている「オクシモロン」。
「二律背反」の困難な仕事に、
今年の冬には立ち向かわねばならない。
こんな時の基本姿勢。
「手持ちの道具で、
ケース・バイ・ケースで、
一歩一歩」
そう、ピーター・ドラッカー先生。
「一気呵成に異常値が出せる」
労働基準法を大きく無視して。
こんな短絡的な作戦は、
長くは続かない。
つまり本当の「無呼吸泳法」ではない。
厳しい年末が待っている。
いまから正統派の「無呼吸」に慣れておくべきだ。
では、良い週末を。
< 結城義晴>