「流通の未来を自分たちでつくる会」と「虫・鳥・魚の目」「心の目」
サッカーの国際親善試合キリン・チャレンジカップ。
日本代表がラトビア相手に3対0で快勝。
国際サッカー連盟ランキングは、
日本21位、ラトビア104位。
負けるはずがないとは思っていても、
国際ゲームは何が起こるかわからない。
今年最初の試合で、
気分よくファイトしていたし、
その勝ち方もよかった。
国民に希望を与えてくれる勝利だった。
こういったことは、
消費や景気のマインドにも、
いい影響が出る。
いいぞ、いいぞ。
そんな気分になってくる。
それが大切だ。
さて糸井重里の『ほぼ日』。
その巻頭言の「今日のダーリン」。
「人間に、上等も下等も、上品も下品もない。
と思いたいけれど、『なくはないよなぁ』とも思います」
これが糸井重里の問題意識。
「ただ、他人に『品格』を要求したり、
下品だの上品だの品定めしようとするというのは、
なんとも品のいいことではないような気がします」
「品格」というのは、
本当に難しい概念だし、
難しい行為である。
「人は、どこで生まれて、
どんな育ち方をしてきたかによって、
行動やら物腰やら価値観やらが変わってしまいます」
これは仕方のないことだと、
私も思う。
しかし。
「『品格』のある生き方をしている人が、
別の場所で生まれて、別の育ち方をしていてもなお、
その『品格』であったかどうか、
それを、『自身に問いかける』ことこそが、
ほんとうに大事なことなのだと思います」
すべてを失って、
生まれ変わっても、
私たちには品格があるのか。
これこそ人間の「アイデンティティ」である。
糸井さんは結論づける。
「あっちのほうがだの、こっちがややだの、
そんな比べっこするような上品下品を、
いったん抜け出してしまった地平で、
ぼくにとって『上等』に思えるのは、
やっぱり、ものごとを平らに見ている人かもしれません。
それは、上下を超えて、上という気がします」
公平、公正に、
全てを評価する。
それが「品格」となる。
私も賛成。
人間のアイデンティティにかかわることだからである。
個人的に、恣意的に、独断で判断することなく、
ものごとを「平らに見る」。
私も「平らに見ること」が最も重要だと考えるものだが、
だとすれば、個人的・恣意的・独断は、
まったく信用できないことになる。
ノーベル賞やアカデミー賞、
日本文学の芥川賞・直木賞、
どんな賞も複数の客観的判断で決定される。
それは「平らに見る」ことを貫くためだ。
それが「品格」ある選考であることを保証する。
そしてそれが人類が考え出した民主主義の大原則である。
さて日経新聞に、
「小売業、値下げ広がる」の記事。
「えっ」という感じ。
自民党政権に転換し、
日経平均株価は1万1447円。
円は1ドル94円。
消費は回復、
デフレ脱却。
そんな空気の中、
「値下げが広がる」。
まず「無印良品」の良品計画。
2010年12月以来、2年ぶり。
対象は同社の全取扱品7500品目中、
食器や雑貨など約200品目。
値下げ幅は、1~3割。
なぜか。
良品計画の認識。
ニトリホールディングスなど競合に比べ、
消費者には割高に映っていると判断。
その兆候は、
2012年4月以降続く既存店客数前年割れ。
だから「利益を削ってでも新規客を増やしたい」
狙いは客数増。
これは正しい。
デフレ脱却だろうが、
消費回復だろうが、
商売の基本は客数にある。
もうひとつの事例は、
ホームセンターのカインズ。
3月に日用品を中心に値下げ品目を2割増。
メーカーと連携して価格を継続的に引き下げる。
「スーパーロープライス」商品を、
現在より2割多い800品目に増やす。
スーパーロープライスとは、
日用品のナショナルブランド商品を中心に
通常より2~3割安い価格で販売する商品群。
「競合他社の安売りや消費者の節約志向の強まりに対応する」
これが狙い。
良品計画とカインズ。
ポジショニングを確立した企業の判断。
「為替と株価が好況だから
高額品も売れるに違いない」
そんな短絡に陥らないことこそ、
学び取らねばならない。
さて今日は、
午後から田町のホテルJAL シティ。
「流通の未来を自分たちでつくる会」。
その第1回目の会合での講義。
イオンリテールワーカーズユニオン主催。
昨年の第2期から彼らの趣旨に賛同し、
アドバイザーとして活動をサポートしてきた。
今年第3期は、アメリカ視察セミナーも担当する。
その事前ガイダンスの講義。
はじめに、 主催者の挨拶や、
昨年のアメリカツアー参加者の報告が行われた。
その後、私の事前ガイダンス講義。
日米で共通する小売業のミッション、
「鳥の目・虫の目・魚の目・心の目」で、
アメリカ小売業を学ぶことの意味。
全米チェーンストア・ランキングとスライドによる解説。
ポストモダンを実現させるために、
知識商人がカギを握ることなどを、
100分を超えて語った。
そして質疑応答。
なかなかに、
現場に立脚した鋭い質問ばかりで、
まことによろしい。
そんな感想を抱いた。
そのあとのグループディスカッションと発表が終わると、
昨年の第2回メンバーのコメント。
19時からは場所を移して懇親の食事会。
乾杯の挨拶は、森部達也さん。
イオングループ労働組合連合会副会長。
「当事者意識を持て」と激励。
いい励ましの言葉だった。
初めて会った仲間と、今日一日を振り返り、
春のアメリカツアーを楽しみにしつつ、
参加者たちの会話は弾んだ。
今日の感想を求められて再び、登壇。
私は、社会に貢献しようとするすべての人を応援したい。
それが企業だろうと、経営者だろうと、労働組合だろうと。
今日一日、清聴してくれたみなさんに感謝。
締めは、坂口浩一さん。
イオンリテールワーカーズユニオン中央執行副委員長。
アメリカセミナーの団長を務める。
皆が丸く手を合わせ、「エイ・エイ・オー!」
坂口流の締め、よかった。
最後に、坂口さん、森部さんに、
東海グループ議長の上山功樹さんが加わって、
一緒に写真。
皆さん、お疲れ様。
外はすっかり暗くなったが、
気分は良かった。
サッカー日本代表の勝利の気分と似ていた。
〈結城義晴〉