クルーグマン「アベノミクスの肯定」と「小売サービス業が日本を救う」
昨日のブログで、
㈱ヤオコー副社長・川野澄人さんに触れたら、
今朝の朝刊各紙で、4月1日付、
代表取締役社長就任の報道が流れた。
もともとは日経新聞がスクープして、
それをヤオコー側は否定していたというか、
積極的に肯定していなかったが、
正式に決定し、発表。
流れたニュースは、
覆水盆に返らず。
すぐに決定し、表明したほうがいい。
今朝の新聞報道では、2月21日に、
㈱ユニーグループ・ホールディングスが発足し、
代表取締役社長に中村元彦さん、
代表取締役会長に前村哲路さんが就任。
中村さんは㈱サークルKサンクス社長、
前村さんは㈱ユニー社長。
その子会社のユニー代表取締役社長には佐古則男さんが就任。
中村さん、53歳、
佐古さん、55歳、
前村さん、63歳。
トップマネジメントのこの年齢構成は、とてもいい。
ユニーグループはリージョナルチェーンとして、
しっかりした基盤をつくることが一番いい。
私は勝手に考えている。
今後の手腕に期待したい。
何しろ、イオン、セブン&アイ・ホールディングスに次ぐ、
第3の存在なのだから。
さて、昨日は『食品商業』の特集のタイトルを、
ちょっと辛口で評論したが、
ライバル誌の『チェーンストアエイジ』最新号は、
「商品こそすべて」のタイトル。
実にわかりやすい。
しかも正しい。
ただしわかりやすくて、正しいのが、
雑誌としていいかというと、
これも全面的に肯定はできない。
何かひっかかるものがほしい。
時代の潮流を感じさせる要素が必要だ。
アカデミズムの論文では「新規性」といったりする。
「商品こそすべて」には、
それがない。
私の持論。
難しいことを易しく、
易しいことを面白く、
面白いことをより深く。
私の師匠でもある林廣美先生から教わった。
しかし、面白く、深くと考え過ぎて、
間違ってしまったら、とんでもない。
『チェーンストアエイジ』の特集には、
二人の商品本部長が登場。
セブン-イレブン・ジャパンの鎌田靖さんと、
関西スーパーマーケットの柄谷康夫さん。
柄谷さんは、コーネル・ジャパン奇跡の第2期生。
その後に平和堂、ハローデイ、マルエツ、フレッセイなどのケーススタディ。
これもわかりやすい。
現在の私など、こういった生の情報やコメントがありがたい。
編集部などが変な注釈や解説、分析をつけると、
かえって事実が分かりにくくなる。
もちろん編集部がタッチせず、
ライターにお任せの原稿などは、
あまり読みたいとも思わない。
そう言えば、故渥美俊一先生も、
事実報道の重要さを強調していた。
さて、第96代の安倍晋三首相。
「アベノミクス」が論議にでる。
1981年1月に大統領に就任したドナルド・レーガンの政策を、
「レーガノミクス」と呼んだ。
レーガンは大根役者だったなどと揶揄されるが、
現在もアメリカ国民から絶大なる人気を得ている。
その後、ビル・クリントンの「クリントノミクス」や、
テキサス州知事のリック・ペリーの「ペリノミクス」など、
「〇〇ミクス」という言葉が使われ、
今回、「アベノミクス」。
この言葉が出てきたことだけでも、
高評価のスタートと判断できる。
日経新聞が『国際』欄で、
「『アベノミクス』影響注視」の記事。
「円安で輸出競争激化、余剰マネー流入、
中韓など警戒強める」といった内容。
ニューヨーク・タイムズの社説は、
「ゾンビ(死に体)企業の退場、
農業補助金の削減、
移民受け入れの拡大」
こういった抜本的構造改革によって、
需要の拡大に取り組めるか否かを問う。
ここでいう「ゾンビ企業の退場」という考え方が、
中小企業金融円滑化法の打ち切りを推進している。
しかし、最後には国内需要の拡大ができるか、
公共投資を需要につなげることができるのか。
これが一番大事な視点。
この記事の後に、
ポール・クルーグマン教授が出てくる。
プリンストン大学のノーベル経済学賞受賞者。
このブログでもよく出てくる「インフレ・ターゲット論者」。
日本の経済・金融政策に辛口の発言を繰り返してきた。
ニューヨーク・タイムズ紙電子版のブログでは、
「現時点の結果は完全に肯定できる」。
これは、うれしい。
しかし「安倍氏は経済への関心が乏しく、
正統派の議論を無視している」とも分析。
正統派議論とは「国債増発による金利急騰を危ぶむ」もの。
わかりやすく言えば、これ。
「インフレは歯磨きのチューブのごとし。
出し過ぎると戻しにくい」
イギリス中央銀行政策委員を務めたアダム・ポーゼン氏も、
「日銀に圧力を掛けて
円高是正やデフレ脱却を目指す手法は
正当化できる」
アベノミクス、大いに期待したい。
しかしクルーグマン教授の指摘にある「正統派議論」も、
注目しておきたい。
そして内需の活発化において、
小売業やサービス業、消費産業が、
大きな役目を担っていることを、
あらためて強調しておきたい。
年末も正月も、その後も、
働き続け、店を維持し続けている商人たちは、
自らの顧客を喜ばせ、会社の収益を支えているだけではなく、
日本経済の主役の一員である。
クルーグマン教授は、
アメリカ国内に対して言っている。
「小売りサービス業の生産性が上がらねば、
国民の生活は豊かにならない」
それは日本の小売サービス業においても、
まったく同じことである。
「小売サービス業が需要を創り出さない限り、
日本の経済の復活もない」
今から5年前、
㈱商人舎設立の記念講演の結城義晴のテーマ。
「小売サービス業が日本を救う」
アベノミクスが展開されるなかで、
これは5年前よりも、ますます重要になってきている。
さて最後に、今日の横浜の商人舎オフィス。
午前中に気象予報士の常盤勝美さんが来訪。
ブログ「常盤勝美の2週間天気予報」は好調。
「ウェザー・マーチャンダイジング」の今後の課題について、
私の考え方を話した。
常盤さんがそれをやってくれたら、
小売業・サービス業の成果は格段に大きくなる。
常盤さんはその一番の担い手。
期待したい。
午後には、USP研究所所長の當仲寛哲さん。
當仲さんの情報システム改革手法は、
サービス業・小売業にも広がって、
飛躍的に生産性を上げつつある。
當仲さんの仕事も、
日本経済の活性化に大いに貢献している。
「今日も一日、優しく、強く」
今年の商人舎標語を噛みしめつつ、
今日が終る。
ありがたい。
〈結城義晴〉