結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年11月12日(木曜日)

菱食・廣田正とプラネット玉生弘昌に一致を見た「遅れた者が進んでいる不思議」

日経新聞がまたやりました。
一面トップ記事に、
企業買収ネタのスクープ。

「am/pm、ファミリーマートが買収へ」  
ファミリーマートの筆頭株主は総合商社・伊藤忠。
その伊藤忠とファミマが共同で、
エーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)を買収。

am/pmの親会社は、レックス・ホールディングス。
レックスは、牛角や成城石井を傘下に持つが、
そのレックスも投資会社アドバンテッジパートナーズの傘下にある。

このアドバンテッジパートナーズの意思で、
エーエム・ピーエムの売却先が検討されていたが、
それが伊藤忠&ファミマになったわけ。

上位コンビニが、セブン-イレブン・ジャパンを除いて、
総合商社系列に入ったということになる。

わかりやすいが、さらに再編は進むと、私はみる。

第一位セブン-イレブン、1万2500店、シェア28%。
セブン&アイ・ホールディングス傘下。
このグループは三井物産と関係が深い。
しかしここは対等な関係という意味合いが強い。

第二位ローソン9700店シェア22%は、三菱商事傘下。
ただし三菱商事はイオンの5%の筆頭株主で、
そのイオン傘下にミニストップがあって、これが2000店。
だからこのグループのコンビニは1万1700店となる。

そして第三位のファミリーマート7600店+エーエム・ピーエム1100店で、
新ファミリーマートは、8700店となる。

第四位は、ユニー傘下のサークルKサンクスで6200店だが、
こちらも伊藤忠がユニーに3%の出資をしているから、
伊藤忠グループのコンビニは1万4900店。

規模を狙うコンビニは、三極に収れんされつつある。

さらにイオンの電子マネー「ワオン」において、
ファミリーマートが共闘体制を築くから、
三菱商事・伊藤忠連携で、
業界最大のセブン-イレブン包囲網も構想される。

私は、「寡占」から「複占」を唱えているが、
アメリカのゼネラルマーチャンダイザーも、長らく、
第一位シアーズ、第二位ペニー、第三位ワードの時代が続いた。

日本のコンビニ業界も、
この三極体制が続きつつ、
やがて複占になっていくに違いない。

業界第七位のエーエム・ピーエム買収劇は、
その引き金となる出来事とみておいた方がいいだろう。

ただし、鹿児島県出水市の宮本商店のような、
「ニッチ」の個性豊かなコンビニも全国に多数あって、
三極だけで画一的に見えるコンビニ業界とはならない。

多様なコンビニが、
1億2700万人の日本人の生活を守りつづけるに違いない。

さて、昨日は、コーネル・ジャパン11月の第二日目。
朝9時から、講座ナンバー13。
廣田正さんの講義。  
廣田さんは㈱菱食特別顧問。
テーマは「スーパーマーケットへの卸売業からの提言」  
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「廣田の前に廣田なく、
廣田の後に廣田なし」  

私が、勝手に言い続けている廣田さんのキャッチフレーズ。
廣田さんの食品卸売業界への貢献は、
そのくらい大きくて、高くて、深い。

1955年(昭和30年)に廣田さんは社会人となった。
北洋商会という食品卸売企業に新卒で入社。
当時の北洋の年商は11億円だった。
それから54年、現在の菱食は1兆4000億円。
なんと1300倍。

この間、廣田さんは、働き続け、考え続けた。

そこから導き出された自称「一介の商人」の話。  

やはり大きくて、高くて、深かった。
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1960年代は、スーパーマーケットの誕生と成長の時代。
「不満足領域の継続は新産業をつくる」
スーパーマーケットもフード・ホールセラーも、
時代と産業と消費者の不満足を継続的に解消するところから始まった。

1970年代は、チェーン化によって急成長する小売業と広域化する卸売業。
そして1980年代はオイルショックを転機に低成長時代に。
1990年代のITの普及とロジスティックス時代、
2000年代の人口減少と高齢化社会の時代。

廣田さんの講義は、時代の変遷を正しく解析しつつ、
我々に、経営の考え方、あり方と、
時流のとらえ方を教えてくれた。

とりわけて面白かったのは、
「後進の先進性」という概念。  
廣田さんが歴史から学んだ法則。
「遅れた者こそが、
時代の最先端の考え方や技術を学びとって、
最も先進的になる」  

現在の中国やインドがそれだ。

産業界にも、「後進の先進性」の事例は山積している。

最後に類比。
ゴルフに例えると、
製造業は、ドライバーショット。
卸売業は、アプローチショット。
小売業は、パット。  

サプライチェーン全体で、力を合わせて、
消費者に満足を提供しないと、
いいスコアは出ない。

これが廣田さんのまとめ。

素晴らしかった。

まだまだ、大きくて、高くて、深い話は、
たくさんあった。

それは、いずれCDオーディオセミナーなどで、
順次、紹介していきたい。
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廣田さんには、最低10年は、
コーネル・ジャパン講師をつづけていただきたいとお願いした。
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荒井伸也先生と私が廣田さんを囲んで、写真。
ありがとうございました。

ここで、余談。
講義の中で廣田さんは、
荒井先生のホールインワンの話題をもち出された。
ゴルフのたとえ話のところで。

しかしその廣田さんご自身が、
実は今年、7月31日に湘南カントリークラブで、
ホールインワンされていた。

この写真は、ホールインワンのお二人と、
次にホールインワンするはずの男の写真となった。

さて第二番目の講座は河津司さん。
「経済産業省の流通政策」  
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河津さんは昨年のコーネル・ジャパンで、
第1期生とともに学んだ仲間。

だから日本の流通業に対する認識と、流通政策の系譜、
「まちづくり三法の意味と街を取り巻く状況」といった講義になった。
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その中の河津さんの「食品スーパー」への提言。
生活に最も身近な業態でありながら、
行政からも消費者からも「業」としての姿が見えない。
それが食品スーパーマーケット。
なぜか。
①身近なので分かった気になっている
②企業数が多い
③全国規模の業者が少ない
④「業」から外への発信が少ない
だから総合スーパーと十把一絡げに見られてしまう。

鋭くて、いい指摘。

ありがとうございました。

河津さんの次は、農林水産省から吉井巧さん。
総合食料局流通課長。
いわば農水省で最も食品流通業に精通した人。
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ふんだんな資料をもとに、全体像を綺麗に整理してくれた。
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①食品流通をめぐる情勢
②国の施策における食品流通の位置づけ
③食品流通に関する具体的施策

最後は農商工連携の促進が提起された。

最後の講座は、第二期生によるレポートの発表。
今回は、7人。
名前だけ列挙しよう。

関西スーパーマーケットの柄谷康夫さん。
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JR東日本ウォータービジネスの鈴木得彦さん。
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サンベルクスの鈴木優喜朗さん。
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万代の谷康一さん。
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伊藤軒の中井としおさん。
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マーメイドベーカリーパートナーズの三木亘さん。
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そしてキョーエイの安友健雄さん。
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皆、良い視点と良いプレゼンだった。

それを荒井伸也首席講師が評価してくださった。
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荒井先生の存在が、コーネル・ジャパンの価値を高める。

最後に副学長から、
二日間の簡単な総括とレポートの課題。
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今月のコーネル・ジャパンも、
「お陰様で」、良い講座ばかりだった。
とりわけ、川野幸夫、横山清、廣田正の三先生には、
心から感謝したい。

さて私は、渋谷のセルリアンタワーホテルへ。
プラネット・ユーザー会。
まず、同社社長の玉生弘昌さんからご挨拶。
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400人の参加者の前で、基調講演。
テーマは「製配販協業化の鍵を握るもの」  
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パラダイムの転換から話を始めて、
日本の産業構造の変化、
製配販の競争と近未来の姿、
そして商品問題の潮流を語った。

最後は、この日コーネルジャパンで、
廣田正さんが総括した内容と一致した。
「サプライチェーン全体で消費者満足をつくる」
はからずも、この講演は、それがテーマとなった。
不思議なことだ。

一日のうちにデジャブが何度も起こる。

講演が終了して、さまざまな報告が行われ、
最後は、懇親会。

玉生さんとツーショット。
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この場で、実は、廣田さんのホールインワンを知った。

さらに玉生さんの話は、
コンピュータや情報産業における、
「後発の優位性」に及んだ。  

遅れた者は、レガシーをもたない。
だから優位性を有する。

これこそ、廣田さんの「後進の先進性」と一致する。

一日の中で、何度も起こるデジャブ。
「サプライチェーンと製配販と農商工連携」
「後進の先進性と後発の優位性」  

ならば私にもきっと、
ホールインワンが向こうからやってくるに違いない。

<結城義晴>  


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