結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年06月22日(月曜日)

日経新聞「春秋」の「業界と業態」の混同に思う

Everybody! Good Monday!  

2009年6月の第4週。

昨日は「父の日」。
そして1年で一番、日照時間が長い夏至。

それなのに、全国的に雨模様。

今週は、こんな具合に続き、
そして暑い7月に入っていく。

夏至から真夏への継ぎ目。
それが今週。

さて、日本経済新聞の一面最下段のコラム。
「春秋」。  

朝日新聞のコラムがもっとも有名で「天声人語」。
読売新聞は「編集手帳」

今日の「天声人語」は、
土器づくりについて考察。  

そして柳宗悦の手仕事の値打ちを説く言葉を引いてまとめた。
「そこには自由と責任とが保たれます。
そのため仕事に悦びが伴ったり、
また新しいものを創る力が現れたりします」  

時事的テーマが見つからず、
コラムニストの体験話。

今日の「編集手帳」は、
エコポイントを取り上げた。  

「ゴミのリデュース(削減)、中古品のリユース(再利用)、資源のリサイクル」
「三つのR」の精神と「エコ」を引き合いに出して、
エコロジーはエコノミー(経済)を支える二つ目の「エコ」と表現。
その上でこう語る。
「でも『R』と違って三つ目はない方がいい。
特定業種の『エコひいき』は」  

エコポイント商品が自動車・家電などに集中していることへの皮肉。

さて、今日の「春秋」は、
「下取りセール」を取り上げた。  

先週の週刊『エコノミスト』に「引き算のマーケティング」と題して、
私も短い記事を書いた。
(もちろん「春秋」よりもずっと長いが)  

「春秋」のイントロダクションは、こう入る。
「百貨店にしても、スーパーマーケットにしても、
消費者にモノを『売る』のが本来の仕事」  

「そんな大手小売各社が今年、世に放ったヒット企画は、
消費者からモノを『買う』ことだった」

途中で、電通の上條典夫さんの『ソーシャル消費の時代』が出てくる。
「いまの生活者は消費に『複合的な満足感』を求めている」  

最後は「売り手の知恵比べは続く」と終わる。

語っている内容自体は、まあ一般的。

しかし、冒頭の言葉遣いが私には、とても気になった。

「百貨店」「スーパーマーケット」と記されている。
しかし、本来の「スーパーマーケット」は、
実は「下取りセール」をしない。   

「下取り」は、
衣料品や住宅関連品で展開されているマーケティング手法である。

したがってこのコラムニスト氏は、
「スーパーマーケット」を、
「総合スーパー」の意味で使っている。

この認識の違い。

このコラムでは「スーパー」と語る方が、
内容に対してはむしろ正確だったはずだが、
筆者は、正確な言葉づかいをしようと考えて、
「スーパーマーケット」という言葉を使った。

一般紙は、「業界」をひとくくりにして、
その上で「大手・中堅・中小」とランク分けする。

大手メーカー・中堅メーカー・中小メーカー。
大手問屋・中堅問屋・中小問屋。
大手スーパー・中堅スーパー・中小スーパー。

「メーカー業界」は巨大だから、
「食品業界」「アパレル業界」等々と細分化される。
それに「問屋業界」
「スーパー業界」
「百貨店業界」
「コンビニ業界」

ここには、業態やフォーマットの発想がない。
あるのは業界発想。  

専門ジャーナリズムではないし、
この看板コラムを順番に書いているのは、
数名の論説委員というベテラン記者だから、
仕方ないのかもしれないけれど、
少なくとも日経新聞には、
「業態と業界」の違いは、
理解してほしいものだと思った。

今日、二つの重要指標が発表される。
日本フランチャイズチェーン協会から、
「5月の全国コンビニエンスストア売上高」。  
同時に、日本チェーンストア協会から、
「5月の全国スーパー売上高」。  

日経のコラムニスト氏は、
この日本チェーンストア協会を日本の「スーパー」の代表と考えている。

しかし『商業統計』でも明らかなように、
日本の総合スーパーの年商は平成19年で7.4兆円。
食品スーパーの年商は17兆円。
すなわち世界的に「スーパーマーケット」と呼ばれている業態が、
最大の小売業態。

くどいようだが、そのスーパーマーケットは、
「下取りセール」をやろうにも、
顧客から「買い戻す」ような商品を売っていない。

コーネル大学は、
「総合スーパー」を「ハイパーマーケット」と呼称する。  

私もこの意見には大賛成だし、
ヨーロッパやアメリカを見ていると、それがよく分かる。
ウォルマートの中心フォーマットは、
カルフールと同じ「ハイパーマーケット」であることに間違いはない。

従って、今日の「春秋」の出だしはこうなる。
「百貨店にしても、ハイパーマーケットにしても、
消費者にモノを『売る』のが本来の仕事」

そして消費不況の影響に直撃されている二つの業態だから、
「下取りの引き算のマーケティング」を展開しているということに、
結論は結び付けられるはず。

「スーパーマーケットは主に食品を売る店」  
この正しい認識を、
定着させていかねばならない。

月曜の朝から、少し、力こぶ。

Everybody! Good Monday!  

<結城義晴>  


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